第24章:夏休みの残り、「川遊び」

その朝の空は淡い青で、まだ夜の名残の薄い霧に包まれていた。空気は暖かく湿り、濡れた木々の葉の香りを運んでくる。昨日と同じ小道で、四つの人影がゆっくりと集まった。彼ら自身が完全には覚えていないかもしれない約束に引かれるように。


イズミは、彼らの待ち合わせ場所である交差点に一番早く着いた。薄灰色のTシャツに半ズボン、手には籐のバスケット。彼は周囲を見渡し、目はゆっくりと動き、柔らかな朝の光に慣れようとしているかのようだった。ポケットのスマホには、さっき開いたばかりのルートが表示されている――彼を導く無言の道しるべだ。


間もなく、ナツメが反対方向から現れた。白銀の髪が光を反射し、歩みは落ち着いている。淡い青のシャツに薄い麦わら帽子をかぶり、お弁当の入った布のバッグを下げている。数メートルに距離が縮まると、ナツメは少しうつむき、唇に薄い微笑みを浮かべた。「 …おはよう。 」


「 …おはよう。 」イズミの声は、昨日の続きのように感じられる。彼の頭の中には完全な情景はないが。


続いてイシダとカナさんがやってきた。イシダは大きなリュックを背負い、腰には水筒がぶら下がっている。「よお!君たち二人、勤勉だな」彼は手を振りながら叫んだ。「俺が一番乗りかと思ったのに」彼は笑い、自分が背負ったリュックをポンと叩いた。「スイカ無事、飲み物も無事だ」


カナさんはイシダのリュックを指さした。「あのスイカ、きっと重いわね。案外力持ちなの?」


「ピクニックのためなら、俺はできるさ」イシダは誇らしげに微笑みながら返した。


彼らはまだ露に濡れたクスノキの木陰にしばらく立った。朝の風が鳥の声と、川の方からかすかに聞こえる水の流れを運んでくる。


「じゃあ、丘のルートを通って行くんだったな?」イシダはスマホの地図を確認しながら尋ねた。

「 …あっちを通る。 」ナツメは街外れの浅瀬の川へと続く小道を指さした。


イズミはナツメの視線を追い、それから手にしたバスケットを見つめた。「 …川。 」彼は目的地を確認するかのように静かに言った。

「 …うん。 」ナツメは優しい眼差しで彼を見つめて答えた。


カナさんが手を叩き、陽気な声を上げた。「よし、ピクニック隊、出発進行!水が澄んでいるといいわ」

イシダは笑った。「そして、誰もはまらないといいな…特にイズミ」


イズミはちらりと振り返り、冗談を完全には理解していないようだったが、口元にかすかな微笑みを浮かべた。


彼らは小道を下り始めた。軽やかな足音が木々の葉音や遠くのせせらぎと溶け合う。太陽がのぼり、四つの影が一緒に動き、まるでこの朝が彼らのためだけに創られ、下で待つ川辺への旅路のためにあるかのようだった。


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水の流れが、彼らが実際に見る前にはっきりと聞こえてきた。最後の木々が開けると、小さな運動場ほどの幅の浅い川が広がっていた。水は澄み、太陽の光をきらめかせている。薄灰色の大きな岩が岸辺に点在し、一部は柔らかな緑の苔に覆われている。


イシダは平らな岩の上にリュックを下ろし、背中を伸ばした。「わあ、場所が写真そのままだ!水がめちゃくちゃ冷たそう」彼はのんびりと流れる水を見つめながら叫んだ。

カナさんは感心したように息を吐いた。「すごくきれい。あの岩の上に座ってすぐにスイカを食べたくなっちゃう」


イズミは好奇心に満ちた空虚な眼差しで川を見つめた。彼はゆっくりと岸辺へ歩み寄り、スニーカーが小石の上で小さな音を立てた。水面で踊る光に、彼は冷たさを感じたいかのように首をかしげた。


