真説・酒呑童子記 ―源頼光と鬼姫の約束―

ルート・メモリー

序章 ―語りの始まり―

ときは平安時代の中頃——



「ねぇ! じいさん、また聞かせてよ、土蜘蛛退治の話!」

「もっともっと、勇ましいのがいい!」


昼下がり、村の子らは老人を取り囲み、目を輝かせてせがんだ。



その老人。

かつては武勇で名を馳せ、いまは故郷に身を寄せる、一人のご隠居。

しわくちゃな手ながらも、なお節は太く。


かつて、怪力の名残を宿していた。

背筋はまっすぐで、ただならぬ威を放っている。



子らのせがみに少し肩をすくめると、やがて穏やかな笑みを浮かべた。


「ほっほっほ、勇ましいものよ。

——だが、武ばかりがすべてではない。

今日はそんな話を……お主らにしようと思うんじゃ」



その瞳が、ふっと遠くを見つめる。



「では語り聞かせよう。

我が師と、そして人を愛した優しき鬼姫の物語を……」



子らのざわめきはぴたりと止まり、静寂が訪れる。

小鳥のさえずりすら遠く、空気は次第に張りつめていった。




語られるのは——歴史の書に記されることのなかった、鬼と人との”約束の物語”である。





——そして、静かに幕は上がる。




(※この作品には前奏曲があります。よろしければ耳を傾けながらお読みください)

https://suno.com/s/RYX9SiWVyMfcXyQZ

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