第12話「お受けできません」
エルが当ギルド海猫亭にやってきた初日の今日。
その本日の業務が終わろうとしています。
壁に架けられた時計の針が二十時を指し示すと共に、受付け業務が終了です。
と言ってもその場で即「お疲れ様!」とはなりません。
エルのDカンにはハンターはもう並んでいませんが、Aカンのベス、Bカンのユニのところはちょうどハンターとのやり取りが始まったところの様ですし。
「ベスさん、わたくしが代わりますので上がって下さい」
「なんでよ! オバさん今日が初日のペーペーでしょ!? ぺーぺーが先に上がるのが筋ってもんでしょ!」
先輩風とか吹かしたいのも知れませんけど、仰る通りですねぇ。
「ベスさんの仰る通りかもなんですが、ゲトゥさまもランさんもお待ちだろうと思いまして……」
「う、うぐぐ──」
「無理しねぇで上がれベス、誕生日なんだろ? あとやっとくからユニさんも上がってくれっす」
おや。どうやらルイの所も済んだらしいです。
確かにベスの誕生日会をするならユニも参加するでしょうしね。
「ありがとう二人とも。けどね、それは二人が決める事じゃないでしょう? ねぇダグアさま?」
今度はユニが仰る通り、その通りなんですよねぇ。
「そうですね。では上役として判断しますよ。はい、ベスとユニは上がって下さい。良いですよねロジン?」
あっさりダグアがそう言って、実は降りて来ていたロジンもあっさり言いました。
「もちろん、二人はキリも良さそうですし上がって下さい。ルイとエルさんはもう少しお願いしますね」
「おぃーす!」「畏まりました」
ベス、ユニと入れ替わりでAカンにエル、Bカンにルイが陣取り「大変お待たせしまして申し訳ございません」とキチンと謝ってから今夜最後の業務に取り掛かります。
「じゃ、お先」
「悪いけどよろしくね、ルイにエルさん」
二人はそう残してバックヤードに引き下がり、それぞれ日誌を書いて帰り支度を済ませ、従業員用の裏口から出て行きました。
そしてしばらくしてエルもルイも本日の業務完了、さて帰り支度という段でエルを呼び止める声。ロジンですね。
「エルさんも今日、誕生日ですよね?」
「はい。めでたく三十五になってしまいました」
初耳だぞ! と言わんばかりにルイが騒ぎ出そうとしてますが、ソレを無視してロジンが続けます。
「これから食事に行きませんか?」
良いっすね! ならルイも一緒に! と口にしそうなルイを遮りさらにロジン。
「僕とエルさん、二人っきりでどうですか?」
なぬーっ! と目をかっ
「
丁寧に体を折って頭を下げるエル。
きちんと理由を述べて丁寧に断られるとどうしようもありませんね。諦めなさいロジン。
「そ、そうですか。では、また改めてお誘い致します」
「いえ。上司であられるロジン様からのお誘いはお断りするのが
このやり取り、ダグアが残念そうに見守っているのと、ルイがニヤニヤ見てるのは別に良いんです。
けれど少しマズそうなのが、忘れ物でもしたのか裏口から再び戻って来ていたベスが聞いてるっぽい事なんですよねぇ。
「ではわたくしも上がりますね。明日からもまたよろしくお願い致します」
ロジンやルイ、さらにはダグアやギルド職員たちに向かって深々とおじぎのエル。
綺麗なおじぎです。きちんと育てられたのがよく判りますね。
でも──
「あらベスさん、まだいらっしゃったんですか?」
バックヤードに向かうエルがベスと鉢合わせ。
それに気付いたルイが楽しそうにはしゃぎます。
「よぉベス聞いてくれよ! ギルマスってばエルさん誘ってフラれてやんの! 超ウケるだろ──」
「ちっとも面白くない! ルイのアホ!」
ベスは吐き捨てる様にそう言って、裏口から飛び出────すかと思ったら振り返ってキッとエルを睨みつけました。
なぜ睨まれているのか皆目見当もつかないだろうエルですが、ザマスメガネに阻まれその思いは私にも掴めません。
「ベスはよろしくしないんだから!」
バンっと裏口ドアを叩きつけ出て行きました。どうやら今度こそ帰った様ですね。
「……どうして怒ってらっしゃったんでしょう?
ルイさん判ります?」
「判んなくもないすけど、まぁルイたち悪くないし気にしなくて良いっすよ」
「そうですか……。それなら良いんですけど……」
エルはちっとも悪くないですからね、それで良いと思います。
でもルイはちょっと悪かった様な気もしますけどね。
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