異世界SSSエロ・チートおじさん &『頭ゆるゆる美少女JK』『しっかりもの美少女JK』

眞田幸有

第1話

 オフィス街の表通り。

 午後5時近く



 とぼとぼと歩みをすすめる。


「はァ……、つまらん世界だな」

 暗い雲がたれこめている。町の空気は、どこか埃っぽかった。


 俺の名は、若菜拓也わかな たくや。35歳。

 くたびれた中年リーマンだ。営業職。


 得意先の担当に酷く性格の曲がってるババアがいる。

 ようやく、そいつの、対応が終わった。

 会社に戻るところ。


 ババアはひどく意地悪な性格だ。俺の顔をみるたびに、ぐちぐちと何十分も小言と嫌味をいいつづける。

 そんな奴らに、ずっとペコペコ頭をさげて、一方的にあやまり続ける。そんなクレーム対応が、今の俺のメインの仕事だ。


 客の言葉は確実に俺の心を抉る。

 あー、ストレスたまる……。


 胃が重い。

 いつまでこんな仕事ができるかもわからない。マジで、精神を病みそうだ。




 かつて、俺は無敵の勇者だった。

 剣を振れば敵の大軍がなぎ倒れた。名を告げれば貴族も民も跪いた。

 富も名誉も、そして世界でもっとも美しい女までも、すべてが俺の手の中にあった。


 だが、こっちの世界では――


 現代日本に戻ってくると、俺は気付いた。スキルもアイテムボックスも使えなくなっていることに。超人のような身体能力も消え失せていた。

 

 今の俺は、特に秀でた能力などなにもない。うだつの上がらない、ただの営業マンにすぎなかった。


 残業続きの安月給。


 こっちの世界では、ぜんぜんもてない。

 彼女なんてものは、もう何年もいなかった。



 いやらしいことがしたいなら、安月給をはたいて風俗にでも行くしかない。


 でも、おれは処女厨。

 風俗じゃ、なかなか満足できないんだよなあー。



「はあ……」

 今日、何度目かのため息がもれた。

 身も心も、すりつぶされていく毎日。


 無味乾燥、なんの楽しみもない生活。


 こんな毎日がいつまでもつづくというのだろう……。




 ちょうど、下校時刻の時間だった。


 通りの向こうから、セーラー服を着た女子高生の2人組。

 このあたりで有名なお嬢様学校の制服だ。

 アイドル顔負けの美少女が多いことで有名な女子校だった。



 セーラー服の2人組は、こっちの方向に歩いてくる。

 お下げ髪の少女と、金髪ポニーテールの少女。



 お嬢様学校で金髪?


 とおもったが、よく見ると、ハーフのような顔だち。

 おそらく金髪は地毛なのだろう。

 非常に整った顔をした少女だった。すごい美少女だ。

 すらりとした小柄な体つき。

 明るそうな性格。ニコニコ笑ってる。



 お下げ髪の方の少女は、つややかな黒髪。

 真面目そうな委員長タイプ。

 こちらも、はっと目の覚めるような美少女だった。

 特に俺の好みのタイプだ。


 ガン見してると、俺の視線に気づいたのか、キッとにらみかえされた。

 顔に似合わす、気が強そうだ。

 思わず、俺は目線をそらした。



 ちぇっ。

 くたびれたオッサンは、道行く美少女女子高生を見ることさえゆるされないのかよ。

 ああ……、嫌な世界だな。



 視線を移す。別の女子高生が目に入った。


 ギャルだ。スカートが異様に短い。

 ともすれば下着が見えそうな長さ。

 さきほどの二人組に比べれば5ランクくらいはおちる顔だが、けっこうオッパイが大きい。


「なによ、オッサン。こっち見んな! 超キモいんだけど」

「エロおやじ、俺の女をいやらしい目で見たらゆるさねーぞ」

 ギャルJKの隣にいたヤンキー風の男子高校生が、俺をにらみつける。


 俺はうつむいた。反射的な動作だった。



「あははは、なによ、あれ。ヨウタがにらむと、ビビって、うつむいてやがんの! いい歳してるくせに、オッサンなさけねえ」

「うははは、まあ、俺がひとにらみすれば、オッサンなんかこんなもんよ!」


 意図せずに、歩く俺の足が速まった。こっちの世界では負け犬根性が身にしみてしまっている。

 逃げるように、その場を立ちさろうとした。



 顔をあげた、その瞬間――


 ドンッ。


 前方に目つきの悪い男だった。俺が、避けようとすると、すれ違いざまに、向こうのほうからぶつかってきた。

 明らかに故意だった。


「こらっ。ボケっとしてるんじゃねーよ、オッサン!」


 20代半ばくらいだろうか。体格のいい男だった。


 男は、ハーフパンツにサンダル履き。袖から伸びる腕には入れ墨が入っている。

 といっても、本職のヤクザには見えない。半グレってところか。


「気をつけろや、クソ野郎がっ!」


 ドンッ!