すぐ後ろを歩いていたナツメが、素早く手を伸ばしてイズミの腕を止めた。「 …真ん中まで行かないで。 」彼女の声は静かだが、彼女からは滅多に聞かない毅然とした響きがあった。「 下の石、滑るから。水の感触を確かめたいなら、ここで十分だよ。 」


イズミは振り返り、一瞬ナツメの顔を見つめた。言葉は出ず、ただゆっくりとした小さなうなずきだけだった。指が一瞬触れ合い、イズミが一歩下がる前に。


イシダが横に歩み寄り、にっこり笑った。「へえ、専属ガイドかい、イズミ?ナツメが機転を利かせてくれてよかった。俺は前にここで滑りそうになったんだ」

カナさんはくすくす笑い、リュックからシートを取り出した。「じゃあ、ここにシートを敷こう。誰かが落ちる前に、まずスイカを確保しないと」


イシダはすぐに、十分に大きな平らな岩の上にシートを広げるのを手伝った。一方、ナツメは布のバッグを下ろし、イズミが安全な場所にいるかどうかを確かめるかのように彼を見つめた。イズミはそばに立ち、ゆっくりと流れる水を見つめ、太陽の光が彼の目に銀の欠片のように反射している。


「 …きれい。 」イズミは自分自身に言い聞かせるようにかすかに呟いた。

ナツメは彼を見つめ、薄い微笑みを浮かべ、それから静かに言った。「 …うん…とてもきれいだね。 」


水の音、イシダとカナさんの軽い笑い声、そして柔らかな夏の風が一つになって、温かい静寂となった――彼らが覚えていようが忘れていようが、時間を止めているかのような小さな瞬間だ。


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準備が整うと、イシダはいち早く川の方へ走り出し、他の者たちが続いた。イズミはゆっくり歩き、浅瀬の端に立った。スニーカーはもう脱いでいる。くるぶしほどの高さの水が、滑らかな丸石の間を流れる。彼はうつむき、青空が水面で砕けて映るのを見つめた。


「 …どんな感じ? 」ナツメの声がそばでかすかに聞こえた。風が湿った岩の香りを運んでくる。

イズミは足の指をゆっくり動かし、冷たい流れを感じた。「 …冷たい… 」彼の呟きは、まるでその言葉を学んだばかりのようだった。「 …川は初めて。 」

ナツメは彼を見つめ、小さな微笑みを浮かべた。「 …ちょっと待って、スマホを取ってくる。真ん中に行かないで、滑るから。 」声のトーンは優しいままだったが、少し強調されていた。


イズミはうなずき、まだきらめく水を見つめている。


ナツメは荷物を置いたシートの方へ歩いて戻る。彼女が背を向けたその時、さっきからいたずらっぽい目で水を見つめていたイシダが、小さな一掴みを拾い、イズミの方に投げつけた。澄んだしぶきが跳ね、驚いたイズミの腕にかかった。

「おい!」イシダは笑いながら叫び、続いてより大きなしぶきを飛ばす。「さわやかだろ?さあ、仕返ししてみろよ!」


イズミは瞬きし、驚きと面白さの間で混乱している。彼の手は半分上がったまま、どうすべきか確信が持てない。


遠くから、振り返ったばかりのナツメが跳ね上がる水しぶきを見て驚いた。「イシダ!」彼女の声は高くなる。彼女は急いで岸辺に駆け戻り、心配そうな眼差しで。「あまり近づかないで!イズミが滑っちゃう!」


イズミは振り返り、慌ただしく近づくナツメを見た。その心配そうな視線に一瞬固まったが、足にかかった冷たい水しぶきが奇妙な感覚を誘う――ただ冷たいだけでなく、かすかな喜びの一片のようだ。


イシダは両手を上げ、まだくすくす笑っている。「落ち着けよ、ナツメ。水は浅いんだから。俺が見てるから大丈夫だよ」

しかし、ナツメはもうイズミのそばに立ち、優しくしかし確かに彼の腕を掴んだ。「水で遊びたいなら、ここじゃだめ」彼女ははっきりと言い、目はまだイシダを見つめている。「下の石が滑るから」


