Chromatin Code 〜特異感情能力の世界〜

爆撃機

法令

特異能力対策法

第一章 総則

(目的)

第1条

この法律は、特異感情能力の発現に伴う危険の防止、特異能力者の管理および支援を行い、もって国民の生命、身体および財産の保護、ならびに公共の安全と秩序の維持に資することを目的とする。


(特異能力)

第2条

この法律において「特異感情能力」とは、人の感情の昂揚により遺伝的発現領域(以下「SIG領域」という。)が活性化し、通常の物理・生理・心理法則を超える作用を発現する能力をいう。

2 前項の能力を発現した者を「特異能力者」という。

3 特異能力者は、その発現の安定性・制御性・危険性等に基づき、次の階梯に分類する。

 一 階梯一(初期階梯):断続的な軽度発現にとどまり、自己制御が困難であるもの

 二 階梯二(基礎階梯):発現が安定し、限定的制御が可能であるもの

 三 階梯三(制御階梯):自己の意思により反復・応用的発現が可能なもの

 四 階梯四(上位階梯):大規模・広範囲な発現が可能で、危険性が高いもの

 五 階梯五(特異階梯):社会秩序に対し深刻な危害を及ぼすおそれのあるもの

 六 階梯X(未分類特異階梯):従来の階梯に分類困難な能力または急速進化型能力

4 「感情共鳴爆発領域」とは、特異感情能力が通常階梯を超えて臨界に達し、極度の危険を生じさせる現象をいう。

5 感情共鳴爆発領域の発現は、特異感情能力対策庁(以下「特対庁」という。)の登録と監督を受けなければならない。

6 感情共鳴爆発領域の発現及び使用は、公共の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、政令で定める承認及び報告の手続に従わなければならない。


(兵器利用の禁止)

第2条の2

1 特異感情能力は、兵器として研究、開発又は利用してはならない。

2 ただし、国内の治安維持、防衛、災害対応その他公共の安全のために必要な範囲での研究、開発、又は利用は、この限りでない。


(管理機関)

第3条

1 本法の施行および執行に関する事務は、内閣府に設置される特異感情能力対策庁が行う。

2 特対庁は、登録、調査、制圧、鎮圧、収容、薬剤管理、研究監督、国際協力その他特異能力に関する事務を統括する。

3 特対庁に、執行職および一般職の職員を置く。


(監督機関)

第3条の2

1 内閣府の下に、特異感情能力安全委員会(以下「安全委員会」という。)を置き、特対庁の基本方針を審議・監督する。

2 安全委員会は、長官の任免、重大施策の承認、特異事態宣言の同意、長官報告の受理を行う。

3 安全委員会は独立性を持ち、委員の任免その他必要事項は別に法律で定める。


第二章 組織

(特対庁の組織)

第4条

1 特対庁に、次の局を置く。

 一 能力管理局

 二 執行局

 三 収容・保護局

 四 薬剤管理局

 五 国際対策局

 六 情報分析局

 七 監察局

2 必要に応じて地方支局を置く。


(長官)

第5条

1 特対庁に長官を置き、庁務を総括し、職員を指揮監督する。

2 長官は、特異事態への総合対策を統括し、必要に応じ、内閣に特異事態宣言の発出を求める。

3 長官は、国際協力、ICPO国家中央局の管理、及び安全委員会への報告義務を負う。


(階級)

第6条

1 特対庁職員(執行職)の階級は次のとおりとする。

 一 長官

 二 総監

 三 統括監

 四 対策長

 五 主監衛

 六 監衛幹

 七 監衛

 八 執行士長

 九 執行士

 十 巡察士


2 特対庁職員(事務職)の階級は次のとおりとする。

 一 特任監理官

 二 監理官

 三 参事官

 四 調査官

 五 研究官

 六 主席技官

 七 技官

 八 主任事務官

 九 事務主事

 十 事務官


3 階級の任命・昇任その他必要事項は政令で定める。


(特命長官)

