ウォーズカード 応募受付期間終了時点までに本文が10万文字(文庫本1冊分の目安文字数)以上であること。なお、長編、連作短編等小説の形式は不問といたします。2月2日
第7話 🏭 慟哭の名古屋:剣士と「ウォーズカード」
第7話 🏭 慟哭の名古屋:剣士と「ウォーズカード」
⚡ 派遣切りの業火(令和七年・名古屋)
愛知県名古屋市、巨大な自動車工場が立ち並ぶ臨海部の工業地帯。
**黄島
しかし、景気後退の波は容赦なく彼を襲った。彼は、一方的な派遣切りに遭い、住居も失いかけていた。
派遣会社の事務所が入る、無機質なビルの前。黄島は、そのガラス張りの壁を見上げながら、煮えたぎるような怒りを胸に抱いていた。
「俺の人生をこんな風にしたのは、あいつらだ。まるで使い捨ての駒だと思い上がって……。あの連中には、一度、真剣の恐ろしさを教えてやるべきなんじゃないか」
黄島の心の中には、かつて竹刀を握っていた時のような鋭い殺意が、黒く渦巻いていた。彼の強靭な肉体と、剣道で培った研ぎ澄まされた集中力は、今は全て、この社会への憎悪へと向けられていた。
🤺 ハローワークの噂
職を求めて、黄島が訪れたのは、名古屋市内のハローワークだった。失業者でごった返すフロアは、彼の閉塞感をさらに増幅させる。
職員との形式的な面談を終え、黄島がコーヒーを飲んでいると、隣のベンチで、同じく職探しに来たらしい中年男性二人が、小さな声で話し込んでいるのが聞こえてきた。
「おい、知ってるか?最近、裏のルートで**『ウォーズカード』**ってのが出回ってるらしいぞ」
「ウォーズカード?ゲームか?」
「いや、それがただのゲームじゃねぇらしい。なんでも、そのカードを手に入れた人間は、自分の恨んでる相手を、歴史上の戦場に引きずり込めるんだと」
黄島の耳が、その言葉に鋭く反応した。
「恨んでる相手を、戦場に……」。
「嘘だろ。まさか、派遣会社の社長を戦国時代に放り込むとか、そんなSFみたいな話か?」
「それがな。カードには**『勝敗条件』があって、勝つと莫大な金と、過去の自分の望みが叶うらしい。だが、失敗すると、自分の存在そのものが歴史から消えるんだとよ。いわば、人生を賭けた、『現代の戦い』**だ」
黄島は、コーヒーを持つ手が震えるのを感じた。 彼の脳裏には、派遣会社の社長の顔が浮かんだ。
「あの憎い連中を、戦場に……。俺は剣士だ。剣士の意地を見せて、この人生を、この社会を、やり直すチャンスが、そこにあるのか?」
黄島は、その中年男性たちに近づこうと立ち上がった。彼の目の焦点は、もはや就職先のリストではなく、その**『ウォーズカード』**の行方へと定められていた。
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