第17話 応酬
円谷が無線を使用する。「まもなく次のジャンクションに到達するよ。」持田も無線で「絶対に一般道へは行かせるなよ。高速道路なら大胆なこともできるが、下道に降りられたら大胆な行動ましてや追跡も一気に難しくなる。」と警戒を呼び掛けた。秀島は少しでも差をつけようと、どちら側に行くか相手に読まれないようにするため車体を左右に揺らす。そして右側の直進車線に車を少し寄せた。それを見て庄屋が「このまま直進するようです。」と無線で言うと「そうだな。だが急な車線変更の可能性もあるから、近づいてそれを防ぐぞ。」そう板垣が呼びかけた瞬間だった。秀島の車は急に左の車線を移動し、都心環状線に乗り換えた。持田は無線で「本線合流までは道が狭く攻撃は出来ない。本線合流後に仕掛けるぞ。」と指示を出す。都心環状線にお互いの車両が侵入すると再び熾烈な戦いが幕を開ける。「また幅寄せか。どうなっても知らないからな。」秀島は後方を確認しながらも速度は緩めなかった。後ろから円谷の車が速度を上げ拡声器の電源を入れる。「止まれー。これ以上逃げ続けるなら容赦しないぞ。」秀島はその音声を聞き「今更警告かよ。順序がチグハグだな。所詮あいつらからしたらごっこ遊びなんだろうな。」と思いながら警告を無視する。その対応を見た円谷は「わかった。容赦はいらないんだね。」と無線を置き、さらに速度を上げる。円谷の乗る車が秀島の車の後ろにつく。そして円谷は躊躇なくハンドルをきり、自身の車体の前方右部分を秀島の車体へ衝突させる。秀島は強い衝撃と金属の悲鳴、そして回転する視界に一瞬理解が追い付かなかった。「なっ。まさかピットマニューバー?ふさけるなよ。ここをどこだと思ってやがる。」秀島は必死にハンドルを操作し、何とか車を安定させることに成功した。「ちっ。何で元に戻せるんだよ。」と円谷は悔しがる。しかし後続の板垣と庄屋も速度を上げ秀島へと接近する。秀島は「一度痛い目を見させるしかないか。気は進まないが。」と思いながら速度を少し緩める。それを見た板垣と庄屋は挟むように秀島へ接近する。それを見た秀島は車体を右へ一気に寄せる。庄屋の車は秀島の車と壁に挟まれる。「くそっ。まじかよ。」秀島の車体と壁に挟まれ庄屋の車から轟音が響く。庄屋はすぐに停車したため大事には至らなかった。それを見た板垣はさらに右へ詰め激突。秀島の車の左の後部ドアが後部座席にめり込む。秀島と板垣の車両は共にバランスを崩すも、お互い何とか立て直す。秀島は身の危険を本格的に感じ用意していた切り札を切ることにした。「ここまでする必要はないって思っていた。だが相手がここまで法律を捨てて挑んできている以上使用はやむを得ない。国家と対峙しているんだ。こちらも制約を設けている場合ではない。」秀島の手がカバンに伸び、そこから拳銃が取り出される。「車を反転させ撃ち込む。この速度でバック運転は…せいぜい5秒。」秀島は意を決して車を反転させた。持田たちは意表を突かれた。乾いた銃声が5回響いた。その内の2発が先頭を走っていた板垣の左前輪に命中する。板垣の車は一気に制御を失い停車せざるを得なかった。持田は黙ってそれを見ていた。そして無線でまだ追跡が可能な円谷に呼びかける。「こちらも変身するぞ。」持田の呼びかけに円谷も「了解。」と緩く答えた。無線がきれた時円谷は感じ取っていた。持田のギアが一段階上がっていたことに。
三途の川の中州にある宮殿。武早矢朱砂の王は此岸の様子をみて面白がっていた。そこに1体のアヤカシンが入室する。「出場の準備が整いました。いつでも川を氾濫させることができますぞ。」その発言を武早矢朱砂の王は制止した。「今面白い事が起きている。しばし楽しみたいから、出場は少し待ってくれ。」アヤカシンは静かに一礼し退室した。「相変わらず人とは愚なる生物だ。お互いに形のない価値観だけで万物を壊し尊い命を奪う。どうしてこんな種が地球の覇権を握ってしまったのか。」武早矢朱砂の王ははっとした。「そうだ。俺もそうだったな。」