第7条

1 国家的特異事態の発生時、内閣は特命長官を任命できる。

2 特命長官は、すべての特異能力対策を統括し、関係省庁を指揮できる。

3 前2項定める統括の期間は必要最小限とする。


(訓練機関)

第8条

1 特異感情能力対策庁(以下「特対庁」という。)に、特異感情能力対策訓練所を置く。

2 前項の訓練所は、次に掲げる教育及び訓練を行う。

 一 特対庁職員の採用教育

 二 特異感情能力の制御及び安全管理に関する訓練

 三 特異能力抑制薬剤その他の薬剤管理に関する教育

 四 国際任務に従事する者に対する教育及び訓練


(研究機関)

第8条の2

1 特对庁に、特異能力研究所を置く。

2 特異能力研究所は、特異感情能力に関する科学的研究及び技術的分析を行うほか、次に掲げる業務を行う。

 一 特異能力の発現機序、制御技術及び危険性評価に関する研究

 二 特対庁が行う特異能力対策のために必要な基盤的研究

 三 特異能力を有する者の倫理的取扱い及び人権尊重に関する調査研究

3 前二項の研究は、政令で定める倫理基準に従い実施されなければならない。


(所掌任務)

第9条

特対庁の任務は、次に掲げるものとする。

一 特異能力に関する犯罪の予防、検挙及び危険の排除

二 特異能力事案に対する制圧・鎮圧

三 特異能力者の保護・救助・支援

四 未成年能力者に対する福祉支援及び保護措置

五 特異能力に起因する災害・事故の対応

六 薬剤の管理及び違法薬剤の取締り

七 能力研究の監督および倫理基準の維持

八 大規模災害その他国家的緊急事態における救助及び支援

九 国民の生命又は身体の保護のため特に必要と認められる応急措置

十 国際協力及びICPOを通じた国際手配

十一 その他個別に特対庁長官が必要と認めた任務


第9条の2(検知及び確認の請求)

 特対庁職員は、特異能力に起因する危険の発生を防止し、又はその拡大を防ぐため特に必要があると認めるときは、当該者に対し、特異感情能力感知装置、その他政令で定める方法により、特異能力の発現状況について検知又は確認を求めることができる。

2 前項の規定によるほか、特対庁職員又は政令で定める特対庁の委託を受けた者(以下「特対庁職員等」という。)は、その職務の執行に際し、当該者が特異感情能力を発現しているおそれがあると、客観的かつ合理的な理由に基づき判断したときは、特異能力の検知又は確認を求めることができる。

  この場合において、当該者は、正当な理由なくこれを拒むことができない。


3 特対庁職員は、前二項の規定に基づき検知又は確認を行う必要がある場合において、

  当該者が特異能力の暴走その他緊急の危険を生ずるおそれがあると認めるときは、

  入国港湾施設その他政令で定める場所において、一時的な隔離又は待機を命ずることができる。


4 前項の隔離又は待機の期間は、検知又は確認に必要な最小限度の範囲内において行うものとする。



第四章 登録・通報・行使禁止


(登録義務)

第10条(特異能力の申告義務)

1 何人も、自らに特異能力の発現を認めたときは、24時間以内にこれを特異感情能力対策庁に申告しなければならない。

2 前項の規定は、意識喪失、重度の身体的障害その他申告が物理的に不可能である場合を除く。


(通報義務)

第11条

他人の特異能力の発現を認知した者は、正当な理由がある場合を除き、速やかにこれを特対庁に通報しなければならない。

2 医師、弁護士、宗教者その他の守秘義務を負う者が業務上これを知った場合も、公益の必要により通報義務を負う。


(国際機関に対する通報)

第11条の2

1 特異感情能力対策庁長官は、外務大臣と協議のうえ、条約に基づき国際監視機関に対して必要な通報を行うことができる。

2 前項の通報に関する手続は、政令で定める。


(登録証明書の交付および携帯義務)

