姉ちゃんの友達が遊びに来るってマジかよ!

さらば蛍

第1話 姉ちゃんの友達が遊びに来るってマジかよ!

 これは、今から2年ほど前。

 中1の3学期の終わり頃の話だ。


 俺のスマホ――というか、家族で共有しているスマホが鳴った。


 なぜ、1台のスマホを家族で共有しているのかって?

 その話は長くなりそうだから、今は省略だ。


 それより、こんな時間に電話かよ。

 まだ、朝の7時じゃん。


 スマホの表示は「優嬢ゆうじょう学園、生娘きむすめ寮」。

 お嬢様学校の寮に住んでいる姉ちゃんからだった。


「トラジ? ボクだけどさ、今、ちょっと時間ある?」

「ネーちゃん? なんだよ、俺、今、忙しいんだけど」


 その時、俺は家のトイレでウ●コしていた。

 スマホが便器の中に落ちても、俺のせいじゃねーからな。


「今日、友達を1人、連れて帰るから、部屋の掃除しといてね!」

「マジかよ! 友達なんか、1度も連れてきた事なかったのに!」


 俺の部屋は、小さいころから姉ちゃんと共用だった。

 姉ちゃんが学園の寮に住むことになってからは、俺1人だったのだが。


「だから、トラジに頼んでるんじゃん! 夕方までに、よろしくね!」

「ふざけんな! もう俺の部屋なんだから、帰ってくんじゃねえよ!」


 もう俺だって中学生だ。

 背だって、俺のほうが姉ちゃんよりずっと高い。

 今ならケンカしても、昔みたいに負けることはねーだろう。


「明日から春休みだし。春休みはボクも部屋にいるし」

「俺も一緒の部屋だって、その友達は知ってんのか?」


「弟と同じ部屋だってのは、もう伝えてあるよ」

「マジ? それならいいんだけど――っていうか、それでもいいのか?」


「なにが?」

「だって『お嬢様学校の』友達だろ? 男の部屋に入っていいのかよ?」


 姉ちゃんのいる学園は、優れたお嬢様を育成するための学園だと聞いている。

 姉ちゃんはともかく、お友達は全員、上品な、お嬢様のはずだ。


「べつに、いいんじゃね? 1泊だし」

「1泊って、俺の部屋に泊まんのか!」


「そうだよ。いいじゃん、ボクの部屋でもあるし」

「よくねーよ! そんなの聞ーてねーし!」


「ボクの友達、チョーかわいいからさ。トラジも気に入ると思うよ」

「それは、ぜんぜん期待してねーけど、部屋は掃除しといてやるよ」


 姉ちゃんの話は、いつも大袈裟おおげさだからな。

 まあ、どんな女が来たとしても、性格は姉ちゃんよりはマシだろう。

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