 半グレのパンチが、俺の腹にめり込んだ。


「ぐっ」

 息がつまる。


 異世界では、俺は、ドラゴンの攻撃にもびくともしない無敵の身体だった。

 こっちの世界では、運動不足のただの中年オヤジにすぎない。


 腹へのパンチの痛みが、ジンジンと体を響かせる。


「そっちからぶつかって来たんだろうが。はやく、あやまらんかい。ゴラァッ! アアッ!」

 半グレがすごんでくる。

「す、すいません……」

 男の迫力に威圧されて、俺は思わずあやまってしまう。



「きゃははは、オッサン、だっさー」

「オヤジみじめすぎんだろ。笑っちまうよ。あんな中年にだけはなりたくないね」

 数メートル離れたところに、さきほどのギャル女子高生とヤンキーが立っていた。

 殴られた俺をみて、腹を抱えて笑っている。


 俺は重い足を引きずるようにして、その場を離れようとした。




 早く帰ろう。


 そう思ったときだった――


 突然、 地面が青白く光った。


 俺の記憶にある現象だった。俺はこの光を知っている。


 次の瞬間、アスファルトに巨大な魔法陣が浮かび上がった。直径10メートルはあるだろうか。

 複雑な紋様が、蒼い燐光を放ちながら回転している。


 俺がこれを体験するのは二度目だ。


 一度目は、高校生のときに異世界に転移させられたあの日に見た。


「なんだ、これは?」

 と、半グレ。


「なに? いったいどうしたの?」

「わかんねーよ。なにがおこってんだよ!」

 ギャルとヤンキーも、目を丸くして立ち尽くしている



  ☆☆☆



 気づくと、鬱蒼と茂った森の中だった。


 覚えのあるような空気、木々の匂い。肌を撫でる風の感触さえ、かつての記憶にあったような、なつかしい感覚。


 周囲を見回す。一緒に魔法陣によって飛ばされた人間が目にはいった。


 どうやら、ここに飛ばされたのは全部で6人のようだ。


・俺

・半グレ

・ヤンキー高校生

・ギャル女子高生

・例のお下げ髪のセーラー服美少女

・そのツレの、金髪ポニーテール美少女




 俺の直感が告げていた。

(ここは、俺が勇者だった異世界だ!)




 俺は、みんなから隠れるように物陰に入った。大木に身を隠すように、見えないところまで移動する。


 地面に、野球のボールほどの岩がころがっていた。

 手にとって、かるく握ってみる。


 グシャッ!


 岩が、まるで砂の塊であるかのように、砕け散った。



 人差し指を、親指の先にひっかけて、ピンッ、と弾いてみる。


 パアーンッ!


 大きな爆発音。


 俺の指が音速を超えて、ソニックブームを起こしたのだ。


 まさにそれは、魔王を倒した勇者の力だ。


 ついに戻ってきた……。


 25歳のときに現代日本に戻されて以来だ。10年ぶりに戻ってきたんだ。


 俺の胸が、感動でうちふるえる。


 本当に戻ってきたんだ。


 ちょっと涙がでてきた。



「なに? 今の、何の爆発音?」

 少し離れたところで、驚きとおびえが混じったギャルの声がした。



 かまわず、アイテムボックスを開くよう意識する。

 現代日本に戻ったときには、決して開かなかったアイテムボックス。

 それが、まるで空中に浮かぶPCモニターのように、俺の目の前に浮かびあがった。


(……開いた!)


 現代日本に戻ったときには、決して開かなかった無限収納ボックスだ。



 いいぞ。アイテムボックスのなかを確認する。


 持ち金を確認する。

《180,114,254,700,000》

 ざっと180兆ゴルデ。


 ちなみに、貨幣の価値は大雑把に、

『1ゴルデ=1円』

 である。


 今の俺は、現金だけでさえ、180兆に相当する金を持っていた。いつでも使える現金だけでだ。


 さらに、現代日本に強制送還される前に入っていた、とんでもなく価値のある物品。アイテムボックスの中には、それらが、そのままはいっていた。



 大量の値のつけようのない財宝の数々。それが溢れんばかりに入っている。


 世界に一つしかない名器。

 伝説級/神話級の名剣や防具、魔道具。

 世界に2つとない超絶級のレアアイテム。

 名品、宝石、魔法書、スクロール。


 こんなものは、王国の宝物庫にもない。値段がつけられないほどの貴重な財宝たちが俺のアイテムボックスの中には大量に詰まっている。


 その数は、簡単には数えきれない。

 下手すれば、一つに数千億ゴルデから数兆ゴルデの値がつくものさえ何百とある。さらに価値のあるものさえ何十とあった。

 驚くほどの物品が、これでもかというほどに、あふれんばかりに入っている。


 全部、俺が冒険やレベリングなどで集めたアイテムだ。




 現代日本では、安月給でくたくたになるまでこきつかわれる、しがないサラリーマンだった俺。

 取引先では、ガミガミと苦情をいわれ、会社に戻れば上司には怒鳴られて、毎日頭をさげてばかりだった。


 しかし、今は違う。


 俺は、イーロン・マスクやビル・ゲイツでさえ舌をまくような、大金持ちなのだ。もはや、誰にも頭を下げる必要もない、最強の男なのだ。




 あらためて自分の能力を確認するため、俺は全身の魔力をたかめた。


 ゴゴゴゴゴッ!


 地鳴りがして、大地が揺れた。


 俺のとてつもない、魔力のせいだ。

 あまりもの魔力の高まりに、周囲の空気が強大な魔物の雄叫びのように震えた。


 帰還前、魔王さえ簡単にほうむった、俺の元勇者としての能力が蘇ったのだ。


 かつての俺は、ラスボス・魔王の強さをはかりかねてレベルを上げすぎた。結果、いざ実戦で、魔王をワンパンで倒してしまったのだ。


 今の俺は、桁外れの無敵超人だった。

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