第30話 対策と鉄槌

京都での配信を終え、もっと滞在していけばいいという澪那からの申し出をやんわりと断り戻ってきた東京。

真っ先に向かったのはダンジョン省、伊瀬見千歳の元。

祇園ダンジョンでの出来事を伝えると彼女の顔は険しくなった。


「成程な……国内にも躍進凄まじいお前のことを妬む人間は出てくるだろうとは予想していたが、まさか身勝手にもお前を受け入れなかった人間までそうなるとは。怪我は?」

「問題ありませんよ。万が一あったとしても京都で再会した澪那……氷鶴に強制的に回復魔法をかけられましたので完治しているはずです」

「そうか、ならばいい。とはいえこのまま放置はよろしくないな」


千歳の言葉に頷く。

俺もこのままやられっぱなしでいるつもりはないからねえ。


「国外については既に国から正式に抗議をさせて貰っているから安心して欲しい。ただ、国内については無理にこちらが手を出すと贔屓だとまた変な方向に転がりかねないからお前に任せるしかないが」

「そこは流石に自分で始末をつけますよ。ずっと真綿で包まれて守られる子供じゃないですからねえ。取り急ぎ、配信で警告しておきますよ。それでも手を出してくるなら、あとは司法にお任せになりますが」


笑みを浮かべてはいるものの、瞳に浮かんでいるのは怒りの色。

怒りの原因はエターナルの事務所所属のVTuberのファンから届いている誹謗中傷。

フォルトゥナとの件や水琴とのコラボに引き続きまたか、と思われるだろう。

またなのである。

エターナルに迷惑をかけるな、自分の嘘だと証言しろ程度ならまだいい。

何の関係もない澪那への誹謗中傷や、北斗自身への口に出すのも憚られるほどの罵詈雑言が多く、流石の北斗もげんなりする程だった。


「色々とすまないな、東雲。こちらで全て対処できれば良いのだが」

「気にしないでくださいな。配信者やっている以上、こういうのは付き物だと覚悟の上ですし、俺が以前徹底的にやったことを忘れて似たような騒ぎを起こしているんですから相手の自業自得ですよ」

「ふっ……確かに、かなり容赦なくやっていたな。和解の申し入れもあったんじゃないか?」

「そこで許してしまったら駄目ですよ。喉元過ぎれば熱さを忘れる……また同じことをやらかしますよ、連中は」


一回痛い目を見た方がいいんです、と北斗は満面の笑みで言ってのけた。

ガチ恋勢も相当厄介だけど、便乗して炎上させる奴らも相当タチが悪いからねえ。憂さ晴らしでこんなことをしたらどうなるかわからせてやらないと。

30分ほど今後の話をしたところで北斗はダンジョン省を後にして自宅に直行、すぐに配信の支度を始めた。

普段はなるべく優しい色合いの和装を選ぶのだが、流石に今回は2度目ということもあり黒と赤を基調としたものを選んだ。

顔につける面も狐面ではなく、鬼面。

全く違う装いに身を包んだ北斗はカメラの前に立つと、配信ボタンを押した。


「はい皆さんこんにちは。雨月紫雲の配信、初めて行きますね」


“え、雨月……??”

“狐面じゃない”

“なんか、雰囲気がいつもと違う”

“どうした……??”


案の定いつもと違う北斗にコメント欄は混乱のコメントで溢れた。

あれだけしつこくSNSにDMを送ってきていた迷惑者達は身を潜めているのかぱっと見当たらない。配信にコメントを送らなければ良いと思っているのだろうか。


「今日の俺の格好が違うことに困惑していることだと思います。今回の件について全く関係のない視聴者の方々には申し訳ございません。SNSで文面を出すことも考えたのですが言葉で伝えた方が良いかと思い配信させてもらっています。先日の祇園ダンジョンの一件以来、とある方々からの誹謗中傷が酷く……今日はどういった対処をしていくのか、今後の俺の方針についてが主の内容ですねえ」


“あー……”

“雨月くんのSNSやばいことになってたもんなあ”

“この配信には見当たらないけど、今になってやべえって思って隠れてんの?”

“この格好、つまり雨月相当お怒りなのでは…?”

“鬼面ってことは、そうだよねえ……?”

