第8話
尋ねた。母親が出てくる。
彼女は徳田を見ると、文字通り顔を青ざめた。
家の中に飛び込み、玄関の戸を閉めた。
「あのう……」
「帰ってください! お願いですからもうかかわらないで!」
金切声と言っていい声で叫んだ。
「もしもし、どうかしましたか」
「帰ってください! 帰ってください!」
そのあまりの剣幕に、徳田は彼女と話をすることを諦めた。
――でもどうしてあそこまで拒絶するのだろうか。
考えたが、分からなかった。
それにしてもあの態度は、とにかく異常だと思った。
数日ぶりに娘が学校に登校した。
しばらく休校だったのだ。
しかし通常の授業が開始された。
徳田はまだ早いと思ったが、家に閉じこもっているのも娘によくないかもと思い、心配ながらも送り出した。
学校の前には全国から集まった報道陣が集結していたのを、後に徳田はニュース映像で知った。
徳田にはそれが、まるで亡者の群れのように見えた。
――こんな時に……。
徳田には、日本中がこぞって娘の神経を逆なでしているように思えた。
――あいつらの頭が吹っ飛んだらいいのに。
徳田はそう思った。
そうしているうちにも、娘の誕生日が近づいて来る。
時は止まらない。
待ってもくれない。
そしてとうとう明日が誕生日となった。
「明日は学校を休め。俺も仕事を休むから。二人で家にいよう。どこにも出かけずに」
娘はしばらく徳田の顔を見ていたが、やがて小さくうなずいた。
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