4 癒しのキス

4-1 収穫

 夏の午後、私はデグーの首都マラティの郊外にある村の畑にいた。農家のバーディル達に混じって夏野菜の収穫をしていた。

 神殿に種を持って来ていた農家がいるレストア村へ、午前の仕事の後に畑仕事の手伝いをすることになったのだ。

 ずっと部屋にこもっているより、外で土や植物と触れ合っている時間がある方が気分転換になる。私はこの時間が一番の楽しみになっていた。


「これで全部ね」


 収穫したビーツやナスを箱に入れ終えると、若いバーディル達が箱を持って一斉に飛び立った。同盟を組んでいる近隣の国の市場に並べる為だ。デグーの野菜は、フローリアの祈りが捧げられた種からできているからとかなり人気らしい。


「たくさん収穫できてよかったですね」


 カイルの元同僚で今は農家をしているシーエンに声をかけると、渋い顔をした。


「いや、今年は少ない方だよ」

「そうなんですか?」

「ああ、どういうわけだか年々収穫量が減ってきているし、野菜の大きさもだんだんと小さくなってる。病気にかかりやすくもなっているし」

「どうしてかしら……」

「理由は分からない。収穫量が減れば収入も減る。このままだと廃業する農家も出るだろうな」


 シーエンは、はぁと大きなため息をつく。その隣にいたシーエンの妻のナティが、思い出したかのように話し始めた。


「そう言えば、木こりをしている人から聞いたんだけどね。西の森で木が腐ってしまっているんだって。ほぼ全滅。薪にもできなくて冬を越す為に必要な量を取れないって嘆いていたわ」


 待雪草スノードロップが咲いていた場所の他にも、木々が弱っている場所があった。

 木だけでなく野菜も。これは明らかに異常事態だ。


「一体、何が起きているの……」


 この異変をロザリナ様は知っているのだろうか。いや、そもそも花の森は他国との交流などないから分からないだろう。どうにかして知らせる方法はないだろうか。

 手伝いを終えて帰路についた。ちょうどカイルが仕事終わりにこちらに寄ってくれると言っていたので、待ち合わせ場所の森のはずれにある広場へ歩いていた。物思いに耽っていたからか、背後から近づく足音に気づくことができなかった。

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