第12条

特対庁は、登録を受けた特異能力者に対し、当該者の階梯その他必要な事項に応じた登録証明書を交付する。

2 特異能力者は、当該登録証明書を常時携帯し、権限を有する官憲から提示を求められたときは、これを提示しなければならない。


(登録情報の公示)

第13条

1 登録証明書には、当該能力者の氏名、階梯、顔写真、能力の概要、処方薬剤の有無及びその有効期限その他政令で定める事項を記載する。

2 前項に規定する登録情報は、特異感情能力対策庁において厳格に管理し、法令に定める場合を除き、これを公にしてはならない。ただし、国際条約に基づき国際監視機関に提供する場合は、この限りでない。


(行使の禁止)

第14条

1 何人も、次の各号に定める事項に該当する場合を除いては、本法に定める手続によらずして、特異感情能力を行使してはならない。

 一 正当防衛

 二 緊急避難

 三 職務として法令に基づき行う場合

2 階梯四以上の特異能力者は、政令で定める場合を除き、特対庁長官の許可を受けなければ、特異感情能力を行使してはならない。ただし、当該能力を行使しなければ重大かつ急迫の危害が発生し、またはその拡大が避けられず、かつ許可を受けるいとまがないと認められる場合は、この限りでない。



第五章 許可状制度


(許可状の種類と発付)

第15条

裁判所は、特対庁指定職員の請求により、特異能力者に対して、次の各号に掲げる許可状を発付することができる。

一 収容許可状:現に危害を加えておらず、自我を保ちうると認められる特異能力者を、能力の鎮静化及び更生のために一時収容することを許可するもの

二 制圧許可状:自我を喪失し、他者に対して明白な危害を及ぼすおそれのある特異能力者に対し、実力による制圧を許可するもの

三 鎮圧許可状:自他の生命・身体・財産、または社会基盤もしくは社会制度に対する重大な被害が現に発生、または発生するおそれがあり、他に手段がないと認められる場合に、対象の終局的措置を含む鎮圧を許可するもの


(執行階級の制限)

第16条

前条に掲げる各許可状に基づく措置は、原則として次に掲げる階級にある特対庁職員の指揮の下に実施されなければならない。

一 収容:執行士以上

二 制圧:執行士長以上

三 鎮圧:監衛以上



第六章 執行手続


(収容の実施及び手続)

第17条

収容は、執行士以上の職員の指揮により、当該特異能力者が現に危害を加えておらず、かつ感情昂揚状態から自我を回復していると認められる場合に実施することができる。

2 収容の実施後、速やかに、裁判所に対し収容許可状の請求を行い、発付された許可状を特異能力者本人に提示しなければならない。

3 請求が却下された場合には、速やかに釈放措置を講じるとともに、必要に応じて薬剤投与その他の保護措置への移行を行うものとする。


(制圧の実施及び手続)

第18条

制圧は、原則として裁判所の発付する制圧許可状に基づき、執行士長以上の職員の指揮により実施することができる。

2 ただし、直ちに制圧を行わなければ、自他の生命、身体または財産に相当程度の被害をもたらすおそれがある場合、または現にもたらしている被害が拡大し、かつ急を要すると認められるときは、特対庁職員の指揮により、許可状を待たずに制圧を実施することができる。

3 この場合、制圧の完了から6時間以内に、裁判所に対して制圧許可状の請求を行い、発付された許可状を直ちに同条4項に示す者に提示しなければならない。

4 許可状は、対象本人またはその代理人に提示するものとし、いずれにも提示できないときは、当該特対庁を管轄する地方検察庁の長に提示する。

5 適正な制圧により対象が死亡した場合には、許可状を直ちに対象の親族またはその代理人に提示し、これらが確認できない場合には、当該特対庁を管轄する高等検察庁の長に提示するとともに、監察機関に対して速やかに報告を行わなければならない。


(鎮圧の実施及び手続)

