第30話 拗ねる彼女と昼休みの残酷な現実

 教室の片隅、拳ちゃんの隣に座る凛花は、いつもと違う表情で拳ちゃんを見つめていた。


(……なんであたし、隣にいるのに話題にすらならないの……?)

 昼休み、拳ちゃんと早水がギャルとNTRについて熱く議論していたのを、凛花はずっと隣で聞いていた。

 しかし、その議論に自分は一切絡んでいない。拳ちゃんの彼女である自分が、話題に出ないのだ。


「……ちょっと、拳ちゃん?」

 凛花は小声で呼びかける。


「ん、どうした?」

 拳ちゃんはノートを片手に、早水との議論の余韻に浸りながら答える。


「なんであたしのこと、全然話題に出ないのよ!?」

 凛花は少し大きめの声で言い、拳ちゃんを睨む。


「え、あ……ご、ごめん……話が……あの、ちょっと盛り上がりすぎて……」

 拳ちゃんは焦って弁解する。だが、凛花の表情は険しく、拗ねモード全開だ。



 凛花の心の中は複雑だ。


(あたし、拳ちゃんの彼女なのに……なんで……なんで彩花の話ばっかり……!)


 拳ちゃんの隣で聞きながら、心の中では嫉妬心と拗ね心が渦巻いていた。

 拳ちゃんが真剣に話すたび、凛花の胸はモヤモヤして熱くなる。


「……まったく、あんたたち、ギャルとかNTRとか……そんな話して、楽しそうだね」

 小声で毒を吐く凛花。


 拳ちゃんはそれに気づき、そっと手を握る。


「凛花……怒ってる?」

 拳ちゃんの声は優しいが、どこか困惑している。


「……怒ってるも何も、ただ拗ねてるだけよ!」

 凛花は頬を膨らませて抗議する。



 二人の心理戦は続く。


 拳ちゃんは心の中で思う。


(いや、凛花の気持ちは分かる……でも、今は早水との議論が盛り上がっちゃって……どうフォローすれば……)


 一方、凛花も負けじと心の中で反論する。


(あたしだって、あたしだって拳ちゃんの彼女なんだから! もっと気にしてほしいのに……!)



 拗ねた凛花は、仕方なく拳ちゃんの肩に顔をうずめる。


「……拳ちゃん、あたしのことも見てよ……」

 その一言で、拳ちゃんはようやく現実に引き戻される。


「……ああ、ごめん、凛花。もちろん、ちゃんと見てるよ」

 拳ちゃんは照れながらも、凛花をぎゅっと抱き寄せる。


 凛花の頬も赤く染まり、心のモヤモヤが少しずつ溶けていく。



 しかし、教室の周りでは、まだ昼休みのざわめきが続く。

 凛花と拳ちゃんの二人だけが、自分たちの世界に浸っていた。


(……でも、あたし、もっと強気に言わなきゃダメかも……)

 凛花は小さく拳を握り、心の中で次回の作戦を練る。



 そして、昼休み終了のチャイムが鳴る。


 教室を見渡すと、周囲の生徒たちは二人のやり取りを見て呆れている。


「……あの二人、昼休みくらい普通に過ごせないのかしら」

 クラスメイトの声が小さく響く。


 凛花も拳ちゃんも、その視線に気づき、顔を赤くしながら席に戻るのだった。

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