初恋の清楚系幼馴染と再会したら金髪ギャルになってた
膳所々
第1話 初恋、消滅。
俺は頻繁......いや、ほぼ毎日と言っていい程同じ夢を見る。
それは昔の記憶。美しく、夢から覚めるのが惜しくなるほど愛おしい記憶。
その夢の中で、俺は幼馴染の女の子と一緒に遊んでいる。ブランコに乗り、滑り台を滑り、砂場でおしゃべりし、二人でお菓子を食べる。
お互い親しい仲で、俺は彼女の事を
なんせ小学生くらいの事だから夢の中のその子の顔は曖昧で。ただ、特徴的な綺麗な長い黒髪だけは鮮明で。
高校生になったにもかかわらず、その夢を見た日は少し良い気分になるくらい俺は夢の中の幼馴染に恋をしている。
「......」
放課後。生徒用の玄関から校門までの並木道。
ここをポケ―ッと歩きながら幼馴染の愛花の事を考えるのは今日で何度目だろうか。
いや、正直言って自分でもおかしいと思ってる。彼女が小学2年生の時に何も言わずに引っ越して以来やり取りは無いし、もちろんどこに住んでいるのかも知らない。なのにその子の事をずっと考え続けているというのは明らかにヤバイ。
でも仕方ない。あの子以外に男女問わずまともに友達が作れなかったコミュニケーション能力が壊滅的な俺にとって、あの子は俺の人生における友人の全てであり、異性の全てだったのだ。
......ま、でもそろそろ何とかしないといけないよなぁ。
俺に友達が出来ないのは人に心を開こうとしない俺の性格のせいってのは自覚してるし、このままじゃ本当に不味いって事も自覚してる。
その自覚の理由の一つが、あれだ。
「ふぁ~......マジ眠い」
校門前で眠そうに目の端の涙を拭いながら誰かと待ち合わせをしているのであろう金髪のギャル。
俺はああいう人種が無理......とまではいかないが、苦手だ。
俺にとっての女の子の理想であり、人としての理想である幼馴染が清楚系ど真ん中の女の子だったために、ああいう遊んでそうというか、少しヤンチャそうな人間に男女問わず抵抗感を覚えるようになってしまった。
もちろん義務教育で人を見かけで判断するなとは教え込まれたが、体が勝手に感じてしまう嫌悪感はどうしようも出来ない。
将来社会に出たらそういった人とも関わることもあるだろうし、この嫌悪感の原因......つまり、二度と会うことの無いであろう幼馴染の愛花の事はさっぱりと忘れてしまった方が良い。
という事は自覚している......が。
「出来たらやってるんだよなぁ......」
心の声が漏れている事に気付かないまま、俺はギャルと出来るだけ距離を取りながら校門を通り抜ける。
いっそのこと、実際に会ってこっぴどく振られて、逆恨みでも何でもいいからあの子の事を嫌えたりしたら治んのかな......。
「
「はい?」
自分の名前を呼ばれ、ほとんど無意識で返事をしながら振り返ってしまった事をすぐに後悔する。しまった。無視するべきだった。
振り返った視線の先。俺の名前を呼んだ人物である金髪ギャルが先程までいじっていたスマホをカバンに仕舞って近付いてくる。
「ふ~ん......まぁ、聞いてた通りって感じ」
俺のパーソナルスペースに躊躇う事もなく侵入してきた何故か俺の名前を知っているギャルは、俺の全身に遠慮なく品定めするような視線を向けて来る。
はっきり言って不快だが、初対面の人間に正面からそんな事を伝えることは出来ない。このタイプの人間のこう言う所が苦手なのだ。こちらの常識で拒否しないだけなのに、それが自分の当然の権利だと思っている所が。
......せめてやり返してやる。
俺は言葉に出さない抵抗として、ギャルが俺に向けて来たものと同種の目線を向け返す。
俺の通う高校とほど近い場所にあるにあるヤンチャな生徒が多い高校の制服に、こだわっているのだろうキラキラした加工が施されているネイル。
ストレートで腰の辺りまで伸ばされている髪は綺麗に金に染まっていて、その下は生徒指導の先生がよく言っている膝上なんて意味ないくらいの短さのスカート丈......え、待て、マジで短すぎないか?
「うっわ、なんも話さないで脚ガン見してきてるし......最悪、まじ陰キャじゃん」
「あ、ごめんなさい」
ギャルの罵倒につい反射的に謝ってしまう。俺はやられたことをやり返しただけなのだが、この言われようだ。まぁ、ちょっと脚を見過ぎた可能性はあるが。
というか初対面の人間、しかも自分が声を掛けた人間にこんなスラスラ悪口をぶつける奴がいるか? どんな教育されてたらそんな風になるんだよ。
このギャルの親の面を是非とも拝んでみた......。
「......あれ」
このギャルの顔......誰かに似てる......?
「ん、何」
脚の流れを引きずっているのか、少しイラついたような声色で聞いてくるギャル。
しかし、そんなのお構いなしに俺の頭は急いで記憶の引き出しの中身を漁り始める。何故か、これは絶対に思い出さないといけない気がする。
「......」
「おーい。無視?」
俺の目の前で手を振るギャル。
もう少しなんだ......もう少しで思い出せ──。
「冬馬!」
「あ」
「お、やっと反応したし。なんかやっぱキモいね」
......遠慮なく初対面であるはずの俺にキモいと言ってくるこのギャル。
この俺の嫌いなタイプドンピシャみたいなこの女......もしかして。いや、信じたくは無い。しかし、この顔を見ていると記憶の奥深く、あの子の顔に掛かっていた靄が晴れていくような感覚を覚えてしまう。
「愛花......?」
「は......?」
違ってくれ。先程まで最早こっぴどく振られたいと、あの子の事を嫌いになりたいと思っていたはずなのに、今は目の前の理想とは真逆みたいな女子が愛花では無い事を願ってしまっている。
俺の言葉に呆れたような反応を見せた愛花(仮)は、そのまま不思議な間を空ける。
5秒か10秒か、それ以上だったかもしれない。とりあえず不自然な間を空けた後、俺が今この世で一番聞きたくなかった言葉を、絶対に理想の愛花が絶対にしない言葉遣いで言った。
「なに~? やっと気づいたのかよ。久しぶり、冬馬」
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