第19条

鎮圧は、終局的措置を含む制圧行為を指し、裁判所の発付する鎮圧許可状に基づき、監衛以上の職員の指揮により実施することができる。

2 ただし、直ちに鎮圧を行わなければ、自他の生命、身体、財産、社会基盤または社会制度に重大な被害をもたらすおそれがある場合、または現にもたらされている被害が拡大し、かつ急を要すると認められるときは、執行士以上の職員の指揮により、許可状を待たずに鎮圧を実施することができる。

3 この場合、鎮圧の完了から6時間以内に、裁判所に対して鎮圧許可状の請求を行い、発付された許可状を同条四項に示す者に直ちに提示しなければならない。

4 許可状は、対象の親族またはその代理人に提示するものとし、いずれにも提示できない場合には、当該特対庁を管轄する高等検察庁の長に提示するとともに、監察機関に対して速やかに報告を行い、原則として官報によりその旨を公示する。ただし、親族等により公示拒否の意思が表示された場合には、この限りでない。

5 前各項の規定にかかわらず、現場の状況に照らし、対象者が階梯四以上と強く疑われ、かつ、被害の急激な拡大が懸念されるときは、当該現場に所在する職員のうち最高階級者の指揮により、鎮圧を実施することができる。

6 前項の場合においては、当該職員は、速やかにその理由及び判断の根拠を記録に残すとともに、同条第四項、第五項に規定する措置をとらなければならない。


第19条の2

対象が特異能力を有さない者であって、対象者以外の者の生命に危害が及ぶおそれが高く、または現に被害に及んでいる場合、かつ、急速を要し、特異能力を使用する他に手段がないと信ずるに足りる充分な理由があると認められるときは、対象が無能力者であっても、第18条と同様の制圧をすることができる。

2 前項の制圧を実施し、対象者を確保した場合は、直ちに司法警察職員に引致するものとする。

3 適正な制圧の手続きにより対象者が死亡した場合の措置については、第十八条を準用する。



(執行の連続移行に関する特則)

第20条

 収容の手続き中において、制圧が必要と認められた場合には、制圧許可状の請求によりこれを行うことができ、個別に収容許可状の請求は要しない。

2 急速を要する場合の制圧については、法第十八条第二項から第四項を準用する。

3 制圧の範囲内での実力行使によって対象が死亡した場合は、制圧許可状の請求によりその手続きを足りるものとする。

4 制圧中に鎮圧への移行が必要となった場合は、鎮圧許可状の請求により、あらためてこれを執行することができる。

5 急速を要する場合の鎮圧については、法第十九条第二項から第五項を準用する。



第七章 薬剤使用


(薬剤の分類)

第21条

 特異能力者の管理および制御に使用される薬剤は、その作用に応じて次の三種に分類する。

一 感情抑制剤(Emotional stabilizer):感情の昂揚を抑制し、衝動的能力発現を未然に防止する薬剤

二 特異能力抑制剤(Genetic suppressor):遺伝子レベルで特異能力の発現機構を抑制し、一時的に能力を封印する薬剤

三 特異能力安定剤(Control Auxiliary):神経的・生理的安定を図り、能力発現下の理性維持および回復を補助する薬剤


第21条の2

 特異能力を強化する作用を有する薬剤(以下「強化薬剤」という。)の研究、製造、所持、投与及び頒布を禁止する。

2 ただし、医療目的において、政令で定める基準に従い、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。


(使用資格)

第22条

 前条の薬剤は、医師または特異感情能力制御薬剤投与資格者(以下「特薬士」という。)によって、その効果、階梯、及び対象者の身体状況等を勘案して投与されなければならない。

2 ただし、急迫した危険が生じ、かつ医師等による判断を待つことができない場合に限り、執行士長以上の職員が現場で必要最小限の量を投与することができる。



(投与方法及び器具)

第23条

薬剤の投与は、注射、スプレー、麻酔銃等の投射型装置その他政令で定める適切な手段により行う。

2 薬剤の規格、識別色、成分組成、投与量及び効能については、特対法施行規則により別に定める。


(記録及び報告義務)