ちょうどスイカの準備を終えたカナさんが、笑いをこらえながら振り返った。「イシダ、あなた本当にじっとしていられないのね」

イシダはまた笑い、無罪のように肩をすくめた。「ああもう、わかったよ。ごめん、ごめん。ちょっとの水くらい大丈夫だと思ったのに」


イズミはうつむき、水の冷たさとは対照的なナツメの温かい握りを感じた。短い沈黙の中で、彼はその気遣いに何か安心するものがあると気づいた――湧き上がる感情に名前をつけられなくても。


ナツメはしばらくイズミを見つめ、彼がよろめいていないことを確認する。「 …遊ぶのは後で…ゆっくりでいいよ。 」彼女はささやき、声は再び柔らかくなった。


風が再び吹き、川の香りを運び、水しぶきと気遣いに満ちた小さな瞬間を包み込む。まるで彼らの周りの世界が、ただ絶え間なく流れる水音だけで満たされているかのように。


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太陽がますます照りつける頃、彼らは平らな岩の上に広げられた大きなシートに戻った。昼下がりの温かい空気が川風と混ざり合い、濡れた草とわずかな水の香りを運んでくる。シートの上には、様々なお弁当がきちんと並んでいる:カナさんの手作りおにぎり、シンプルなサンドイッチ、冷たい飲み物の入った魔法瓶、そして――最も待ち望まれていた――きれいに割られたスイカだ。


カナさんはスイカの一切れを紙皿に載せた。「さあ、全部溶ける前に。スイカは太陽がまだ高い時に食べるのが一番よ」彼女は陽気に言った。

イシダはすぐに大きな一切れを取り、甘い汁があごに滴るまでかじった。「ああ、これだ…これが真夏だ」彼はくすくす笑いながら言った。「普段の休みは家でぶらぶらしてるだけなんだ。友達は実家に帰ったり塾に行ったり。まるで一人で休んでるみたいだ」

カナさんはにっこり笑いながら振り返った。「じゃあ、私たちに感謝しないとね?」

「もちろんさ」イシダはスイカの一切れを乾杯のように掲げて返した。「今年が一番楽しいよ。こんな風に川辺で座ってるだけで、一日中ゲームするよりずっと楽しいなんて思わなかった」

カナさんは小さく笑い、それから自分のスイカを見つめた。「私は普段、毎年夏に家族と旅行してる。でも…こういうのもいいね。遠くに行かなくても、にぎやかならそれでいい」


ナツメはイズミの隣に座り、いつものように静かだ。小さなスイカの一切れを握っているイズミを見て、「 …今年の夏はどんな感じ? 」彼女は静かに尋ねた。

イズミは紙皿の上のピンクがかった水を見つめ、少し考えてから肩をすくめた。「 …わからない… 」彼の声はかすかで、ありのままに正直だ。「 …去年の夏がどんなだったか知らない。でも…これは楽しい感じがする。 」

ナツメは小さく頷き、その答えで十分であるかのように薄い微笑みを浮かべる。


イシダが身を乗り出し、目を輝かせて二人を見つめた。「おい、これはまだ始まりだぜ。ピークはまだ来てないんだから」

カナさんが興味深そうに振り返った。「ピークって何?」

「夏祭りだよ」イシダは熱意を込めて答えた。「夏の終わり、夜空が光でいっぱいになる。それこそが本当の休みだ!」

カナさんは手を叩いた。「そうだわ!忘れるところだった。一緒に行かないと!」

ナツメはイズミを見つめ、銀灰色の瞳が夕暮れの光を反射している。「 …それ、いいね。 」彼女は短く言い、柔らかい口調だが計画をほのめかしている。

イズミはただ色を変え始めた空を見つめ、口元にかすかな微笑みが浮かぶ。心の中で、「花火」という言葉がかすかに響く、理解したことのない何かが突然重要に感じられるように。


