第36話 無茶の果て、そして…

沖縄にやってきてから3日の朝。

北斗は毎日、ほとんどの時間をダンジョンで過ごしていた。

ホテルをとっていると言っても1時間ほど仮眠を取りに帰るのみで全く滞在せず。下手すると1時間の仮眠すら取らずにダンジョンに赴いているため、ホテルの人間にも声をかけられるほどだった。それでも改善しようとはしなかったが。


「……これで、それなりに数は減った、かねえ……」


ドシャ。

太刀で貫き止めを刺したモンスターを乱雑に放りながらため息を溢す。

今までの配信でも見たことがない程、モンスターの体液や己の流した血などで薄汚れた格好にどれほどの数のモンスターを屠ったのかが窺える。


「とはいえ、日に日に出現するモンスターの数は増えている。このままじゃジリ貧か……もう一度琉歌に相談すべきかねえ」


体をふらつかせながら帰還石を使ってダンジョンの入り口に戻る北斗。

ホテルには帰らず、そのまま重い体を引きずりながら那覇ダンジョン支部のマスタールームへと向かった。


「琉歌」

「はいはーい、どうしたの、北斗………。ねえ、ちょっと座ってねー?」


今日はマスタールームにいた琉歌は北斗の顔を見るなり険しい顔をしてソファに座らせた。

北斗は首を傾げながら素直に従ったが、それでも琉歌の表情は固いままで。


「琉歌…?」

「ねえ、北斗ー?自覚ないの?顔色、すっごく悪いよー?それこそ今すぐに倒れちゃいそうなくらいに真っ青。あと、そんなに傷だらけで……もしかして、ずっとダンジョンに潜ってたのー?」

「ああ。流石にあの溢れる寸前のダンジョンを目の前に潜らないっていう選択肢はないからねえ。琉歌からの頼みもあったし、基本はダンジョンにいたよ」

「もー……そういうところ、本当に変わらないよねー……」


琉歌は頭を抱え、しかしすぐに行動に移した。

北斗を座っている状態からソファに寝かせ、顔やら腕やらの汚れを拭ってやりながら目元にホットアイマスクをつけさせる。


「これ、何を」

「あのねえ?私、確かに私頼んだよー?でもね、こんなに身を削ってまでダンジョンに潜って欲しいとは思ってないよー。本当、昔から自分だけ無茶をするところ変わってないんだからー……」

「でも、ダンジョンブレイクの危険性は消えていないから」

「それでも、自分の身を大事に、だよー?ほら、少し寝てー?」


起き上がろうとする北斗を見た目から想像出来ないほどの力で抑え込む琉歌。

流石はタンク職……と明後日の方向に思考を飛ばしつつなんとか起き上がろうと更に抵抗するが、目元のアイマスクが温かくなってきたことと一定のリズムで胸元をポンポンと刺激されるのが心地よく、北斗は次第に力を失ってそのまま眠りについた。

琉歌はその様子を見てほっとしたように胸を撫で下ろした。

北斗とは高校の頃からの仲とはいえ彼が周りに頼ることなく自分でなんとかしようとする性格なのはよくわかっていた。

パーティを組んでいた頃も1人で問題解決に動き無茶をした末に怪我やらぶっ倒れるやらを頻繁にやらかしていたので今回も心配していたら案の定である。


「もー。私は沖縄にいるから普段は何も出来ないから、あんまり心配させないで欲しいなー。雅たちにも連絡入れておくかー。東京なら、雅と水琴いるから気を配ってくれるでしょー」


ぽちぽちとスマホを操作しながら眠る北斗の頭を優しく撫でてやる。

北斗と琉歌はお互いを兄弟のように思っているので、時には北斗が兄として、時には琉歌が姉として甘やかすことが多々ある。

今日は琉歌の番だった。


「よしよし。ゆっくり休むんだよー」


──数時間後。

心地よい眠りから目を覚ました北斗の目に飛び込んできたのは、日が暮れ始めている空だった。

寝過ごしたっ……!!

