第25話 プールサイドの追走と心の再会

 夕陽が水面をオレンジ色に染める市民プール。

 彩花は更衣室に向かう途中、足を止めて深く息を吸った。


(……あたし、どうしてこんなに……胸が苦しいの……?

でも、告白したことは間違いじゃない……正直に伝えたんだもん……)


 水しぶきや遠くの子どもたちの声が、彩花の意識の中でぼやけていく。

 胸にぽっかり穴が空いたような感覚が広がる。

 誰かに慰めてもらいたい、でも自分からは何もできない――その葛藤で心が揺れる。



 一方、拳ちゃんはプールサイドの端で息を切らせながら走っていた。


「……彩花……待ってくれ……!」


 夕陽に照らされた金髪が遠くに見え、拳ちゃんの心臓は早鐘を打つ。

 ただの幼馴染の恋愛相談のはずだったが、今はそれを越えて、彩花の心を救いたい――その思いが体を動かしていた。



 彩花は足を止め、壁に背を預ける。

 拳ちゃんの声が遠くから聞こえるが、顔を上げられない。


(……でも、あたし……どうしてこんなに……涙が止まらないの……?

胸の奥がざわついて……。あたしは強いはずなのに……)


 その心情を、拳ちゃんは追走しながら感じ取ろうとする。

 しかし、プールの雑踏と距離が、二人の間に微妙な壁を作っていた。



 凛花は少し離れた場所から状況を観察していた。

 拳ちゃんが走り、彩花が立ち止まる――作戦は意外な形で動き出した。


「……拳ちゃん、いい感じよ。あーしの計算通り……かな?」

 しかし、凛花の瞳には少しの不安もあった。

 彩花の心理は複雑で、うまく支えないと再び落ち込んでしまうかもしれない。



 拳ちゃんが彩花に追いつく。

 少し息を切らせながら、彼は声をかける。


「彩花、大丈夫か……? 話、聞くから……!」

 彩花はその声に少し肩を震わせながら振り返る。


「……拳ちゃん……」

 涙が頬を伝い、彼女の表情は悲しみと混乱で曇る。

 胸の中に、告白して断られた痛みと、拳ちゃんに見つけられた安心感が同時に流れ込む。



• 自己否定と迷い:

 「どうして……早水くんはあたしの気持ちを受け止めてくれないの……?

 あたしは……あたしは……」

• 拳ちゃんへの微かな信頼:

 「でも……拳ちゃんは……あたしのこと、ちゃんと見てくれてる……」

• 混乱と安堵の入り混じった感情:

 涙と一緒に、少しだけ心が軽くなる。

• 心の再構築:

 「……よし、立ち上がろう……諦めない……!」



 拳ちゃんは彩花に近づき、やさしく肩に手を置く。


「彩花……無理に笑わなくてもいい。今は……泣いていいんだ」

「……うん……ありがとう……拳ちゃん……」


 その瞬間、彩花は拳ちゃんの存在に頼り、胸の奥の痛みを少しずつ吐き出す。

 心の中で渦巻く不安や孤独感が、拳ちゃんという存在によって少しずつ整理されていく。



 凛花は離れた場所から拳ちゃんと彩花を見守る。

 口元に小さな笑みを浮かべ、心の中で作戦を評価する。


「……よし、ここまで来れば、次は二人の心理を少し整理するだけ。あーしの作戦、順調ね……!」


 夕陽が二人を包み込み、プールの水面がオレンジ色に輝く。

 主人公・拳ちゃんと彩花の間に新たな信頼と絆が芽生えた瞬間だった。

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