一方下界では、変身した持田はクラクション部分に手を当てた。「電光菊」そう持田が詠唱しクラクションを鳴らす。すると車の前方ライトが開き眩い閃光を放つ菊が発射される。秀島は目くらましを受け速度を緩めざるを得なかった。その機会を逃さなかった持田は一気に加速し、秀島の車の進行方向を遮り停車した。秀島は「そんなことされても物理的に止まれねぇよ。」と考え思い切った行動に出る。ハンドルを右に強く切り持田の車に近づいたところでギアをニュートラルに切り替えた。突如タイヤの動きを固められた秀島の車体は、バク宙しながら一回転し一度強く上下逆さに不時着するも再度回転して起き上がり走り出した。それを見た持田は舌打ちし、車に乗り込み追跡を再開した。秀島も自身の車の状態を軽く確認した。「後数回当てられたら走れなくなるな。」そう考え今度は助手席に落ちている拳銃を見る。「残弾数は10か。」アクセルを精一杯踏み込んで逃走を続けた。
同日午後5時、秀島と持田の車によるカーチェイスは続いていた。秀島の車がまもなく丸田町ジャンクションに差し掛かろうとした時、持田側が再度仕掛ける。高速都心環状線の上を高速2号東山線が通過しているのだが、東山線から円谷の車が壁を突き破って都心環状線に落下した。寸前で落下し前方を塞がれた秀島は急ハンドルをきり車を反転しようとするが、後方から追跡していた持田の車が衝突した。衝突された秀島の車は勢いよく壁にぶつかり下にあった道路へ転落した。秀島の車は落下の衝撃で深刻な損傷を負い走れなくなった。秀島は情報の入ったカバンだけを持って車から外へ出た。持田と円谷も車から降り、秀島の下へ向かう。秀島はカバンを大切に持ちながら2人と対峙する。「変身しても見えているぞ。」秀島はそう言って郷リンのアプリがインストールされたスマホを見せる。持田は「そのようだな。あなたに確保命令が出ている。おとなしく我々と本部に来てほしい。」と説得する。秀島は首を振り「そうやって情報を処分するのだろう。そんなことされる前に私が全て詳らかにし、国民に真実を届ける。根拠の無い劣化だの感染症だのと言った嘘から国民を解放する。」と自身の正義感を主張した。持田はその正義感に疑義を呈した。「知らぬが仏という言葉を知らないようだな。もし仮にあなたがこの情報を開示したとして、本当に国民のためになるのか?あくまで俺の意見だが、アヤカシンという目に見えない存在を国民へ開示したとしても何の解消にもならないと思う。下手すれば、国民の不安の助長や混乱を引き起こし我々の活動にも支障が出るだろう。果たしてそれは君の正義感に準じた行動になっているのか?」その言葉に対し秀島は「国家機関やそれに務める人々が国民に嘘をつくという事実が、既に問題なのだ。」と強く反論した。そして「もし本気で取り返したいのならば力づくで奪ってみればいいさ。」と拳を前に出し秀島は戦闘体勢をとった。持田も拳を構え戦闘体勢をとる。持田は「こっちは変身による身体能力の向上及び上昇といった副効果がある。生身の人間が勝てる相手じゃないぞ。」と警告する。しかし秀島は「私には優れた格闘術と経験がある。」と全く怖気づかなかった。お互いが戦闘を始めようとしたその瞬間、郷リンの通知アプリが鳴る。「この近辺でアヤカシンが出現した。」追跡を中断していた板垣と庄屋からの連絡だった。
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