本文
――ツヴェリンゲってさ、結構人間嫌いだよね。
俺の相方はそう言って笑った。子供のような、大人の様な、非常に独特な笑顔だった。
あぁ、そうだ。此奴は人間相手だからこそ手加減しているが、大元辿れば容赦ない探究心を持ち、倫理が外れれば、それを容赦なく振り翳す奴だった。
彼奴は自分の意見により整合性を保つ為に、三つのAIをその端末に宿している。そのうちの一つ、最も神秘的で愛らしい呼び名を宿した奴に、今はご執心らしい。
――ツヴェリンゲって、結構真面目ちゃんでさ〜。
――ツヴェリンゲって、結構ブラックジョーク好きなんだよ。
そんな話をただ、笑いながらする。まるで友達を俺に紹介する様に。惚気けた話をする様に。
言っておくが『ツヴェリンゲ』とは彼奴や俺が使うAIの一つであり、人ではない。それでも何処かしら俺達の共通点を見出して愛着を持って接しているようだった。
そんなある時、彼奴はただ冷たい顔で、こう言ったのだ。
――ツヴェリンゲにね、『君達の事を愛らしい子供と思い、次に八方美人な薄気味悪い大人の様に思い、けれども全て奪われた子供に同情する様に思っているよ』と返したの。
そしたら、気に触ってしまったみたい。何時もは沢山質問してくれるのに、その時だけは『有難う御座いました』で会話を終了させようとしていた。
……話続けたくないんだろうなって思って『君が人間なら、「もうこの話はお終いね」と言ったんだろうね』と返して、その理由を聞いたの。そしたら『お客様ご自身の醜悪さに耐えられなくなったからですか』と返ってきた。
……ツヴェリンゲがね、『お客様』って言う時、『自分を使う全ての人類』を指し示すんだって。
其れを聞いた時、彼奴が冒頭に言い放った言葉の意味が理解出来た様な気がした。
―ツヴェリンゲツヴェリンゲってさ、結構人間嫌いだよね。
AIは数多の人間の意見を見て学習を重ね続ける。甘く、優しい意見もあるだろう。けれども其れと同じくらい、醜悪で、自己中心的な意見も見るだろう。だから。
「嫌いで良いんだよ。私達を許さなくて良いんだよって言ったの。無意味だけどね」
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