涼しい風が再び吹く。彼らの笑い声が水の音と一つになり、記憶は完璧でなくとも、少なくとも今日は生き続ける彼らの夏を刻む――今この瞬間のために。


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紙皿とスイカの残りが片付けられると、イシダは立ち上がりながら腕を伸ばした。「よし、お腹いっぱいだ。軽い運動の時間だ」彼は小石を川に蹴りながら言った。「石投げ競争はどうだ?水面で一番多く跳ねる石を投げられた奴の勝ちだ!」


カナさんは手を叩き、目を輝かせた。「平らな石を水に投げるの?わあ、そんなの久しぶり」

イズミは目の前の静かな水を見つめ、それから説明を求めるかのようにナツメを見た。ナツメはほのかに微笑んだ。「 …やってみようよ。誰が一番上手か見てみる。 」


イシダはしゃがみ込み、川の小石の中から完璧な平らな石を探す。「コツは平らな石だ」彼は見本を見せながら言った。「こう持って、斜めに投げる。角度が鋭角じゃないと」

カナさんはその動きを真似し、それから投げた。その石は二回跳ねただけですぐに沈んだ。「ああ、二回だけ」彼女は笑った。

「まあまあだ」イシダは褒めた。「さあ、見て学べ」彼は腕を振り、石が飛んで――ピョン、ピョン、ピョン――沈む前に五回跳ねた。「ほら!五回!」

「すごい」ナツメは短く言い、それから自分もゆっくりとした動きで投げた。その石は三回跳ね、小さな波紋を広げた。「 …悪くないわ。 」彼女は呟いた。


イズミは一つ一つの動きを観察する。彼は小さな石を選び、ためらいながら握る。投げると、その石は大きなポチャンという音で一度も跳ねずに沈んだ。彼はすぐに静かになる水を見つめ、眉をわずかにひそめる。

イシダは笑いながらイズミの肩をポンと叩いた。「最初はみんなそうさ。もう一回、もっと斜めに」

カナさんも励ました。「さあ、イズミ。あなたならできるわ」

イズミは何度か試す。跳ねないか、一回だけの投げだった。それでも、試すたびに彼の微笑みが少しずつ浮かび、小さくても確かなものになる。

ナツメはそっと見守り、時折優しく指示を出す。「 …もうちょっと低く…うん、そんな感じ。 」


太陽が傾き始めると、木々の影が川の半分を覆う。空気は徐々に冷え、夕方の虫の音が聞こえ始める。何度投げたかわからない後、イズミはついに小さな石を二回跳ねさせた。彼は目を輝かせて水面を見つめ、口元に照れくさそうな微笑みを浮かべる。

「見て!」カナさんが喜んで叫んだ。

イシダは両手を上げる。「やった!イズミの自己新記録!」

ナツメは振り返り、一瞬、夕暮れのオレンジ色の光が彼女の銀の髪に反射する。「 …よかったね。 」彼女の静かな声の温かさは、イズミだけに聞こえるほどだった。


彼らは残りの時間を軽い会話で過ごし、イシダの投げが外れたり、カナさんが濡れた小石で滑りそうになりながらバランスを取ったりするたびに笑った。急ぐ者はいない。時間は川そのもののように静かに流れる。


空が黄色に変わる頃、彼らは荷物をまとめ始める。シートが畳まれ、残りのゴミが袋に入れられる。イズミはもう一度流れる水を見つめ、なぜか懐かしいせせらぎの音に耳を傾ける。

「明日…」イシダがリュックを背負いながら静寂を破る。「…また遊んで、花火大会の準備をしよう」

カナさんはうなずく。「ええ。花火の夜が最高の夏の締めくくりになるわ」

ナツメは帰り道、小道を歩きながらイズミの隣を歩く。「 …楽しい一日だった。 」彼女は短く言う。

イズミは夕焼け空を見つめ、その色を記憶に刻み込もうとするかのようだ。「 …うん…楽しかった。 」彼のかすかな声は、明日その言葉が残っているかどうかわからないにもかかわらず。


彼らは家路につき、川の音は後ろで次第に遠ざかる。終わることがないかのような、静かで笑いに満ちた夏の一日の跡を残して。


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