第4話
◇
取らぬ狸の皮算用、その気がないのに一応彼氏募集中のウィラは、ナギとカズサと一緒にいい男の条件を語っていた。
「なんちゅうかアレや、プライド捨てて追っかけてくる男の人がええな」
「おいウィラ、アボリジニの歴史についての話か?」
「盛大なブーメランっすね。十年後も同じこと言ってそうっす」
「いや、ブーメランちゃうねん。そらうち、めっちゃかわええし美人やろ?」
「ああ、賢くて育ちの良さが垣間見える品もあるな。おまけに性格も悪い」
「ナギ! 性格も悪いは余計や!」
「でも会長、この間っすけど、体育館裏で告られたっすよね? 告った男子、感極まって泣いてたっすね」
「そらな、下駄箱にラブレター言うたら古典的過ぎて気になるやろ? せやけど体育館裏来いって、送り先をナギと間違えたんとちゃいますか?」
「ウィラ、果たし状じゃねぇから」
「ナギ、あんた元ヤンやし、後日果たし合いに応じてもええんやないか? あ、せやけどそれ、決闘罪やったわ。ナギ、やっぱ今の無しや」
「ハートマークのシールが付いた果たし状なんてさ、聞いたことも見たこともねぇよ」
「冗談はここまでにして、会長、断ったんっすよね?」
「せやで? うちにラブレター送るぐらいやったらな、もうちょい自信持って伝えることはよ伝えて欲しかったんやけどな……うちを見るなりな、モジモジしだす気持ちはわからんくもない。せやけどな、話が一向に進まんから焦れったいっちゅうか、ついつい強く言うてもうたんや」
「ウィラ、気持ちはわかる。で、なんて言ったんだ?」
「さっきからなにも喋らへんし、地面ばっか見てモジモジしちょるからきしょいねん! なんや、地面に告るんやったらうちが手伝ったろか?……って言うたら泣かせてもうたんや。いや、泣きたいのはこっちや!」
「あーそうっすね、気持ちはわかるっす。会長的には、緊張する場面でも堂々と振る舞う男子がいいってとこっすね」
「せやで、もしかしたらうち、少しは心が動くかもしれへんやろ?」
「そうだな、あたしも同意だ。だけどよ、あたしらに比べると男子ってさ、超えるハードル多くて大変だよな」
「それぐらい出来ないと先行きが不安っすからね」
「せやせや、その点ナギとカズサちゃんはどないなんや?」
「あたしか? あたしはそうだな……一目惚れ、それだけだ」
「時が来た、みたいに言わんでな?」
「「「HAHAHA!」」」
「ほんならはよ付き合えって思うんやけど、立場的にあれやからなぁ」
「ああ、最悪イナ先生が失業するかもしれないからな……」
「せやな……ほんでカズサちゃんはどないや?」
「私っすか? 色んな情報を収集、分析済みっすから、条件的に悪くないなって思ったから即OKしたっす」
「オバタのことだから、表情も声色も変えずに即答する場面が想像できるぜ」
「彼氏さん、めっちゃびっくらこいたんとちゃうか?」
「確かにびっくりしてたっすね。俺の緊張を返せって言われたっす」
「そらそうよ、うちにもそれぐらいのええ男の人、来てもおかしくないんやけどな……」
「そうして墓標が増えていくんだな」
「墓標ちゃうわ!」
「「「HAHAHA!」」」
取らぬ狸の皮算用、高校2年生のウィラにまだ春は訪れることなく、むしろ芽を摘んで遠ざけていくのであった――――。
◇
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