無自覚最強探索者がゆく、お気楽ダンジョン珍道中
ゆきおんな
第1話 プロローグ
スマホの普及によりテレビよりもNewTuberやVTuberが人気を博するようになってきた昨今。
VTuberの事務所の中では最大手の事務所『エターナル』の前に佇む青年、
書類選考も無事に通り、今日は待ちに待った面接の日。
早めに事務所に到着した北斗は事前に指示されていた通りに会議室へと向かおうとした…のだが。
「貴方程度の人はいくらでもいるんですよねえ。そんな人の面接なんてするだけ無駄なので、どうぞお引き取りください」
バタン!!!
目と鼻の先で勢いよく閉められた扉に北斗は目を瞬かせる。
あわよくばデビュー出来ればと、どこか浮ついた気持ちで応募したのは事実とはいえ、まさかこのような対応をされるとは。
「…まあ、別にVTuberでなければいけない理由とかはないし…ちっとばかしべつの手段を考えてみるかぁ」
別段気にした様子もなく踵を返しエターナルの事務所から遠ざかる。
北斗は確かにVTuberに憧れこそあったが、絶対にVTuberになりたかったかというとそうではない。
そもそも北斗がVTuberを目指したのは色々な人に楽しんでもらえるコンテンツを作りたいという思いの方が大きかったため、VTuberという職業に拘る理由はないのだ。
さて、どうしようかねえ…ただNewTuberになったとしても企画が面白くなければ視聴者なんてついてくれるはずもないし…。
「…配信…俺の本業は探索者だし…なるかあ、ダンジョン配信者」
ダンジョン。
それは数十年前に突如として世界各地に現れた異世界への入り口。
ダンジョンの中にはモンスターが蔓延り、戦いに身を投じたい者、一攫千金を夢見る者、知名度をあげて一旗あげたい者…様々な思惑を持つ者が数多く挑んでいた。
今ではそれも形を変え、動画コンテンツの普及にあわせるようにダンジョンを探索しながらその様子を配信する探索者も多くいた。
とはいえ全く同じような配信をしても食いつく人は少ないだろうし…上層エリアからコツコツじゃなくて、いつも通り下層エリア…それでなくても中層エリアから攻略していけば少しは興味を引けるかねえ?
「なら、久しぶりに装備の手入れに…配信用カメラを用意しないとな。ダンジョン省の方にいくつかドロップ品売ればそれなりにいいカメラは用意できるとして…太刀が少しガタが来てたし作り直すか」
思い立ったが吉日、とすぐにタクシーを拾って自宅への帰路へつく。
家に帰るなり早速アイテムボックスを展開し、中から太刀の素材に良さげなものを引っ張り出す。
ヒヒイロカネ、オリハルコン、ミスリル…一つでも一生遊んで暮らせるほどの額がつくだろう鉱石を惜しげもなく取り出すと、とある細工を施していく。
「…うん、武器はこれでよし。カメラは…他の配信者の人が買っている中で性能が良さそうなものを買ってみるか。カメラの良し悪しなんてわからんからなあ」
ぶっちゃけ映ればいいじゃんの精神だからな、俺…と、パソコンに向き直りああでもないこうでもないとカメラを検索し、なんとか評価の高そうなものをいくつか見繕ってから一息つく。
「あとは…配信者になるって言っても先達みたいに顔を出してってのは少し抵抗があるな…。それに服装も、基本配信をしている探索者って派手な格好していることが多い傾向にあるし。なんか良さげなもんないかね」
くるりと体の向きを変えて家の箪笥の中を下探る。
…ん?お、これなんかいいんじゃないか。服装はこれとして…顔はどーするかね。
ふと、壁にかかっているとあるものが目に入り口元が緩む。
「これで探索時の格好も問題なし、と」
全ての用意を終えてベッドに身を横たえる。口元には相変わらず笑みが浮かんだままだった。
……あれ?俺、なんかすごく高揚してる。いくら見る人が楽しめるコンテンツを作れればいいとはいえ、事務所を門前払いされて、ある種夢の全否定をされたというのに。
「……楽しみだなあ、初配信」
あとがき
初めまして。
元々物語を書いてみたいなーと言う気持ちで描き始めた拙作ですが、どなたかに楽しんでいただければいいなと思ってます。
ちまちま書いていきますので是非読んでみてくださいませ。
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