スキル『雑用』の私は、追放先の辺境でSランク美少女魔導師の専属メイドになります。
ちゃま
第1話 役立たずと蔑まれたスキル『雑用』と、辺境への追放
神殿の孤児院で育ったアリシアは、十五歳で授かったスキルが『雑用』だったことで、周囲から「役立たず」と蔑まれることになった。
そのスキルは、掃除、洗濯、料理、裁縫といった日常の作業効率をほんの僅かに上げるだけのもの。剣や魔法の才能が溢れる孤児院の中で、アリシアの存在は日増しに浮いていた。
「おい、アリシア。お前のその『雑用』スキルで、今日は便所掃除だ。剣術の練習の邪魔だぞ」
騎士見習いのリーダー格、ディランに冷たく言い放たれる。彼はアリシアを常に見下しており、ついには孤児院の長にも働きかけ、アリシアを追放するに至った。
「アリシア。お前のスキルはこの神殿では必要ない。辺境の街、アークウィルムへ向かいなさい。そこで何か仕事を見つけなさい」
手渡されたのは、わずかな金と、辺境への旅券のみ。十五年の思い出が詰まった神殿を、アリシアはただ一人、後ろ髪を引かれながら去った。
三日間の旅路の末、たどり着いたアークウィルムは、寂れた小さな街だった。仕事を探すあてもなく途方に暮れていたアリシアの目に、一軒の奇妙な家が飛び込んできた。
蔦に覆われ、窓ガラスが割れた、廃墟のような石造りの建物。
その玄関に、「至急、家政婦募集。給与:応相談」と、達筆ながらも不自然なまでに乱暴に貼られた紙が揺れている。
「ここで働くしかないかも……」
意を決してドアをノックしようとした、その時。
ドォンッ!!
家の中から、凄まじい爆発音と、焦げ臭い匂いが吹き出した。
思わず飛び退いたアリシアの目の前で、ボロボロの扉が内側から開き、煙の中から一人の少女が現れた。
銀色の長い髪、透き通るような白い肌。その瞳は冷たいエメラルドのように輝き、神々しいほど美しい。だが、彼女が着ている真っ白な魔導師のローブは、煤と油で真っ黒に汚れていた。
彼女、エレノアは、アリシアを一瞥すると、まるで空気のように扱って、こう独り言を呟いた。
「ちっ……また失敗したわ。これで三日連続。錬金術はともかく、朝食のパンすらまともに焼けないなんて……世界最強のSランク魔導師である私としたことが、腹が減って魔法が練れないわ!」
その言葉に、アリシアは驚愕する。
Sランク魔導師――それは、一国に一人いるかいないかの、人類最強の防壁だ。そんな人が、なぜこんな辺境の廃墟のような家に? そして、なぜ「パンが焼けない」なんて悩んでいるのだろうか?
焦げた匂いと、美少女の間の抜けた独り言を聞き、アリシアの『雑用』スキルが、不思議とざわめいた。
(この人、最強だけど、私がお世話してあげないと本当に死んじゃうかも……?)
「あ、あの! 私、家政婦の募集を見て来たのですが……!」
アリシアは思わず声をかけた。エレノアは無表情なまま、冷たいエメラルドの瞳でアリシアを見つめ返した。
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