“服装も黒っぽいし、確実に怒ってる……”


流石は俺の配信をちゃんと見て楽しんでくれてる人たち、俺の意図を理解してくれて有り難い限りだねえ。


「まあ、怒っていると言えば怒っています。俺に対してだけならいくらでも言ってくれて構いませんしどうぞお好きに、という感じなのですが……今回は俺へのものもありますが祇園ダンジョン支部を統括している飛燕のクランマスター、氷鶴さんへの中傷が酷く。当の本人は俺みたいに気にしていないそうですが連日支部の方にも嫌がらせもあるらしく。ただその場に居合わせて冷静な第三者の目で場を判断してくださっただけの彼女へこんなことをするなんて……ねえ?」


これまでを振り返ればわかるだろうが、北斗は基本的に身内には甘い。

しかも、今回は巻き込んだ……巻き込まれてしまった相手がかつてのパーティメンバーという何より信頼している相手。

そんな人物を巻き込み炎上させた迷惑者達の末路は想像に固いだろう。


「なので、今回も容赦はしません。既に然るべき場所へ依頼済み、証拠も抜かりなく抑えています。前回同様和解なんて勿論受け入れませんので」


──覚悟、してくださいね?


ゾッとするほどに美しい笑みを口元に浮かべているの状態での低く冷たい声音に、コメント欄のなんの関係もない視聴者たちも何かを感じ取ったのか。


“やば”

“こわいこわいこわい”

“普段穏やかな人が怒るとこんなに怖いの!?”

“前の炎上の時はおこだったけど、今回は激おこって感じ”

“ひえええ……”

“誹謗中傷した奴ら御愁傷様…”

“というか、今ピロピロ音が鳴ってるのってまさか……”


「今まで誹謗中傷していた人たちからの謝罪メールの嵐の音ですねえ。配信のコメントに上がってこないのはデジタルタトゥーを残さないためなんでしょうかね?まあ、今言った通り容赦はしませんから今更の謝罪も不要です。警察や省庁からの発表でどちらに非があるかも明らかになっていたというのにこの始末。……つまり、覚悟の上でここまで騒ぎ立てたんだろ?大人しく受け入れろ」


怒涛の勢いで届き続けるメッセージに見向きもしないで断言する。

今更後悔しても後の祭り、覆水盆に返らずってね。

──弁護士から通知が届くのを震えて待て。


「ああ、それと。今回動いているのは俺だけではありません。本人から許可を得ているのでここで一緒にお伝えしますが、祇園ダンジョン支部を統括するクラン、飛燕からも何かしらの訴えがあると思いますので、心当たりのある方々はそちらも覚悟をお願いします」


“わ、わあ……!!”

“泣いちゃった”

“うん、怖い”

“まあでもここでガチで絞めに行かないとまたちょっとのきっかけで同じような奴らが湧くだろうからなあ”

“まあこれは迷惑かけた奴らが悪い”

“それは本当にその通り”

“空気ぶった斬るけど激おこ雨月の声がめっちゃ好み”

“癖を歪ませられている人まで出てきちゃった”

“確かに雨月ええ声してますけども”

“本人の心境考えたげてよお……”


なんか変なコメントがちらほらと……俺の声がいい声?

いや、まあ……今触れないでおこうか。


「最後に警告を。俺は今後も俺以外を巻き込むようなことをした場合には容赦なく対処することをお伝えしておきます。俺としても、あまりこういったことはしたくないのでどうか念頭において頂きますようお願いしますね」


小さく頭を下げ、少しばかりの雑談ののちに短い配信は終了した。

仮面をとり、椅子に凭れて天井を見上げ息を吐く。


「これで炎上が最後であってほしいけど……どうだろうねえ……」


これからも巻き込まれるような気がしてならず、少しばかりゲンナリする北斗なのであった。















あとがき


前回のお話で言葉が間違っていましたので修正しました。ご指摘ありがとうございます!!

ドヤ顔で書いておいて間違ってて恥ずかしすぎる……けどもしこれからも間違っていたら遠慮なく教えてくださると嬉しいです!!


明言してなかった気がするのでここてお伝えしておくと、千歳は女性です。明言してたらごめんなさい、念のために。


そして、何度もお伝えさせていただきます。

評価、応援、フォロー、本当にありがとうございます!!!

コメントもいただけて本当に嬉しいです!

毎回によによしながら読ませていただいています。

これからもっと頑張りますのでのんびりと応援してくださると嬉しいです。

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