第08話 酔ってたって甘衣さんは、甘い(1)
僕らは、スキー実習を終えて疲労困憊だ。
その状態で浴びる湯と、露天風呂から望む秘境が絶景だったことは言うまでもない。
10時の消灯時間までは、まだ幾らか時間の猶予がある。
そんな時、僕は大体本を読む。今回も、動かない身体に鞭打って枕投げに興じるルームメイトたちを尻目に、本を取り出した。
半分ほど読み終わっている本の続きを確かめるべく、敷布団にうつ伏せになってページを開く。
しかし、まだ遊び足りないという無邪気なルームメイトたちは、僕を一応誘ってから、ロビーへ外出してしまった。
大方、売店のカップラーメンでも食べるつもりなのだろう。言わずもがな、僕の両足(筋肉痛)にそんな余力は残っていない。楽しそうだな僕も行きたかったなぁ〜。
本を読み始めて、15分ほどが経った頃。
部屋の玄関で、がちゃりという音が鳴った。
ルームメイトたちが帰ってきたのだろうか。にしては、ずいぶんと早いお帰りだなと思う。
この部屋が25階にあり、ロビーへ向かうエレベーターへの道のりも複雑だ。
初めて来たにしては手際が良いな……なんて思っていたが、その想像は全て的外れであったことが判明する。
「うみゅ〜……」
室内へやって来たのは、甘衣さんであった。
「あ、甘衣さんっ!? どうしてここに……」
女子部屋は、対岸にある別棟のはず……
そこから、ここまで一人で来たのか!?
「ま、まずいよ甘衣さん。もうすぐ消灯時間だ。先生たちの見回りだってくるし……」
「む〜……どうして、成瀬きゅんはそんなこと言うですかっ? わたしのこと、嫌いなんでしゅか」
「はい!?」
部屋へ入ってきた甘衣さんは、もこもこのパジャマをはだけさせ、右肩が見えている。いつもは見ることのできない彼女の絶対領域へと踏み入ってしまった僕は、ばっと顔を背けることしかできなかった。
「ちょ……甘衣さんっ! こちらは男の聖域です! これ以上入ることはゆるしましぇん!」
「えへへ……ゆるしましぇんだって、かわいい〜」
やはり、様子がおかしい。
近くに寄って来た甘衣さんからは……微かに、父親が晩酌をする時の匂いがした。もしや……
「甘衣さん、お酒飲んだ……?」
「むっ。失礼にゃ! わらしが酔ってるとでも言いたいんれすかぁ〜?」
「う、うん。そう言いたいんだ。話が早いね甘衣さん」
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