第一章 1-episode4.回復魔術の使えない神官

#21

「なあリク。相談がある」

「なんだ急に」


 リンが死んでしまってから一月。

 俺達はゆっくりと五人体制のパーティとして成長してきていた。

 そんなある日の夜、俺はシュンに連れられて再び酒場へと足を運んでいた。


「僕たちに新しいパーティメンバーは必要だと思うか?」

「必要か必要じゃないか、と聞かれたら俺は必要だと答えるぞ」


 安酒を呑みながら俺はそう答える。

 元々職業構成のバランスが悪いパーティで一人いなくなったんだ、そりゃあ追加のメンバーが欲しいと思っても不思議ではないだろう。


「僕たちはみんな異邦人だ。そんなパーティに入ってくれるこの世界の人はいると思うか?」

「確かに問題はそこだな。全員異邦人かつ、底辺の冒険者パーティ。普通だったらこんなパーティに入りたいと思う人、いないよな」

「うん。協会に頼んでメンバーを募集しても望薄だろうね」

「困ったな」


 新しいメンバーが欲しい。でも俺達のパーティに入ってくれるような人がいない。


「火力が出るか、前線を張れる人が欲しいよな」

「そうだね。僕たちには前線のメンバーが明らかに足りてない」


 シュンはリーダーかつ指令塔なので、剣士でも少し後ろ目の立ち位置を取っている。

 そうなると自然に最前線を張れるのはハヤトだけになってしまう。

 そうして俺達にはもう一つ足りない職業があった。


「それに荷物持ちの人も欲しいよね」

「そうだな、今のままだと素材を全て持ち帰れない」


 多くの冒険者パーティには荷物持ちと呼ばれる役割の人がいる。

 主に神官などの完全後衛職が担当する事が多く、獲得した素材を一時的に軽くしたり、圧縮してから異空間に素材を入れる魔術を使って、名前の通り荷物を運ぶ役割だ。

 このパーティだとシオリがそれに当たりそうだが死霊魔術師ネクロマンサーの制約によって、彼女は死霊魔術以外の魔術が使えないので荷物持ちにはなれなかった。


「あー困った困った」


 シュンは若干ヤケ酒気味に追加の酒を頼んだ。

 釣られて俺も追加で酒を頼む。


「ジェイスさんを頼ったりするのはどうだ?」

「うーん、それはアリかもしれないね。ナイスアイディアだ、リク」


 困ったときは先輩を頼る。

 これテストに出るくらい、社会では大事な事です。


「よお、シュンとそしてパーティメンバーのリクだったか」

「お久しぶりですジェイスさん」

「久しぶりです、リクです」


 丁度酒場にいたジェイスさんを自分たちの机に呼び、早速俺達は相談してみる事にした。


「なるほどなるほど。それは難しい話だな。先輩として正直に言わせてもらうと、無理って言わせてもらうぜ。ガハハハハハ」


 酒が入ってるせいかジェイス先輩は上機嫌に笑いながらそう言った。

 やっぱり俺達のパーティに新メンバーを招集するのは無理かと思ったその時、ジェイス先輩の口から思いがけない言葉が出てきた。


「でも荷物持ちなら……いるかもしれないぞ? まあ彼女は訳アリ中の訳アリなんだが……一応お前らとも関わった事のある人物だ」


 訳アリ中の訳アリ?

 俺らと関わった事のある人物?

 そんな人間に心当たりはなかった。

 シュンも俺と同じように不思議そうに首をかしげていた。


「ええと、あの時の少女だよ。『新星』ニュービーがこの酒場に来た時に、喧嘩売ってた少女だ」

「ああ、あの時の!」

「そう。彼女は今色んなパーティを転々としてる」

「それは何故でしょうか、ジェイスさん」

「そんなの簡単さ。回復魔術の使えない神官なんてどこにも需要ないんだよ」


 回復魔術の使えない神官……?

 そんなの神官って言っていいのだろうか?


「な、なんで回復魔術が……?」

「原因はトラウマだな。異邦人のお前達にはぴーてぃーえすでぃーと言った方がいいか?」


 それで俺は腑に落ちた。

 なるほど、彼女は仲間を失ったショックで回復魔術が使えなくなったのだろう。


「取り敢えず話してみた方が早い。ちょうど今日も彼女はヤケ酒の最中だ」


 そう言ってジェイスさんが指さした方向には一人でお酒を呑んでる少女がいた。

 この世界では珍しい黒髪。そして女性の中では高めの身長。

 確かにあの時の少女だった。


「彼女の名前はアイザ。回復魔術さえ使えたら優秀な神官さんだよ」

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