解放
天月虹花
第1話
僕は、どこまでも無能で役立たず。と、心の奥底から思った。
死にたいと、もがく君に何も出来なかった。君は死んでなどいないし、普通に生きていることだろう。
けれど、あの時の君を救えなかったのは、どこまでも事実でどこまでも無慈悲に僕を責め立てる。僕は僕のことを許せる時はこないだろう。許したくさえない。許されてはいけないんだ。例え、君が許してくれたとしても。
死にたいという気持ちは、僕には分からない。
僕に感情などないから、楽しいも、辛いも悲しいも僕には分からない。分かっていた時もあった…………気がする。思い出せないくらいには、昔のことなのだ。
だから、君の気持ちなど理解しようがない。共感など出来ないし、助けるにも助け方が分からない。感情が乏しい僕と感情に振り回される君。対極だね。
だけどそれを理由にしてはいけない。分かってる。分かってるんだ⋯⋯。
僕は、いざという時に何も出来ない、無能の役立たず。だから⋯⋯⋯⋯。
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