第7話
教室に戻ると、みな一斉に創を見た。
創はそれを軽く受け流し、自分の席に着いた。お昼休みの時間はまだ残っている。お弁当を食べてしまうつもりだった。お腹は空いていなかったが、お弁当を残すのが嫌だった。
お弁当を食べていると、悠一がやってきた。
「創……ごめん」
「いいよ、別に」
「……ごめん」
悠一は神妙な顔をして謝った。その姿を見て、創はふと気になっていたことを訊いた。
「あのさ、一つ教えて欲しいんだけど、あの写真、どこから流れて来たの?」悪意の出処が知りたかった。
「――分からない。グループLINEに流れて来たんだよ。転送されたやつだから、流した大元が誰かは分からない」
「ふうん」
創は、この話が母さんの耳に入らなければいいと思っていた。保護者間もLINEで繋がっているから、菜摘の耳にいつ入るか知れなかった。――もしかして母さんはもう知っているのかもしれない。
創が黙り込んだので、悠一は「なあ、創、ほんと、ごめん」とまた謝った。
創は悠一の顔を見て、「もういいよ。悠一が悪いわけではないし」と言った。そうだ、もういい。――強く在らねば。こんなことで心を乱している場合ではないのだ。
「ねえ、悠一。さっきのLINEさ、どれくらい広まっているの?」もう一つ気になっていたことを訊く。
「どうだろう?」
「このクラスの人は知っているんだよね?」
「うん、みんな見ていた」
「そう。他のクラスはどう?」
「……分からないけど。――聞いてみようか?」
どこまで噂が広まっているかは把握しておきたいところだけど、悠一が聞くことで逆に噂が広まる可能性もあったので、創は「いいよ、聞かなくて」と応えた。
「……ところでさ」
「ん?」
「本当なの? 創の父さんが……その、浮気をして」
「……浮気をしたかどうかは分からないけれど、今、家に帰って来ていないのは本当だよ」
「創……大丈夫?」
「――平気だよ」
大丈夫かどうかは分からないが、そう応えた。
悠一としゃべりながらもお弁当を完食し、創はお弁当箱を片付けて水筒のお茶を飲んだ。
噂があまり広がっていないといい、と創は願った。
午後の授業が始まり、悠一は席に戻った。
創は授業に集中した。余計なことを考えないためにも、創はシャープペンシルを忙しく動かした。
創は勉強をしている脳の裏側の一部で、恐らく多くの人に知れ渡っているであろう噂のことを考えていた。どう対処したらいいのだろう? 自分は完全に無視してしまえばいい。だけど、母さんが知ったら? ――きっと、傷つく。母さんを傷つけたくない。
授業と授業の合間に携帯電話を見ると、菜摘からLINEが来ていた。そこには、英明の実家に行くから遅くなるかもしれない旨、そして英明が浮気をしていたかもしれないということが簡潔に書かれていた。
創の、携帯電話を持つ手が震えた。
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