4話
「ひでちゃん…!待ってってば…!」
「キキキ!」
明日未のスマホを持ったままあちこち飛び回り逃げるひでよし
それを息を切らし追いかける明日未
相手は小さな猿
しかしその身軽さは人間には敵わないほど
ひでよしは入り組んだ道や草木が生い茂る草原にまで入り込み素早く逃げつづけていた
そのうち、5mの高さはある木へと向かうひでよし
その木の頂上には同じ高さに並んだ坂道がある
ひでよしは高い木の上に登り、そこから坂道へと飛び移った
「この……!」
ここで逃がせば命と同じくらい大切なスマホだけでなく、小夜への手掛かりまで失ってしまう
そう思った瞬間、明日未は自身に宿す運動能力をフル稼働させる
「逃がすかー!!」
明日未は木の太く頑丈な枝を足場にしてひでよしにも負けない速さで一気に木を駆け上がる
そして太い枝を握り、それを軸にした遠心力によって正面へむかって身を空中へと投げ出した
そのまま木の高さと並んだ坂道へと華麗に着地した
「すっげ〜!?なに今の!?」
近くで見ていた子供が驚きの声を上げる
「キ!?」
「待てぇええ!!」
凄まじい初速でひでよしへと急接近する明日未
ここまでして追ってくると思わなかったひでよしは流石に驚いた表情で再び逃走を開始する
必死に追いかけてる途中、明日未はあることに気付く
(この道………まさか……)
20年前の光景にも関わらず明日未はその道に見覚えがあった
ひでよしが駆けるその逃走経路は明日未が毎日何度も行き来しているルートである
ひでよしを追ってるはずが、足が勝手にその道へと進んでいるようだった
そして明日未の予想は的中することになる
「やっぱり……!あたしが通ってる学校……!」
見慣れた校舎が目に映る
しかし記憶の中よりも遥かに綺麗で汚れもほとんどない校舎だった
ひでよしは外柵をよじ登り学校の中へと入っていってしまう
「や、やば……!」
校内で見失ったら終わりだ
校門の方へと走っていくが、固く閉ざされている
その近くの警衛所にはまだ若い警備員がいた
慌てて走ってきた明日未に気付いた警備員が校門越しにやや強い口調で声をかけてきた
「待ちなさい、君!」
「あっ………えー………っと……!!」
「ここの生徒か?」
「そ、そうというか…!そうなる予定というか…!」
「何を言ってるんだ?学生証は?」
校門横の小門を通りこちらにくる警備員
───詰んだ
その瞬間、明日未は目を見開き声を張り上げる
「うわァッッッ!!??何あれッッッ!!??」
「はっ!?」
「───っ!」
大袈裟な演技で警備員を余所見させる
その一瞬の間で、門の柵を足場に駆け上がり、校門の上側に手をつき体を水平にして飛び越えた
体が自然に動く
いつものように
「な…!?コラ!待て!!」
「ごめんなさーい!!」
後ろから追いかけてくる警備員を校内に入ったひでよしを追いかけながら撒く明日未
ひでよしは階段の手すりを足場に駆け上がっていく
明日未も階段を数段飛ばしで駆け上がる
ひでよしは曲がった先の廊下
その先にある一つの教室の中へと滑り込んだ
「…………!」
明日未はそこで足を止める
そして確信した
───いる
追いかけていただけのはずが、いつの間にかここへと導かれていた
明日未の緊張感が一気に高まる
なんと説明する?
タイムマシン?
20年後の世界?
愚直に説明して信じる人間なんているはずない
明日未は高鳴る鼓動を押さえるように、深く息を吸う
切らした息を自分を落ち着かせるように整える
そして、その扉をそっと開く
そこにいたのは、まだあどけなさを残す親友の姿だった
肩に乗せたリスザルを支える仕草は柔らかく、
その小さな両手で、明日未のスマホをしっかりと持っている
彼女はその“未来の異物”を、不思議そうにまじまじと見つめている
やがて、少女がこちらに気づく
ゆっくりと顔を向け、視線が重なる
落ち着いていて、どこか見守るような眼差し───
その面影を宿した碧色の瞳だった
「……さよちぃ」
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