第26話 敵か仲間か

 8時00分、八王子市役所付近。遠藤は浅川河川敷でアヤカシンと戦う板垣を見つける。「あれはどっちかしら?」索敵ボタンを押すとアヤカシンと同じ表示が画面上に出現する。「偽物なんだ。でもなぜアヤカシン同士で戦ってるのかしら?演技?」そう考えていると板垣はアヤカシンを倒し終えてこちらを振り向いた。「あっ、気づかれた。」そう遠藤が思った瞬間、板垣が「乾風大風」を詠唱し遠藤を吹き飛ばした。市役所の中まで吹き飛ばされた遠藤は体勢を立て直しながら「ガマ癒」で受けたダメージを回復した。遠藤は板垣のスマホ画面を押す動作を見逃さなかった。「偽物による模倣か本物のみの動きか、どちらなのかわからない。」遠藤が違和感の正体を探ろうとするも板垣が追撃を仕掛けてきたため、遠藤はやむなく思考を止め対処を優先した。一方板垣も違和感を覚えていた。「何であんなところで傍観してたんだ。あの時アヤカシンと共に応戦していればもっと効果的に僕を追い詰めることが出来ていたはず。索敵結果はアヤカシン。確実に敵なはずだが無力化だけして話を聞くか。」そう考えながら遠藤に対し格闘戦を仕掛ける。二人の間で蹴りと殴打による激しい攻防が繰り広げられる。遠藤は膠着する事を恐れ攻める。「巨躯牛久」を詠唱し巨大かつ石化した足の蹴りを板垣に振るう。何の前触れもなく襲ってきた巨大な一撃に、板垣は対応しきれず、市役所前の駐車場まで弾き飛ばされた。板垣は必死に受け身を取ってダメージを最小限に抑えた上で「満湯草津」で回復した。

 8時08分、プラザ通り。凪人はアヤカシンたちを次々に倒していた。鳥部は画面の中でそれを応援していた。「頑張れ頑張れ凪人。塵殺滅殺凪人。未の格を見せつけろ。」凪人は鳥部の応援が物騒だと感じつつもアヤカシンたちを黙々と倒していく。「何とか一帯のアヤカシンは倒せたかな。」そう凪人が腕でかるく汗を拭うと鳥部が指摘する。「後1体いるぞ。あっちのほうだ。」凪人は鳥部の指示された場所へ向かう。そこにいたのは師岡だった。「あれっ?アヤカシンなんていない…まさか通達にあった偽物?」凪人がただ師岡を見つめていると、師岡と目が合う。師岡は黙って凪人の方へ歩み寄ってくる。「えっ、どうしよう。偽物?本物?」と凪人は攻撃するか決めかねていた。「初めて会う人だからどんなに観察してもどっちかわからない。ただ守がアヤカシンに対して向ける情熱的な目は本物だ。」「反応がアヤカシンだから敵だよ。早く攻撃しないと。」鳥部は凪人に攻撃するよう指示する。すると師岡が一言言った。「異例出世を果たす守。そのくせ控えめな性格。聞いていたとおり。再現性の高い素晴らしい化け術だ。」次の瞬間金魚ちょうちんが横から体当たりし凪人を吹き飛ばした。「えっ?今僕の事を偽物と認識した?」鳥部は「そんなことより攻撃を受けているから。探求心沸かせないで目の前のことに集中してよ。」と凪人に戦うよう促す。3体の金魚ちょうちんが凪人に向かって再度突撃を敢行する。凪人は「流し雛」を詠唱しダメージを無効化しつつ格闘戦に持ち込む。2つの金魚ちょうちんが凪人の両腕に噛みつく。しかしそのダメージは全て「流し雛」に還元され凪人は全く痛くなかった。凪人はそのまま両腕を地面へ叩きつけ2体の金魚ちょうちんを倒した。3体目の金魚ちょうちんも「魚跳傘音舞」で魚を生成し双方の魚がぶつかった後、凪人が接近し傘を回転させ全ての金魚ちょうちんを倒す。凪人は離された師岡との距離を詰めるべく姿勢を低くして接近する。すると師岡は「関門砲台群」で凪人へ砲撃を加える。それに対し凪人は「液晶回廊」を詠唱しつつ左右へ反復しながら動く。「増えた…どれか一人が本体なのだろう。まぁ全て撃てばいいか。」師岡は全てを薙ぎ払う勢いで目の前に砲撃していく。砲撃によって付近の建物が次々損壊していく中、凪人は砲撃の隙間をぬって突破した。そして「鷲尾刀、大刀」を召喚し近接戦を展開する。凪人は二つの刀で師岡に向かって斬撃を繰り出すが、軽快なステップでかわされ上手投げによる反撃を受ける。投げられた凪人は近くの店に突っ込んだ。師岡は凪人が突っ込んだ店に向かって「頬フグ針」を詠唱し追撃をかけようとする。するとまるで壁があるかのように針が途中で停止する。止まった空間には、水面に雫が落ちた時に生じる波紋が広がり、勢いを失った針が次々落下していく。凪人は技を入れ替え「浦富透岩」を発動していた。

 7時42分、秋留台公園付近。庄屋は公園の外周に沿う形でアヤカシンを討伐していた。すると画面上にはアヤカシンのマークが表示されているが、その位置には波照間しかいなかった。「あの岡山守は偽物か。」と瞬時に判断し、「天童木棋」で香車を召喚し射出する。波照間は突如飛んできた攻撃に驚きつつも、「雲上城塞」で回避し放出した煙幕から奇襲する。庄屋はその一撃を直に受け地面に打ち付けられる。庄屋は「確かに強いな。でも決して倒せないってレベルじゃない。」と考えつつ体勢を立て直した。

 8時10分、東京競馬場付近。ここでは既に戦闘が激化していた。競馬場の観客席付近では東雲と笠越が戦っていた。「おらぁ、逃げるな。とっとと倒されろ。」と笠越は威勢よく「速装落花生」による射撃攻撃を行う。一方東雲は「禊水飛沫」で放たれる落花生を砕きながら観客席を上手く利用して逃げ続けていた。その様子を観客席の下のスペースで川畑が見届けていた。「何で?アヤカシン同士が戦っている?」川畑は混乱していた。その背後ではさらに大きな戦闘が発生していた。岡田と持田、双方階級が卯の高度な戦い。彼らはグラウンド上で際限のない戦術を互いに披露し合う。「怨雷」岡田の詠唱と同時に放たれた高火力の雷は、持田に回避の隙を与えずに一直線で向かってくる。しかし持田はこの攻撃が来ることを予め予想していた。事前に発動していた「宝飾装甲」により雷は四方八方に弾かれグラウンドの数か所に土煙が上がる。ただ相当な衝撃を伴ったため持田は4から5メートル程後退した。岡田はその間も大回りをして持田の側面へ移動していた。しかし持田もそれに気付いていた。お互いに目を合わせたまま岡田が追撃を行う。「奈多夕光断層」そう詠唱し地面に勢いよく岡田の拳が衝突する。すると岡田の拳が衝突した場所から南方向へ地割れが生じた。「よし。あいつの…」岡田は持田の姿勢を崩したところを仕留めようとしこの攻撃を行ったが、既に持田の体は宙を舞っていた。「お返しだよ。」持田からその言葉が発せられると同時に「香嵐絨毯」が発動、連鎖的に放たれる波状攻撃を至近距離で受けた岡田は吹き飛びグラウンド内にある施設に強く衝突する。

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