第49話 首だ首だ首だ!
イトゥワールにやらせるのは、「外交官」だ。
外交官……、重要じゃね?と、お思いかもしれない。
だが現在のワルバッド辺境伯領は、もう全然、十分に内需で回り始めてるんよね。外交で外とやり取りするより、内で増やした方がええ。ワルバッド辺境伯領も新大陸も、まだまだ開発と発展の余地がありまくるし。支配圏増やしより、内政優先やね。
グローバル化っていうのは国内の産業が頭打ちになってからの話でしょそんなのは。今もうバブル程とは言わないが、工場でもなんでも建てるだけで儲かる時期だぞ。
と言うか、俺からすればもう、ここで逆に人間の量が増えて、諍いが起きる方がマイナスって感じだ。
現在、ワルバッド辺境伯の人口は、七割以上は何かしらの亜人。
人間三割足らず、オーク二割足らず、ゴブリン二割、コボルト一割、ダークエルフ一割、あとはその他諸々。
そんな訳で、人間が一強の派閥って訳じゃあないから、なんだかんだでバランスが取れている。
無論、差別はまだまだ全然バリバリある。
あるが、それでも棲み分けはそこそこにできている。
「ゴブリンが集まる酒場」だの、「ハイソな人間のレストラン」だの、ある程度の線引きがな。
結局こう言うのは、下手に「みんな一緒!」「平等!」とするから良くない。
ドライアイスの剣さんが言っていたように、AにはAの、BにはBの仕事があるんだよ、世の中ってのはよ。
この「適材適所」ってえ考えを捨てて、下手に公平な理想の社会!ってのをやろうとしたお目目キラキラのバカが運営していたのが現代社会だもんな。
ポリコレ!とか言って、能力のない奴が偉そうなツラしている社会!……みなさんお嫌いでしょう?
俺の社会だと、クズはクズらしく、上流は上流らしく生きられる素晴らしい実力主義になっているからな!
万一クズのご家庭に生まれても安心だ。教育は充実しているからな。成り上がりたいなら必死に勉強すれば?という感じ。
え?クズに生まれたのに、努力しないで偉くなりたい?はっはっは、死ねよバーカ!
……とにかく、良くも悪くも、機会は全ての種族に与えていた。
ああ、もちろん。
ゴブリンやハーピィは、種族の特性として、そこまで頭がよろしくない。
オークは大食らいだから、食費が高い。
ワーウルフやコボルトはチョコレートや玉ねぎなどを大量摂取すると中毒を起こす。
そういう、ハンデはある。
現代で言えば、貧乏な生まれだと十分な教育が受けられないから偉くなりにくい!みたいな話だな。
だけどぉ……、俺はぁ……!上に行きたい奴らはそんなハンデも押しのけて、死ぬ気で努力してくれるって信じてるからぁ……!
大丈夫大丈夫!俺も(前世で)やったんだからさ、安心しろよ!
クソみたいな生まれで!親に殴られて!施設に送られても!死ぬ気で勉強して大学に入り、金をかき集めて、本気を出せば!経営者にでも何にでも、なれるんだよ!!!
……そういう訳なので、努力できない奴らは、努力できないクズなりの、それなりの暮らしってもんをすれば良いんじゃない?
貧乏で身なりの汚い奴ならば、人間だろうとなんだろうとレストランから蹴り出され……。
金を持ってビシッとスーツでも着込んでいれば、ゴブリンでも召使いと共に高級ホテルに泊まれる!
