【カクヨムコン11参加作品】俺だけレトロ(エロ)ゲームな件! 懐かしい凄くおかしな世界感をキミに!
石のやっさん
第1話 スラムにて
ああっ、もう駄目だ……スラムの入り口噴水広場で俺こと小田雅也は真面に食事もとれず蹲っていた。
誰がどう見ても今の俺は浮浪者にしか見えないな。
もうすぐ死ぬのか……
何故、俺がこんな事になったかと言うと……1か月前の事だ。
俺は、この世界にクラスの異世界人召喚で呼ばれた。
尤も俺は生徒じゃない。
偶々クラスの前の廊下を清掃していたただの用務員だ。
俺は格闘技、特に柔道が得意だったから上手くやれる。
そう思っていたが違った。
俺には、魔物とはいえ生き物を殺す事が出来なかった。
平和な世の中で喧嘩が強い。
格闘技が強い。
そんなの何の意味も無かった。
俺は生き物を殺す事が出来なかった。
悲しそうな目。
断末魔の声。
それを見ると可哀そうで止めが刺せなくなる。
そのせいで……俺は、1人だけ城から追い出される事になったんだ。
◆◆◆
「無能は追い出せと王女の命令だ! 出て行って貰う」
「勝手に呼びだして、それで俺を追い出すのか……」
こんな世界に来たくは無かった。
平和な世界で雑用をこなし、レトロPCに囲まれた生活を送る。
それだけで幸せだった。
「すまない、これは王の決定だ! 俺にはどうする事も出来ない! 」
「もう、いい分かりました……こんな国滅んじまえ」
此処を出されたら俺は真面に生きてはいけない。
実質、詰みだ。
「なっ! 気持ちは解るから、この事は誰にも言わない。本来なら今ので牢獄行きだ......悪い、聞かなかった事にする。それしか俺には出来ない」
ただの衛兵に八つ当たりしたって仕方ない。
だが、駄目だ.....
「もういいです! 女神もこの国もろくでなしだ……一生恨むからな」
「俺にはどうする事も出来ない……悪いな」
「貴方に言っても仕方ない、それは分かる。 だけど、俺みたいな人間はこの世界で、こんな追い出され方して生きていけないだろう? せめて、仕事の紹介や斡旋位してくれてもいいと思わないか? どう思う? 俺が、このまま追い出されて真面に生活できると思うか?」
「思わない......」
「なら、俺は嘘を言ってないよな!」
「俺個人は正しいと思う。だがそれを口にしたら沢山の敵が出来る。此処だけにしろ......悪いことは言わない」
「そうだな……悪かった!」
話を聞いてくれるだけ、この人は善人だ。
だが、やるせない気持ちは止まらない。
「悪いがすぐに立ち去ってくれ! 俺には何も出来ないから、せめてこれだけやるからな。こんな事しかしてやれない……悪いな」
そう言ってナイフと小銭を渡してきた。
「お金とナイフか……」
「俺はただの衛兵だ。俺なりの善意だ。ほら行け」
「礼は言わないぞ……」
「解っている……俺が頭下げても仕方が無いが悪かったな」
「いや、あんたは関係ない、言い過ぎた…だが僕はこの国も女神も呪いながら生きていく……じゃぁな」
「すまないな…」
衛兵に文句を言っても仕方ない。
話を聞いてくれて小銭とはいえ、自腹で金とナイフをくれただけ良い人だ。
此処は……過去も未来も、俺にとっては、きっと地獄だ。
◆◆◆
もうすっかり、俺もスラムの住人だな。
金が殆ど稼げない
冒険者ギルドに行ってみたが……
「冒険者になるのに、討伐をしたくないんですよね。採取とかなら可能かも知れませんが、それだって魔物や獣に襲われる可能性はありますよ!」
「街で出来る様な仕事をしたいんです。」
「良いですか? そういう安全な仕事は子供の冒険者優先ですよ! それにお小遣い位の金額にしかなりませんよ」
「そうですか」
「冒険が出来ないなら、冒険者じゃなく他の仕事を探した方が良いと思いますよ」
「確かにそうですね」
他になにか探そうにも、知り合いも居なくて保証人も用意できない俺に真面な仕事は出来無かった。
お金も仕事も無い俺はスラムに流れていくしかなかった。
◆◆◆
そして今の俺は、行き倒れ状態だ。
もう、何日食べて無いんだろう……
『若いんだから働けよ』
うずくまって寝ているに俺に、そんな罵倒が聞こえてきた。
こっちの事情もしらないで……何処も雇ってくれないんだよ。
『子供だって狩りができるのに生き物を殺すのが出来ないんだって』
『馬鹿じゃないの?』
俺は令和の日本から来た……血を見るのが嫌なんだよ。
あとどの位生きられるのか、お腹が空いたし力が入らない……もう動けない。
もうすぐ、死ぬのかもな……日本に帰りたい。
前みたいに昔のレトロゲームをしながら部屋で過ごしたい。
PC-980001 FM777達に囲まれた。
あの部屋に帰りたい……
そう思い目を瞑った。
やがて、体に力が入らなくなり、俺は眠るように意識を失った。
◆◆◆
チャンチャラララーー
懐かしい、これは俺がジャンクオフで昔、手に入れた、MECのPC980001の3.5インチのフロッピーの懐かしいゲームの起動の時の音だ。
あのメーカーのゲームは必ずこの音が流れるんだよな。
一瞬世界が暗転し……目の前に急に月に乗ったギリシャ神話の様な服を着た桃色の髪の5等身の可愛らしい女神が現れた。
この姿……俺は知っている。
いや、絶対に忘れることは無い……ああっ、凄く懐かしい。
いつもゲームをする時に見た姿。
美少女ゲームのメーカー、ディスカバリーミントソフトのゲームを起動すると一番最初に映し出され消えるロゴの女神。
ミルキーホットだ。
「貴方は、ミルキーホット……」
「はい、貴方の女神ミルキーホットです」
これはきっと死に掛けた俺が見た幻覚……だ。
そうに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます