第45話 青くなりました。
「どうやって探そう」
口でいうのは簡単だが、それなりの手間と時間のかかる話だろう。
「リトルバードへの旅も続けねばならんからの。こやつらに探って貰うとしよう」
続いてルルスファルドは、『恩寵紋』の槍の力で生えた果実を食べているスライムたちの姿に視線を向ける。
黒い体が青く透き通っていっていた。
「なに?」
「良いものを喰ったおかげで変質しているようじゃな。グールスライムからトロピカルブルースライムに変化した。温暖な海に適応したスライムじゃ。泳ぎや潜水が上手い」
「スライムって、そんなに簡単に変化するものなの?」
「普通はせぬが、『恩寵紋』と『神槍紋』の作用じゃろう。一匹一匹が聖獣まがいのものとなっておる」
――なんだか大変なことに。
テケテケは安定しているらしく、最初の黒い姿のままだ。
「スライムどもを借りるぞ」
そう告げたルルスファルドはサファイアのような色に変わったスライム達に指示を出す。
「このあたりの海の様子を探り、海人族の住処を探してくるのじゃ。スキュラがおったら駆除して構わぬが、他の生き物との争いは避けよ。我々は一度ここを離れ、リトルバードへの旅を続ける。夜明けまでには戻る故、おまえたちもそれまでに戻り、調査状況を報告するがよい」
テケ!
テケテケ!
了解、と言うように声を上げたスライムたちはテケーテケーテケーテケーと声をあげながら海に飛び込み、波間に消えていった。
「大丈夫、かな」
「今のあやつらをどうこうできる生き物はそうそうおらぬはずじゃ、あやつら自身も叔父御殿の役に立ちたいと願ってるようじゃしな」
「わかった」
少し心配ではあるが、ここは信頼するべきなのだろう。
トロピカルブルー化をせず、探索組に加わらなかったテケテケ、ルルスファルドだけを連れ、グラード王国へと戻ることにした。
ルルスファルドはその気になれば肉体に入ったまま動き回ることもできるが、「あまり動くと疲れる」「老化する」「体力と運動神経がない」ということで、ピンク髪の童女の姿に戻っている。
島にある本来の肉体との乖離が激しいのは「変装」「アバターみたいなものじゃから」だそうである。
ルルスファルドに作って貰った『恩寵紋』の槍だが、僧形の子供が大きな槍を持ってあるいていては目立つので、『転生賢者紋』に収容しておくことにした。
『恩寵紋』の槍、というのも、名前としては呼びにくい。
ルルスファルドの知恵を借り、
とある国の神話で国作りに使われためでたい鉾の名前らしい。
白虎門を抜けてグラードに戻り、街道を歩き出す。
心配したような追っ手がかかることもなく、無事に一日の移動を終え、再び白虎門を抜ける。
おかしなものが、島の近くに浮かんでいるのが見えた。
亀のような胴体に、長い首と尻尾、太い四肢を備えた、ヘドロまみれの巨竜だった。
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