第24条

薬剤を現場において投与した場合、執行職員または投与資格者は、速やかに投与記録を作成し、特対庁及、薬剤管理局及び に報告しなければならない。

2 報告には、使用薬剤の種類、投与方法、対象階梯、投与量、効果、及び必要な処置を含むものとする。



第八章 収容措置


(収容施設の区分)

第25条

特異能力者を収容する施設は、その状態および収容経緯に応じて、次の二種に区分される。

一 安定型収容施設:自我を回復し、能力の暴走を抑制できている者を、薬剤管理および更生指導のために収容する施設

二 強制型隔離施設:自我喪失状態のまま確保された者または重大な危害の危険性が高いと判断された者を、長期的または無期限に隔離・監視する施設


(移送と分類)

第26条

収容は、原則として安定型収容施設において行われるものとする。

2 ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、強制型隔離施設に移送しなければならない。

 一 制圧または鎮圧により確保された者で、精神的・生理的に安定が確認されていないとき

 二 第二十五条に基づく責任能力喪失者で、刑事責任を免除された場合

 三 裁判所の命令により、当該移送が相当と認められた場合

 四 その他特に必要と認める場合

3 終局的刑に服する者で、かつ遺伝的・感情的特異性が著しいと判断される場合において、研究・解析上必要と認められるときは、政令で定める基準に従い、当該者を指定観察対象として強制型隔離施設に移送することができる。

4 前項の措置に係る対象者の処遇は、政令で定める機関において、専用区画における特別管理の下で行わなければならない。

5 各収容施設に施設長を置き、処遇、安全管理、面会制限、医療措置を統括する。


(収容中の処遇)

第27条

特異能力者は、収容中であっても、人格及び基本的人権を尊重された処遇を受けなければならない。この場合においては、国際人権規約その他の条約に反しない範囲で処遇するものとする。

2 薬剤投与、隔離、制限措置その他の管理については、階梯、症状及び行動記録を踏まえ、定期的に見直されるものとする。

3 第二条第三項五号、六号、及び第二十五条二号に基づく対象者に対する処遇は、機密性を考慮し、必要な範囲においてその所在、処遇内容その他の情報について、公表の可否を考慮しなければならない。


(釈放および退所)

第28条

能力者が安定を取り戻し、制御可能と判断された場合は、必要な再審査を経て釈放を許可することができる。

2 釈放された能力者は、薬剤投与、定期的報告、追跡調査等の措置を受けるものとする。

3 収容中に能力の階梯が変動した場合には、その内容に応じて収容形態および施設の変更を検討しなければならない。


第七章 罰則


(登録・通報義務違反)

第29条

第十条に違反し、自己の特異能力の発現を申告しなかった者は、1年以上の拘禁刑に処する。

2 第十一条に違反し、他人の特異能力の発現を通報しなかった者は、3年以下の拘禁刑に処する。


第29条の2(検知拒否罪)

 第9条の2第1項又は第2項の規定による検知若しくは確認の求めに対し、正当な理由なくこれを拒み、又は妨げた者は、三年以下の拘禁刑に処する。


2 前項の行為に先立ち、特対庁職員が第9条の2第3項の規定に基づき命じた隔離又は待機に従わず、又はこれを拒んだ者も、同項の罪とみなし処罰する。


(特異能力行使違反)

第30条

1 第十四条第一項に違反して特異感情能力を行使した者は、5年以上の拘禁刑に処する。

2 階梯四以上の特異能力者が、同条第三項に違反して能力を行使したときは、7年以上の拘禁刑、若しくは無期懲役に処する。

3 正当な理由の主張があるときは、行為者がその証明責任を負う。


(特異能力の悪用)

