人間電卓静子さんと解析班の井草くん

Nanatu772

プロローグ



「私は文芸部を破壊します」

 堂々たる立ち姿で行われた[宣言]を、僕は静かに聞いていた。


 彼女には[人間電卓]という体質が備わっている。

 数字を入力するかの如く、情報を取り込めば自ずと[答え]が導かれるという、説明されても全く理解できない体質だ。

 [答え]を導く速度は群を抜いていて、他を寄せ付けることはない。

 しかし、[人間電卓]には、

「なぜ、その答えが導かれたのかわからない」

 という致命的な欠陥があった。

 [答え]はわかっても、過程がわからない。


 欠陥を補うべく、彼女は僕に[解析班]という役割を与えた。

 [答え]を解析して、

「なぜ、その答えが導かれたのか」

 を明らかにしろとのことだ。

 とんでもない無茶を言う人ではあるが、面白いことを考える人だと思った。


 彼女は、[答え]のみを信じ、迷いなく突き進む。

 たとえ、目の前が茨の道であろうとも。

 僕は、[解析]してトゲを取り除く。

 たとえ、彼女が望まなくても。


 彼女が出した[答え]の先に、[宣言]がある。

 [人間電卓]を持つ彼女が、一体どんな[答え]を出したのか。

 それはきっと、[解析班]の僕しかわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る