底辺Vtuber同士がコラボ相手をAIマッチングで決めてみたらラブコメが始まった模様です

にぃ

第1話 灼熱の炎と氷の雨

「マッチング……配信コラボ?」


 動画配信飽和時代。

 星の数ほど居る動画配信者の中で『成功』を勝ち取れる者は1割も居ない。

 初動で壁にぶつかり、その高さに絶望して消えてしまう配信者も多い。

 俺も正に今、壁にぶち当たっている底辺配信者の一人だった。

 そこで見つけたのが一つのアプリ。



『VTuber限定

 貴方のコラボ相手をマッチング

 AI診断のもと、最高のコラボ相手を探します』



「う、胡散臭ぇ……」


 どこの誰ともわからない相手と配信活動するってさすがに難易度高すぎるよな。

 出会い目的の輩も居るだろうし。

 ……あ、だから匿名性の高いVTuber限定なのか。

 個人を特定されることはないだろうし、合わなかったら『じゃあバイバイ』ってやりやすい。


「いやいや。でもさすがにこんなのを使うのは……ないわな」


 配信とは孤独の戦い。

 誰かと一緒にコラボするだなんて俺の柄じゃない。

 俺はこれからもソロで配信をやっていくんだ。




  ◆




『プロフィール入力を確認致しました

 AI診断のもと最適なコラボ相手を選出中……』



 いや、まぁ、これからの現代社会を生きる上でAIとの共存は必要不可欠だと思うんだ。

 だからAIに触れられる機会があるのならそれを試してみるというのは有りだと思うんだ。全然あり。


「……頼むぅ……人気配信者とマッチングしてくれぇぇ!」


 つい本音が零れ出る。

 そうだよ! 人気を肖ろうとしているよ! だって仕方ないじゃないか! ソロだと登録者数増えないんだよ!

 俺みたいな底辺は人気者におんぶしてもらわないと戦いの舞台にすら上がれないのだ。



『マッチング候補が見つかりました』



「キタっ!」


 相手の情報がスマホに表示される。

 少し緊張しながら詳細を追った。



『日常雑談系VTuber『氷雨』

 主な配信内容:雑談

 活動歴:9ヶ月

 チャンネル登録者数:19人』



『マッチング承諾しますか? はい/いいえ』



「雑談系VTuberか……」


 雑談をメインにおくVTuberはかなり多い。

 それってVでいる意味ある? と最初は思ったものが、愛嬌あるキャラクターに喋らせるというのはそれだけで非常に効果的なのだ。

 しかし——


「9ヶ月配信して登録者数が19人……だと……!?」


 配信歴は俺と同じくらい。

 でもこの配信者数は——


「すげぇぇぇぇぇぇっ!! 俺より10人も多いだなんて!」


 望んでいた大人気VTuberではないが、その人気の秘訣は知りたいと思った。


「よ、よし……!」


 震える手でスマホを操作し、マッチング希望ボタンにタップする。

 これで相手も承認してくれれば俺も初コラボか。



『双方のマッチング受諾を確認致しました

 チャットスペースにてコラボ日時の取り決めをお願いします』



 こうして

 俺こと——VTuber『穂村火焔ほむらかえん』とVTuber『氷雨ひさめ』とのコラボ配信が決定したのであった。




 ◆  ◇




 残念ながら俺はリアルで友達がいない。

 大学生活に馴染めず、サークルも宴会も合コンも経験したことがなかった。

 『経験』することを必要以上に恐れてしまった末の何もない自分。

 だからこそ一歩踏み出してみようと思った。

 その手段として選んだのがずっと興味のあった『配信』の世界。

 中でもVTuberとしての活躍を選んだのは理想の自分を演じてみたかったから。


「燃える心! 震える魂! 灼熱の熱さはここにある! 冬でも短パン! 今日も火焔の熱い配信が始まるぜ!」


 これが俺の理想の姿。

 そう——とにかく熱く、主人公っぽい『熱血漢』な姿こそがVTuberとしての俺なのだ。



 『うぉぉぉ! 燃える男の登場やー!』

 『今日も癖になる暑苦しさ』

 『っ熱々のお茶』



 お決まりの登場文句と共に配信を待ってくれていたリスナー達がコメントで盛り上げてくれる。

 俺の配信は登録者数が少ないがROM勢も少ない。

 リスナーには本当に恵まれていると思う。



「——って、何なのよ!? そのヘンテコな登場文句は!?」



  『ファッ!?』

  『女や……』

  『嘘やろ……わいの火焔に……女の影が!?』



「すまん! 皆、紹介しよう! 本日はスペシャルな日! 穂村火焔が初コラボするぞ! コラボ相手の氷雨さんと一緒に配信を盛り上げていくんでよろしくな!」



  『先にww言えwww』

  『火焔にコラボする女友達が居るとは……』

  『氷雨たん大丈夫? 暑苦しくて熱中症になってない?』



「早くも後悔しまくっているわ。マッチング受諾なんてするんじゃなかった。もう帰ってもいいかしら?」


「待って待って!? 始まったばかりだから! 少し熱量落とすから! お願いだから通話切らないで!!」


 穂村火焔。

 燃えるようなオレンジの髪を思いっきり逆立てた熱血系VTuber。

 とにかく配信中はテンションを高く、リスナーを置いてけぼりにさせるくらい突っ走るのが俺の配信スタイルだ。


「はぁ……今日のコラボ相手の氷雨よ。今日が最初で最後のコラボになるでしょうけど、とりあえずよろしく」


「今日が最後なんてわからないだろ! 可能性を自分で潰すな! 1年後も10年後も俺と熱い雑談コラボしようぜ!」


「お断りよ! 今時熱血系なんて流行らないでしょう。私は落ち着いていて大人な人が好きなの」


「うぉぉぉ! 俺は落ち着いていないが大人だ! キミの好みの半分を満たしているぞ! 俺達相性ピッタリだな!」


「聞いて!? 熱血系は嫌だって言っているのよ! 貴方とは今日限りのコラボだから!」



  『漫才かな?』

  『氷雨ちゃんウチの主が暑苦しくてすまぬ』

  『クール系美少女でも火焔の熱を冷ますことはできなかったか……』



「さっそくだけど氷雨さんの好きな炎の色を教えてくれ! 赤か!? オレンジか!? それとも黄色い炎か!?」


「その質問に答える意味あるのかしら? 今日限りでさよならする人に」


「そう言わず教えてくれぇぇぇ! 好きな炎の色! 炎の色さえ教えてくれれば今日はコラボ終了でいいからぁぁぁ!!」


「どうしてそこまで必死なのよ貴方は!?」


 こうして、穂村火焔と氷雨との初コラボは終始変なテンションのまま進んでいくこととなった。

 ちなみに氷雨さんの好きな炎の色は青らしい。

 律儀に質問に答えてくれる辺り、根はとても良い人なんだろうなと思った。




 ◇  ◆




『VTuber氷雨さんへ次回コラボのマッチング依頼申請を確認しました』


『相手の受諾状況を確認中……』


『…………』


『相手の了承を確認しました

 チャットスペースにて次回コラボの日程の相談をしてください』

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