第31条

自己の意思により特異能力を行使し、刑法その他の法令に定める犯罪を遂行した者は、その罪の重さに応じて、次に掲げる刑に処する。

一 当該犯罪の法定刑が死刑または無期懲役に相当する場合は、死刑に処する。

二 当該犯罪の法定刑の上限が5年以上の拘禁刑である場合は、無期懲役に処する。

三 当該犯罪の法定刑の上限が1年以上3年未満である場合は、7年以上の拘禁刑に処する。

四 当該犯罪が軽犯罪法その他に規定される軽微な犯罪に該当する場合は、5年以下の懲役に処する。

五 当該犯罪において罰金刑のみが規定されている場合においても、特異能力を用いてこれを行った者は、5年以下の拘禁刑に処する。


(違法執行に対する処罰)

第32条

特異感情能力対策庁の職員が、本法に基づく権限を逸脱して、不当に収容、制圧、鎮圧等の実力行使を行い、特異能力者または第三者に対し身体に対する暴行もしくは不当な拘束等の被害を加えたときは、7年以下の拘禁刑に処する。

2 その結果、重大な傷害を与えたときは、6年以上の拘禁刑、若しくは無期懲役に処する。

3 死亡の結果を生じたときは、15年以下の懲役または無期懲役に処する。


(責任能力の喪失と免責措置)

第33条

特異能力の発現による暴走状態により、行為時に責任能力を著しく喪失していたと認められる者に対しては、刑を減軽し、または免除することができる。

2 前項の規定により刑を免除された者は、無期収容措置として、強制型隔離施設において収容されるものとする。

3 当該者の再発の危険性が確認されなくなった場合には、専門委員会による審査を経て、段階的釈放・保護措置に移行することができる。


(未遂の処罰)

第34条

本法に規定する罪については、未遂も罰する。


第八章 補償


(被害補償)

第35条

本法に基づく執行または特異能力者の行動によって、一般市民が生命、身体、財産等に損害を被った場合には、政府はこれを補償する義務を負う。

2 補償は、当該事案の内容、損害の程度、責任の所在その他必要な事情を考慮して、予算の範囲内で適切に行われるものとする。


(国家賠償)

第36条

特異感情能力対策庁の職員その他本法に基づく権限を行使する者が、その職務の執行にあたり故意又は過失によって違法に損害を生じさせたときは、国家賠償法(昭和22年法律第125号)の規定に基づき、国がこれを賠償する責任を負う。

第37条

法第32条に該当する行為によって被害を受けた者等は、国家賠償法の規定に加えて、別途、特異能力補償審査制度に基づき、追加的な補償を受けることができる。

2 当該補償は、身体的、精神的被害の内容に応じ、政令で定める基準により算定される。

3 補償請求の手続は、政令で定める。


(補償の手続)

第38条

前二条に基づく補償または賠償の請求については、政令で定める手続に従い、所定の機関に申し出ることにより行うものとする。

2 補償の内容、額、支給時期その他必要な事項は、政令でこれを定める。


附則


(施行期日)

第1条

この法律は、公布の日から起算して6か月以内に政令で定める日に施行する。


(政令委任)

第2条

この法律に定める事項のほか、施行に関し必要な事項は、政令で定める。


(準用規定)

第3条

この法律に定めのない事項については、刑法、刑事訴訟法、警察法、国家賠償法その他の関連法令を準用する。


(他法の整備)

第4条

この法律の施行に伴い、次に掲げる法令の一部を次のように改正する。


一 日本国憲法の解釈上の特則

 本法に基づく緊急措置、特異能力者の自由制限、医療的措置、薬剤投与等については、公共の福祉を根拠とする制約の範囲内で、必要最小限度の制限を正当とする。

二 刑法の特例規定

 刑法第三十七条(緊急避難)に加え、本法における制圧・鎮圧・収容の執行は、当該法令に基づく職務行為として構成要件に該当しない場合がある。

 また、刑法第百九十五条(特別公務員暴行陵虐罪)は、本法第二十四条の2により特別に置き換える。

三 刑事訴訟法の特例

 本法における令状主義に関しては、刑訴法の規定を基本に据えつつ、本法に定める緊急執行、事後請求、職務指揮権の範囲に関する特則を優先して適用する。

附則第5条

特異感情能力対策庁は、条約に基づき国際監視機関の査察を受け入れるものとする。

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