瑞希と澪と初めて?のラブホ

 ある日の夜、俺、由紀瑞希が晩飯の片付けを終えたら藤乃から電話がきた。


『旅行行こうよ。花音ちゃんと、美園さん……お前の嫁さんと』

「いいけど、そんな暇あんの?」

『正月の二日と三日、どう?』

「ああ、なるほど」


 その辺なら、うちの親父と藤乃の親父が毎年うちで飲んだくれてるから、ちょうどいい。


「どこ行くんだ?」

『せっかくだから初詣できるところがいいよな。あと、瑞希さ、嫁さんを苺の食べ放題ができるビュッフェに連れて行きたいって言ってただろ? だからビュッフェじゃないけど、苺狩りどう?』

「お前天才じゃん……!」


 ざっくり場所決めて、澪に声かけに行った。

 澪が二つ返事だったから親に言ったら、そっちもすんなりオッケー。

 部屋に戻ってタブレットで旅館を探しながら、また藤乃と電話する。


「その宿良さそうだけど、あんま部屋広くなくない?」

『ダブルを二部屋とればいいだろ。部屋風呂付きのプランあるからそれにしよ』

「別に同じ部屋でいいだろ」

『お前はよくても、お前の嫁さんがよくない』

「そうかな」

『そうなんだよ。ろくに知らない男と同室で寝るの、普通嫌だと思う。あと、花音ちゃんといちゃいちゃできないから、俺がヤダ』

「あー……うん。悪かった。俺もヤダ。じゃあ、ダブル二部屋で」


 宿の予約は藤乃に任せて電話を切った。

 俺も妹の喘ぎ声なんか聞きたくねえし、澪の声も聞かせたくねえ。

 ……そういや、あいつ全然声出さねえな。

 その晩、気になって様子見てたら、声抑えてるっぽかった。

 そうなると俄然気になるわけで。

 廊下挟んで向かいに親の寝室あるから、気にしてんのかもな。

 じゃあ、気にしなくていいとこ連れ出してやるか。



「おい、今日の午後空いてるだろ?」


 藤乃と電話をした数日後、朝飯を片付ける澪に声をかけた。


「はい、今日の午後はお休みをいただいています。何かご用ですか?」

「ちょっと出かけるから、そのつもりでいろ。つっても、お前はなんの用意もしなくていい。俺が車出すし」

「わかりました……?」


 不思議そうにする澪の頭を撫でて、畑に向かった。



 昼飯の後、親に澪と出かけると声をかけて家を出た。

 車に乗り込むと、澪はこてっと首をかしげる。


「どこに行くんですか?」

「いいとこ」

「いいとこ……?」

「着いてからのお楽しみ」

「……瑞希さん、ときどき言い回しがかわいいですよね」

「そうかあ?」


 しばらく走って、目的地に着いた。

 駐車場に目隠しがついてる。

 そういや車で来るのは始めてだ。


「……瑞希さん、ここって」

「うん」

「あの、えっと……」

「うわ、システムすげえ変わってる。でもこっちのが楽でいいな」


 一番高い部屋を選ぶ。

 安いとこだとイタズラされてたりすんだよな。

 つっても、ここらで一番高いとこにしたから、馬鹿な学生はそういないだろうけど。


 ソワソワしてる澪を引っぱって部屋に入った。


「よし」

「よ、よくないです!」

「よくなかった?」

「あ、あの、ここって、あれですよね」

「うん。ラブホ」

「なぜ……?」

「お前さ、声出さねえから」

「……??」


 澪が「意味が分からない」って顔で黙って俺を見上げてきた。

 ぐだぐだ説明すんのも面倒で、手を引いてだだっ広いベッドに座らせた。


「とりあえず脱げ」

「えっ、あっ?」

「澪、家だと声出さねえだろ」

「声、ですか?」


 困った顔のまま、澪はおとなしく脱がされてる。

 まあ、いつものことだしな。


「うん。親がいるから我慢してんのかと思って」

「そういうわけでは……。あの、恥ずかしいので」

「なにが?」

「……訳が分からなくなってる声を聞かれるのが」

「ふうん」


 なるほど。

 つまり、普段はまだ理性残ってたんだな。

 

「わかった。じゃあ、我慢できなくなるくらい、気持ちよくしてやるから、覚悟しとけよ」

「えっ」


 時計を確認する。

 晩飯も食ってくると言ってあるから、あと七時間はある。

 かわいい嫁さんに満足してもらえるよう、たっぷり頑張るか。





「ひどい目にあました……」


 事後、ぐったりしてる澪抱えて風呂にきた。

 家のも広いけど、これはこれで広くていい。

 出た後、掃除しなくていいのが特にいい。

 澪をざっと流して、後ろから抱えて湯船に浸かった。


「また来よう」

「……あの、たまにでお願いします。しょっちゅうだと、死んじゃいます。喉も痛いですし」

「かわいかったけど」

「そ、そういう問題じゃないです……! 瑞希さん、こういうとこ、よく来るんですか? あ、いえ、すみません、無しで」

「いや、いいけどさ」


 赤くなってる澪の首筋に噛みついた。

 いや、ここは見えるから痕残しちゃ駄目だ。

 もうちょい下にしよ。

 澪の背中は白くて綺麗で、痕を残すと映える。


「えっと、俺今いくつだっけ? たぶん、最後に来たのが十……二、三年前、かな」

「大分前ですね」

「うん。高校卒業前が最後だったと思う。だからシステム変わってて驚いた」

「……そうですか」

「あ、でも風呂は初めてだ。思ってたより広いな」

「そうなんですか?」

「うん。言っとくけど、俺、事後に寝落ちしたのもお前が初めてだからな」


 ……だから余計に、初めての時に朝いなかったのはショックだった。

 でも、それ以降は必ず朝、腕の中にいるようになったから、まあいい。

 あと痕を残すのも澪が初めてだけど、黙ってる。


「そうでしたか……」

「だからまあ、前のことで嫌な気分になってほしくねえってだけだ」

「すみません。そういうつもりじゃなかったんですけど。その、慣れてるなーって思っただけで」

「慣れてるってより、澪の反応がかわいくてついヤリすぎんだよ」

「それはほどほどにしてください」


 真顔で怒られた。

 最近、たまにそういうときがある。

 影薄くて消えそうだった澪が、今ははっきり見えるようになったのが嬉しいから、そういう時はちゃんと謝る。

 確実に俺が悪いし。


「すまん。気をつける」


 たぶん無理だけど。

 さっきも、初めて聞いた声がかわいくて、もっと聞きたくてやり過ぎた。

 ……だから、また連れて来よう。

 天蓋ベッドあるラブホとか、温泉付きとか、プール付きもあるらしいし。

 プラネタリウムがあるラブホもあるらしいけど、ちょっと遠いからな。


「澪」

「はあい」

「晩飯、何がいい?」


 澪がパッと笑顔で振り向いた。


「ノスバーガー、行ってみたいです」

「そんなんでいいのか?」

「先日、お義母さんに初めてナクドナルドに連れて行ってもらいまして」

「……マジか。よし、ノスにしよ。好きなだけ食え」

「はい!」


 嬉しそうにする澪を抱え直した。

 高校の時に散々女遊びをしてた俺は、今さらだけど澪と青春をやり直してるみたいで、腕の中の彼女を初恋みたいに大事に抱え直す。

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