残響フロイント

指野 光香

第0話 

 ようやく着慣れてきたであろう制服に身を包んで、学生たちが騒がしく桜並木を駆けていく。そんなありふれた光景に目を奪われるようになったのはいつからだろう。

 きっと、あの日からだ。

 十年前。

 宝物と引き換えに、君を失ったあの日から。

吹き抜ける風に、懐かしい匂いを感じた──気がした。

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