IDLE OR DIE
路地裏乃猫
第1話
――キラキラが止まらないの。
――だからわたしは歌うの。
数万もの聴衆が一堂に集うコンサートホール。広大な空間は、今や、たったひとりの小柄な少女が発するオーラ、あるいは気迫に支配されている。マイクを通じて拡散される少女の歌は大気を震わせ、今日この場面に立ち会うことを許された観客たちの鼓膜を、心を容赦なく揺さぶる。
アイドル。
ただそこに立つだけで無尽蔵の輝きを放つ生ける偶像。彼女は人間であって人間ではない。人ならざる輝きは人ではないからこそ持ちうるもの。その輝きを求めて、数万の聴衆がこの場に足を運び、その数十倍もの観客が、あらゆるメディアを通じてステージ上の少女を見守る。
――わがままに自分勝手に。
――でも、そんなあたしが好きなんでしょ。
少女の投げキスに、あざとく閉じられる片目に、どう、と湧く幾万もの観衆。誰ひとり彼女のカリスマを疑わない。疑う余地などない。なぜなら彼女はアイドルになるべくして生まれた存在。アイドルとして生き、輝きながら死ぬ。まさに
だが。
人は所詮、ただの人であり。
偶像だった彼女も、いつかはただの人に戻って。
そして悲劇は起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます