知られたくない気持ち 【再編版】
第4話 白村凛川
『なんて可愛い子なんだろう』
『大人になったら絶対超美人になるよ』
『山崎さん、将来アイドルか芸能人になるんじゃない?』
父親が海外で人気の芸能人だったこともあって、私の周りにはいつも色々な名士たちが取り巻いていた
ずっと昔から、周りの大人たちはいつもこんな風に囁いていた
それから、私はお世辞を並べる人たちに対して、偽りの笑顔を浮かべるようになった
私は知ってるーー本当に欲しかったのは、アイドルなんかじゃない
そんなものは遠すぎて、掴めない星のようなものだ
小学校に初めて足を踏み入れた時、私は当たり前のようにクラスの焦点になった
特別に友達を作ろうとしなくても、自然と周りから誘われるし、何も意識しなくても、先生たちは私を模范生扱いしてくれた
先生たちはひかえめに私を気にかけ、同級生たちはわざわざ私に取り入ろうとするーー
そんな、いつもと変わらない平凡な日だと思っていたら、あの子に会ったんだ
白村凛川
あの子は本当に可愛いのに、クラスの子たちにわざと狙われていた
ゲームをするたびに、いつも最後まで負けてばかりで、愛されたいとうずうずしてるのに、教室前の階段にぽつんと座り、空き地でわいわい騒ぐ子供たちの姿を、うらやましそうに見つめるほかなかった
『一緒に遊ぼう』
初めて、儚げで柔らかい声で誘ってみたら、あの子はスッと頷いてくれた
『なんで陰キャな子を誘うの?』
『仕方ないよ、りんちゃんが優しすぎるんだもん』
周りの子供たちがそうささやいていた
私のせいかもしれないーーあの子が笑った
これまでクシャクシャにつまんだような顔だったのに、初めて本物の笑顔が浮かんだんだ
その笑顔は、お世辞を言う人たちに向けて私が作り上げる偽りの笑顔より、無数倍明るくて、暖かかった
ある日、またあの子を誘おうとしたら、彼女は以前のように嬉しそうにはならなかった
返ってきたのは、ただその瞳に浮かんだ、震えるような恐れだけだった
たぶん連絡が多すぎて、恥ずかしがってるのかな
私はそう思って、気にしないふりをした
その後、ある日——私は都合でそのグループの子たちと遊ぶことができず、少し遅れて空き地に戻った時
目を覆いたくなるような光景が、まっすぐ目の当たりに飛び込んできた
『さすが陰キャ、ゲームもこんなにバカな』
『バカ!バカ!』
『めちゃくちゃバカみたい』『泣き虫!』
子供たちは悪態をつきながら、地面にしゃがんで震える凛川ちゃんを指さし、けろりと囁いていた
彼女は一言も反論しないで、ただ黙って教室に戻っていった
『ルーザー!』
『勝ちだー!』
『りんちゃんはわたしたちのもんだ!』
背後から、子供たちのけたたましい笑い声が響いてきた
こんな言葉が子供の口から出るなんて信じられない。まるで北の冬の風のように、肌刺さるくらい冷たい
『何してるんだ!?』
私の偽りの笑顔がパッと崩れた
血が頭に轟き、体裁なんてどうでもよくなって、ほとんど吼えるように叫び出した
『りんちゃん、わたしたちはただ泣き虫を追い払ってるだけだ』
突然、一人の男の子が前に出て、高慢そうに言い放った
『はい』
『そうだ』
後ろから幾人かの附和する声が重なってきた
私は拳をぎゅっと握り締めて、もう我慢できなかった——全身の力を込めて、その男の子の顔面にぶちかました
「え…えっ!?」
男の子は顔を覆いながら後ろに蹌踉めくと引き返し、目を見開いて完全に信じられない表情だった
周りの子供たちも、一斉にヒッと息をのんだ
私はまっすぐ教室に駆け込むと、りんかちゃんがランドセルを抱きしめて、肩を震わせながら泣いていた
その後、りんかちゃんをいじめていた子供たちは担任の先生にひどく叱られたけど、私は人を殴ったことで、父に退学を命じられ、海外に飛ばされた
三年か四年後——
私が故郷に戻ってきた
転校生として
初めてあの子を見た瞬間、私は確かに感じた
小学時代、いつも他の子たちをうらやましそうに見つめていたのは、きっとこの子だった
彼女はやはり変わっていない
一人で教室の片隅に座り、指先で消しゴムをほんのりこすっている
りんかちゃん、まだ私を覚えているかな…?
心の中でそうつぶやきながら、手の平が少し汗をかき始めた
「じゃ、自己紹介をしてくださいね」
先生が柔らかく声をかけた
「私は山崎花梨です。海外から転校してきました。初めまして、どうぞよろしくお願いします」
りんかちゃんの視線を感じて、顔がほんのり赤くなってしまった
私は胸のドキドキを抑えて深呼吸し、できるだけはっきりと口を開いた
「じゃ、空いている席を探して座ってください」
私はうやうやしく頷き、まっすぐりんかちゃんの方に歩いていった
りんかちゃんは慌てて頭を下げた
かわいすぎる……
「あの—、白村さん、この隣の席、空いていますか?」
私はこらえきれない笑みを押さえ込み、わざと伸び伸びと声を張り上げた
「白村さん?」
返事がないのを見て、もう一度ゆっくりと繰り返した
りんかちゃんに近づき、鼻先同士がほとんど触れ合う距離までーー
「へえっ!?」
あの子は小さく驚いた
「お名前を教えてもいいですか?」
彼女がささやくように答えた後、私はわざと尋ねた
彼女の名前なんて知ってるのに、やっぱり自分の口から名前を聞きたかったんだ。白村凛川——りんか。私の名前と読み方が似てることも、きっと二人の縁なんだよね
「…白村りんか」
ささやくように返事をした
「あの、花梨ちゃんは、なんでわたしの隣に座ったの?」
あの子はおかめをしたように尋ねた
「運命だよ」
かわいすぎてルール違反...胸の高鳴りを抑えて、そっと微笑んだ
運命って本当にあるのかな?
まさかまた会えるなんて、夢にも思わなかったよ
海外に行く日、不可能だって分かってても、彼女の姿が見えるかなって、飛行機の窓の外をずっと見つめてた
こんなに時間が経ったら、凛川は早くも私のこと忘れちゃったかな?
でも、私が忘れなければ大丈夫ーー
そう思った。
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