第31話 感動ではない再会
商店街で店じまいを任され、太陽はシャッターを下ろす。手には余った総菜をお土産に持たされていた。
今からダッシュで下宿に戻れば、銭湯に間に合うだろうか。
養父から譲り受けた腕時計を見ながら、太陽は歩き出そうとする。部屋で暖房を使うのももったいなく感じているので、お湯に浸かって物理的に体を温めたかった。
「太陽くん。」
「!」
背後から名前を呼ばれ、驚いて振り返るとそこには星が立っていた。
「あれ…、えーと。こんばんは、星さん。…?」
星の後ろにはフードをかぶった長身の女の子がいる。自分とは5㎝低いぐらいか。星の友人かな、と思い、軽く会釈をする。女の子は何故か、息を飲んだようだった。
「こんばんは。…今、時間あるかな。」
「はい…、ありますけど。」
銭湯を諦めることにして、太陽は星に向き合う。
「蜂谷 みつき。」
「え?」
視線を星の後ろにずらすと、女の子がフードを脱ぐところだった。
「私の名前。」
自分と同じ色の髪の毛が、吹いた風にふわりと柔らかくなびく。前髪でくすぐられ閉じた瞼が、そっと開いた。その目を見て、パチッと電気が走るような衝撃を感じた。
「…みつき?」
星に背中を押されて、みつきが一歩前に出る。近づく距離に、太陽が今度は息を飲む番だった。
「本当に…?」
「うん。」
みつきは頷くと、上着についているファスナーを下ろす。そして寒空の下、中に来ているシャツの襟をぐいと下げた。まじまじと見つめるのがはばかれる場所と知りながら、その肌に目が離せない。そこには太陽が唯一持つみつきの写真と同じ場所に、三日月形の痣があった。
「これが証拠になるかわからないけど。」
「いや…、大丈夫…。」
太陽が痣を見たのを確認して、みつきは服を正す。
「ここじゃ寒いので、場所を移動しましょう。」
みつきと、動揺する太陽に向かって、星が提案する。そして曖昧に頷く二人を引き連れて、歩き出した。
場所を駅前の深夜営業するファミリーレストランに移動して、三人は飲み物を注文した。アルバイトらしきウエイトレスに配られた飲み物をそれぞれ受け取り、しばらく沈黙の時間が流れる。寒い所から、暖かい店内に移動したのにも関わらず温度差を感じなかった。
「…私、席を外した歩が良い?」
沈黙を破ったのは星だった。その問いに、みつきと太陽が同時に答える。
「大丈夫、ここにいて。」
「ここにいてくれませんか。」
想いがけず重なった言葉に、二人は目を見合わせた。
ふっと笑い、雰囲気を柔らかくしたのはみつきの方だった。
「…元気だった?」
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