運命を超える冒険譚 ー砂漠の向こうに眠る聖なる泉ー

光野るい

第1話 戦場からの帰還

耳をつんざく爆発音が響き渡った。

 砂埃が舞い、煙の向こうで敵軍がゆっくりと撤退していく。

「……助かったのか、俺たち」

 シリルが力なくつぶやくと、まわりの兵たちは次々と武器を掲げた。


「我々の勝利だ!」「生き残ったぞ!」

 歓声が広がり、緊張していた空気がようやく解けていく。

 帰還の輸送車に乗り込むと、シリルは血の気が失われた友人ユゴを必死に支えていた。


「おい、ユゴ!しっかりしろ、もうすぐ村だ。もうすぐ帰れる……!」

 ユゴは命こそ助かっていたが、意識が戻らない。

 

ぐったりとした体を抱えながら、シリルは何度も彼の名を呼んだ。

 やがて輸送車が故郷の村へ辿り着くと、村人たちが駆け寄ってきた。

「ユゴが……!」「すぐ治療を!」

 

  ユゴは急いで寝台へ運ばれ、村の医者が懸命に処置を始めた。

 だがその表情は険しく、深刻さを隠しきれていない。

「ユゴは、助かるのか……?」

 シリルは震える声で医者に問う。

「負傷が激しい。とても危険な状態だ」

 医者の言葉は、静かに、しかし重く突き刺さった。

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