それこそが、俺の社会での「平等」だ。
俺の作る平等を否定する人間は、今のところは、必要ない。
……そういう訳なので、「外交」をして、周りを味方につけたりするつもりは、今のところはない。
数年、いや、十年後のことはまた分からないんだが……、わざわざ、既に支配者が居るエリアに進出して、その地の支配者の顔色を伺いながら「ゆっくりと改革してやる」とかやるほど、人と市場に飢えてないのだ。
そんなことするくらいなら、ワルバッド辺境伯領や新大陸の空いている土地をバチコリ開拓して、その辺の山からボコって捕まえた亜人を入植させた方が楽……。
それをやり切ったら、他の領地にも手出しをしようとは思うが、遠い先の話よね。
って言うか、人間いらねえ……。
マジな話、この世界の亜人、普通にそこそこ労働者として使えるんだよね……。
さらっとスルーしてたけど、オークなんて自分の種族で製鉄までできるんだぞ?そんなもんほぼ人間だよ。
バカだと下等だと散々言っているゴブリンだって、魔法使いがたまにいたり、火を使って料理をしたりくらいはする。少なくとも、猿よりはよっぽど賢い。
確かに、文字や言語など、ちょいちょい困る部分はあるが、それでも、製鉄したり料理したりできるような種族は、知的レベルは人間と一緒です。
むしろ、ボコったらハイハイ言うこと聞くだけ、人間より使いやすいまであるな……。
実は、今でもまだ、山とか川とかその辺の未開拓領域から、色々な亜人が集まっているんだよ。
最近港町に集まってきたので雇用したマーメイド!オルカン!シャーカン!ドルフィニアン!
東の国からやってきたオーガ!フーレン!ヨウコ!ネコマタ!
蒸留酒の噂を聞きつけて現れたサテュロス!ベアーマン!ミノタウルス!ジャイアント!
ワルバッド辺境伯領はもうめちゃくちゃ。
だが、めちゃくちゃな状態でありながらも、バランスは取れている……。
結局のところ、差別を好んでやる人間とかいうアホ種族が多くないのが一番のアドだよ。
亜人、人間共が魔族と呼ぶ奴らは、人種ではなく個人で他者を認識するからな。
統治する上でめんどくせーのは、確実に人間の方。
しかし、人間は何をやらせても逞しく生きているという点ではアドだし、痛し痒しか。
とにかく、今俺は、愚弟に外交官の何たるか?を教えていた。
いや、教えさせていた。
ウチの官僚共にな。
「どうだ、愚弟?」
「おっ、兄さんやん」
そんな弟は、ウチの書類をめくりながら、青い顔をしている官僚共を精神的に追い詰めていた。
「何やってんだよ……?」
「いやほら……、こいつら不正やっとるで」
んー……?
おっ、なるほど。
「こりゃ上手いな!鉄道を敷く予定地の情報を親族に流して、その付近の土地を買わせてんのか!インサイダーじゃん、良いねえ!」
「えー?ええのん?」
「良いんだって、上手く不正やったらウチだとセーフ扱いなんだよ!おい、これやったの誰だ?」
「は、はい……」
中年のおじさん財務官僚が出てくる。
「お前、今日付で昇進な。今後は課長で」
「えっ?!!?!あ、え、あ、ありがとうございます……?」
そんで……。
「次に、このカラ発注やってキックバック貰ったのは?」
次、三十代くらいの女が出てくる。
「は、はい!私です!」
「うん、お前は強制労働刑な。クソつまらん不正してんじゃねえよスベタが」
「そ、そんな?!どうして?!」
「巧妙でもなければ、ウチの金を吸うだけで利益を齎さないカスみたいな不正をやったからだが?おい、メイド兵共、こいつを捕えろ。強制労働の呪印を五年分だ」
「い、いやあああ!!!強制労働はいやあああ!!!!」
付近にいるメイド兵……ああ、屋敷の中にいるのは衛兵じゃなくて基本的には女兵士で、俺のお手つきなんだよ。美形の男もいるが。とにかく、兵士らしい格好をした兵士は置いてない。景観を損ねるので。
そんなメイド兵に両腕を掴まれて引き摺られていく、バカ女を他所目に……。
「あとこの、カスみたいな中抜きと……、公的施設の建設費からの着服もカスだな。強制労働十年をプレゼントしちゃう♡それとこいつは〜……」
と、ウキウキ抜き打ちチェックをした。
「は、ははは……、兄さん、ほんまに怖いなぁ。不正やってる奴を昇進させるん?」
「違うな。俺は有能な奴を昇進させているんだ。善悪はどうでもいい」
「でも、見逃した不正やった奴が、悪いことやったらどないするん?」
「それは、俺に不利益を出すってことか?それなら、どんな奴でも罰を与える。……お前もだぞ、弟。お得意のウソを俺に吐くのは自由だが、無能なら切るからな。じゃ、頑張ってね♡」
「ハ……!ほんまに、怖いわぁ……」
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