4-2 リリアナ
「トール。今までどこに行っていたの。私、ずっと待ってたんだよ」
リリアナは涙を流しながらトールを抱き締める。
すると同時に、今までの悲しい記憶がフラッシュバックされた。
平和なはずだった村に魔物が現れ、軽い剣術しかできなかったトールが襲われる。自分が倒すのだと立ち向かうものの、右目を負傷して動けなくなり、死を覚悟した――その時。
両親がトールを庇い、トールは救われた。
今こうしてトールが生きているのは、両親の死があってのことだ。
「…………」
リリアナを抱き締めたまま、トールは右目の眼帯に触れる。
そうだ。そうだった。
トールは家族を失い、生きる意味をなくした少年だった。
何もかもを諦めそうになった時、空から何かが降ってきてトールの頭に当たる。それは「月の欠片」と表現したら良いのだろうか。
幻想的で不思議な力を感じたトールは「月の欠片」に生きる意味を訊ね、記憶と引き換えに月の図書館へと
そして様々な世界を旅し、今こうして元いた世界に辿り着いたという訳だ。
『物語自体は終盤へと差しかかってきていますが、ある意味ここまでが盛大なプロローグっていう感じなんですよね。今までの旅は記憶を戻すため。そしてこれからの旅は生きる意味を探すため。トールくんの旅はまだまだ続いていくんです』
トールには帰る場所があった。幼馴染のリリアナがずっと待っていてくれたから。
だけど今までの事情をリリアナに話すと、彼女はトールの背中を押してくれた。トールが一番幸せだと感じる世界を選んで欲しい。トールの幸せが私の幸せだから、と。
『ほんっとうにもう、リリアナちゃん……良い子すぎませんか? 流石はメインヒロインというか、人気ナンバーワンというか。魅力的なキャラクターだらけの「リベルナ」ですけど、結局はリリアナちゃんだなぁって人も多いと思います』
ルナの言葉に望はうんうんと頷く。
というのも、望の推しキャラはリリアナなのだ。ありきたりと言えばありきたりなのだが、彼女の健気さに心が奪われない訳がない。何なら二次元の中で一番好きなキャラクターといっても過言ではないくらいだ。
『あ、「良い最終回だった」っていうコメントも多いですねぇ……。それ、案外間違ってないんですよ?』
意味深な笑みを浮かべながら、ルナはストーリーを進める。
心が揺れるトールの前に現れたのは図書館の司書、アマンダ婆だった。本の中の世界で姿を現すのは初めてのことで、トールは驚いてしまう。しかしリリアナにはアマンダ婆の姿が見えていないようだった。
トールはアマンダ婆に問われる。
大丈夫だ。何も怖いことなどない。彼女と再会できたことでお前も彼女もすでに大きな一歩を踏み出している。彼女に寄り添うことも一つの道だし、そうではない新しい世界で生きるも確かな道だ。ただ一つ、お前が何より笑顔になれる道を選べ。
そんなアマンダ婆の言葉とともに――選択肢が現れた。
一つは元いた世界で再び暮らし、リリアナとともに生きていくこと。
もう一つはまた別の世界へと旅立って、生きる意味を見つけに行くこと。
『これ、もしかしたら初見の方は勘違いするんじゃないですか? 一つ目の選択肢が正規ルートで、二つ目がバッドエンドに行くんじゃないかって。……ですよね? いや、気持ちはわかりますよ。私も最初はそれ以外ありえないって思いましたもん』
一つ目の選択肢にして、そのままエンディングへ。望も同じようなことを思ったものだ。
でも違う。
リリアナルートを選んだらエンディングになるのは確かなことなのだが、二つ目の選択肢=バッドエンドという訳ではないのだ。
『つまりはマルチエンディングっていうことなんですよ! しかも結構な数の分岐があるんです。凄くないですか?』
言って、ルナはドヤ顔を浮かべる。
『あ、そうですそうです。これまで行った異世界で暮らすルートもいくつかありますし、まだ行けていない異世界での出会いがトールくんを変える可能性もありますから。でも初っ端から酷な選択を迫られますよねぇ……。問いかけるアマンダ婆の声が優しいのも相まって、本当に悩むんですよ』
こんなのリリアナ一択だろう、と望も初めは思ったものだ。
というか実際にリリアナを選んだし、
『まぁ、それでも私は最初、リリアナちゃんルートにしたんですけどね。これはもう、仕方のないことなんですよ』
どうやらルナ――もとい美以子も同じだったらしい。
こればっかりは『リベルナ』プレイヤーの宿命のようなものなのだろう。
『さてっ、ここで先輩方にお伝えしておきたいことがあります。それは「リベルナ」というゲームをどこまで配信するかということです』
選択肢の画面で止まったまま、ルナは語り始める。
確かにそこは重要なポイントだ。『リベルナ』はエンディングを見る数によってプレイ時間が大幅に変わる。
すべてのエンディングを見ようと思ったら、プロジェクトの期間内に完結するのは難しいだろう。
一つだけエンディングを見るとしたら、やはりリリアナルートが相応しいのかも知れない。でも、『隠れた名作再生プロジェクト』はまだ一ヶ月ほどの
ここでエンディングを見て配信が完結してしまったら、少しずつ『リベルナ』配信の注目度が下がってしまうかも知れない。
ゲーム配信が完結するタイミングというのも、プロジェクトにおいて大事なポイントだろうと望は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます