8 運命の出会い

 熊本でバスに乗ることは増えたが、特に好きになった、ということはなかった。普段は自転車通学で、市街地に行くのにはバスで行くことが多い、程度だった。


 運命を変えたのは、沖縄旅行だった。まだモノレールのできていない沖縄では、どこに行くにもバスを使う必要があった。それでいて行先は分かりにくい。時間通りに来ない。運転手に怒られる。散々である。


 バスにもいろいろあるのだなあ、と思った。


 沖縄には何回か行った。線路がないので、那覇から遠くに行くときもバスで行くことになる。ある日、「目的地を決めずに適当に来たバスに乗ってどこか行こう」と思った。コザから残波ビーチに行った。そう書くと順風満帆な旅のようだが、途中全くバスの来ない時間があり、基地の周りを2キロ以上歩いていた。残波ビーチに行くときも片道1キロぐらい歩いた。中学生のころの経験が生きて、「バスが来なければ歩けばいいじゃない」という旅ができた。


 この度で私は、「適当なバスに乗る」喜びを覚えたのだ。


 ちなみにまた別の沖縄旅行では、倒れたままのバス停にきちんと縦に貼られた時刻表というのを見て衝撃を受けた。どうせ戻しても台風で倒れてしまうから、そのままにしてあるらしい。それ以来私はバス停にも興味を持つようになり、バス停の写真を撮る趣味ができたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る