第20話:機密データ

三人は鬼頭の不気味なオーラに息を飲んだ。


「登、私が国際大会で優勝したあと、警察組織のシステム構築の人員に推薦されたのは覚えているか?」


「はい、確か警察組織と期間契約を結んだとかおっしゃっていましたね。」


「そうだ、そして私は警察組織のシステム構築のため尽力した。」


「いや、何なら新たなシステムの導入すら提案したんだ。」


「そうでしたね。でもあなたは途中で音信不通となり姿を消した。」


鬼頭は再び猿渡に視線を向けた。


「どうしてだか分かるか?」


「いえ、確かあなたが姿を消したのは僕が国際大会で優勝してしばらく経ってからだったような…。」


鬼頭の表情から笑顔が消えた。


「そうだ。全ての原因を作ったのはお前だよ、猿渡登!」


猿渡は鬼頭の怒号に恐怖を覚えた。


「でも、鬼頭さんはあの時は喜んで…。」


鬼頭は再び不気味な笑みを浮かべた。


「あぁ、勘違いするな。国際大会で敗れたくらいでお前のことを恨んだりはしないさ。」


「運が悪かっただけで、技術に関しては私の方が上だ。」


「だから、あの時はお前の勝利を喜んでいたよ。」


「しかし、猿渡は若き天才ハッカーとして一躍注目の的となった。」


「それに目をつけたのが警察組織だ。」


猿渡は驚いた。


「でも、僕には警察組織から契約の打診などありませんでしたよ。」


鬼頭は少し驚いた表情に変わったが、すぐに元の不気味な笑顔に戻った。


「まぁいい。警察は一方的に期間契約の解除を行なった。」


「私が警察のシステム構築にどれだけ尽力し、協力してきたのか分かっていながらな。」


「私が国際大会で敗れたことにより、猿渡という新たな新星と契約をするとな。」


「だから警察から契約打診の話など僕にはありませんでしたよ。」


「それも奴らの口実だろうが、奴らは組織の機密に口を出した私を排除したのだ。」


「それならもう一度、国際大会で僕に勝てば良かっただけのこと。どうしてこんなことを。」


「いいか、私は一度敗れた舞台に立つつもりはない。」


「幸いにも私は警察などのシステム構築に携わっていた。」


「だから奴らのシステムをハッキングするのは簡単だったよ。」


「それで警察システムに侵入をしたのですか。」


「そうだ。私は以前警察のデータベースを調べていた時にこの島の座標位置が重要データに保存されているのを見つけた。」


鬼頭は相変わらず不気味な笑みを浮かべつつも、その口調は強くなっていた。


「そしてこの島には何か重要なものが隠されていると私は睨んだ。」


「そして、この島を拠点に警察の機密データをコントロールするデータセンターを築き上げる」


「私が提唱して組織が却下したシステムの正当性を証明しようとしたのだ。」


「この島は警察の重要データとして保存されていたのですか。」


「そうさ、ここであれば警察は辿り着けないだろうしな。」


「私はこの島まで連れて行ってくれる船を探して、船長に大金を払いこの島にやって来たのさ。」


鬼頭と猿渡のやり取りを聞いていた犬飼が口を挟んだ。


「それと鬼の支配と何の関係あるんだ。」


「私はこの島に辿り着いた後、鬼たちに遭遇した。私は死を覚悟した。」


「でも鬼たちはお前を襲わなかった。」


「そのとおりだ。むしろ私を見ると人間様が来たと逃げ出したのだ。」


「私は鬼と話をしようと何とか一頭の鬼と話をすることができた。」


「そしたらどうだ。鬼たちは人間を崇拝してはいるが、人間に見られると災いが起こるとかで逃げ回っていたのだ。」


「人間に姿を見られると災いが起こるが、人間の文明には憧れているということか。」


「そうだ、それで私は考えた。これは神様が私にくれたチャンスなんだと。」


「ここにデータセンターを作り、鬼たちに文明を与える。」


「鬼たちは彼らが憧れる人間様の支配のもと新たな文明を築き、さらに私のシステムの正当性が証明されれば新たな警備システムとして採用される。」


「私の技術の証明と世の中の平和にも役立つのさ。」


「それならわざわざ鬼たちを騙して金品を強奪する必要はないじゃねぇか。」


「システムの構築にはお金がかかる。」


「それに私が警察組織に対してやることはこれだけじゃないないんでね。」


「鬼の存在を隠蔽した警察組織の機密データをいずれ世間に公表しなければならない。」


「全ては警察組織の浄化と私のシステムの証明のためだ。多少の犠牲はしょうがない。」

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