ガバリと身を起こし、すぐにダンジョンに向かおうとするその肩に押さえつけるように手が乗せられた。

振り返った先にいたのは膨れっ面をした琉歌だった。


「琉歌……ごめん、迷惑かけたねえ」

「迷惑じゃないよー。前から言ってるでしょー?私たちは仲間なんだから、迷惑はかけてなんぼだよーって。…うん、顔色良くなったねー、良かった良かった」


背後からもちもちと北斗の頬を挟んでこねくり回す手に成すがまま、したいようにさせる北斗の顔は気不味げで。

昔から無理強いな自覚はあるから、何も言えないんだよねえ……前回、コラボの時にも水琴を最終的に泣かせてしまったし。まあ、俺がやることでなんとかなるならって思ったらやってしまうから、多分これは直せない悪癖なんだろうが。

そんなことを考えていたからだろうか、琉歌はこねくり回すのをやめて頬を引っ張り、ずい、と顔を近づけた。


「ねえ、また今自分がやればーとか思ったでしょー?言っておくけど、水琴からも聞いてるんだからねー?古代龍と一対一で戦ったって。古代龍なんて、いくら北斗でもすぎるよー。最悪の事態だって有り得たんだよー?わかってる?」


すん、とのんびりした口調が消え穏やかな声も低くなった琉歌に、北斗は自然とソファの上で正座する。

元パーティメンバーの中で北斗が唯一逆らえないのが琉歌だった。

常が穏やかな分、説教の時も感情的にならずに怒るため飄々と躱わすことが難しいというのもある。


「……ごめん」

「うん、わかったならよしだよー。ダンジョンには、明日から私も同行するからねー?もう無茶はさせないよー?無茶したら、わかってるよねー?」

「……はい。あの、でも、奥の手は、使わせてもらうけど……」

「無茶は、ダメよー?」

「…はい」


北斗、完全敗北である。

その後琉歌の手料理で手厚くもてなされ、眠るまで真横で監視されながらも眠りにつき、という状態を過ごし次の日の朝。

琉歌と2人、ダンジョンの入り口に立っている北斗は顔色こそよくなっていたものの表情は険しい。

昨日まで丸3日間モンスターを大量に屠っていたというのに、それ以上にダンジョン内がモンスターの気配で溢れかえっているのだ。


「北斗が頑張ってくれたからって思ってたんだけどー……本当、ダンジョンって厄介だよねー」

「リポップがあるから数こそ回復することはわかりきってたことだが……上層エリアすら中層エリアの深い階層レベルの難度になってるぞコレ。琉歌がダンジョンを一時的に封鎖っていう判断をしてくれてなかったら初心者連中がどれだけの数犠牲になったか……想像もしたくないねえ」


一歩中に足を踏み入れればその惨状がよく分かった。

本来上層エリアに出現しているモンスター達が、より高位のモンスター達に蹂躙され喰らわれているのだ。

同族すら喰らうモンスター達。もしこれが市民が住まう住宅街に溢れてしまったら、地獄と呼ぶに相応しい光景が広がることになるだろう。


「そうだねー……とりあえず、上層から順々に数を減らしていって……うー、ごめん、北斗。こんなこと言ったけど、そんな余裕ないかも」

「……だな。俺も見誤ってた……他の探索者も募集すべきだったか」


ぴたりと足を止めた2人の視線の先。

北斗がこの3日間で倒したモンスターを上回る量のモンスターの気配が肌を突き刺さんばかりに漂ってきていた。

















あとがき


散々誤字るお馬鹿、作者でございます。

今回こそ、今回こそ誤字はないと思うのですが、下書きしている箇所からそのまま持ってきているので誤字まで持ってきていたら大変申し訳ございません。


今回更新まで日が少し空いたのに中々続きが思い浮かばず、難産だった割に短くなってしまいました。もっとネタの引き出し作らねば。


そして、改めてになりますがこんな誤字だらけの作品を読んでいただき、フォロー、評価、応援まで、本当にありがとうございます!!!

コメントも沢山いただき、もう半泣きでございます。書き始めた当初はこんなに見ていただけるなんて思ってなかった。

今後も頑張りますので、ゆるりと応援してくださると発狂して喜びますのでお願いします。

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