チュートリアルでやられる悪役領主になったんですが、権力を手放したくないので強くなって主人公を迎え撃ちます

飴と無知@ハードオン

第1話 メインストーリー第1話:帝国の落日……のちょっと前の話

インペリオル帝国。


この西方大陸に名だたる巨大な帝国は、現在、いくつかに分裂しつつあった。


大きく育ち過ぎた巨木は、末端や枝葉が腐り、ついに根までもが裂け始めたのだ。


数ヶ月前の先帝の急な崩御も、混乱を後押しした。後継者の指名がないままに先代の皇帝が病に倒れたため、今の玉座には誰もいない。


それだけでなく、インペリオル帝国の危機を聞きつけた東の馬賊達の攻撃は激しさを増し……、帝国の締め付けがなくなったことで、邪教の跋扈や小国の反乱が相次いでいる……。


しかしそれでも、帝国貴族達は民に重税を課して放蕩の限りを尽くし、宮廷では権力争いという名の足の引っ張り合いを続けている……。


……この物語は、混乱の西方世界に現れた、一人の英雄の物語である。


———『アストレア・オデッセイ』———




そして俺は、悪役貴族のジャーク・ワルバッド辺境伯だ。


今は、王都から来た査問官を捕まえて拷問している。


「ぎゃあああああ!!!」


「バカだなー、お前。そんな旗色を明確にしてたら、こうされちゃうなんて分かりそうなもんだろ?知略のステータス高いんだろオイよぉ?」


「き、さま、殺す、殺す……!我がノーリッジ家の名にかけて」


「生意気だな、気に入った♡……ドク!電圧を上げろッ!」


俺は、拷問の助手を務めるドク……ドクター・サイエンに拷問器具の拷問パワーを高める指示を出した。


「かしこまり!」


ガンギマリスマイルのドクは、バイキンマンの城にあるようなクソデカい電圧レバーをガコンと下げる。すると、オモシロ拷問マシーンから「これ死ぬんじゃねえの?」みたいな電気が放出され、査問官殿の全身を焼いた。


「うぐああああああ?!!?!?!!!」


「なぁにがじっちゃんの名にかけて!だぁ、この猿ゥ!無能に仕えている奴はこれだから困る、バカが信奉する奴もやっぱりバカなんだよネ♡束ねる王子の程度も知れるな」


「バ、バカ、バカだと?!貴様ぁ、第一王子を愚弄するかーーーッ!!!」


「ああ、バカだね!それを言えば、うちのカジノで小遣い溶かして嫁さんに怒鳴られていた先帝の方がよっぽど賢いわ!」


「な、なにを!あの無能な先帝のせいで、今の世の乱れが……!」


「かもな。けど、今よりマシだろ」


「……変えなければ、変えなければならないのだッ!暴虐の『第二王子』ではなく!貴族の操り人形の『第三王子』でもなく!ましてや、『反乱軍』共でもなくッ!正統なる血脈の賢者であらせられる『第一王子』殿下が!!!」


「だから、バカってんだよ。何でうちに来た?中央とは距離を置き、先帝に一番多くの献金をしていた、うちにだ。明らかな虎の尾だろうが」


「貴様こそ、旗色を明確にしろ!今は最早乱世!ワルバッド領程の勢力が何もしていないのは、『害悪』だッ!!!」


んー。


「だーから、アホだってんだ。虎穴に入ろうとしておケツに入ってんだもんよ」


「……は?」


「要するに、『お前金持ってんだろ、ジャンプしてみろよ!』ってんだろ?お前さ、そんなのに従うバカが……いや、バカ以下がこの世にいると思ってんの?」


「き、貴様は無能な先帝に献金を」


「だぁから!分かってねえな!俺ァ、あのバカ殿様が好きだったのよ!あのバカが王様やっていると好き勝手できて助かるからな!理由もなく、中央に擦り寄るためだけに、金だけ持ってる辺境の新興貴族が媚びてきている!とでも思ってたのか?そんな価値がお前らチンカス共にあるとでも?」


「それは」


「あー結構!思っているから、兵隊連れて『金出せ!』って言いに来たんだもんな!結構!結構なことだ!」


「ぐ……!ど、どの道、私を殺した時点で、貴様は終わりだ!あの世から貴様の死に様を……」


「は?いや、殺さないけど」


「え?」


「バカだな、本当に。人命ほど貴重な資源はねえんだぞ?お前はこれから、鉱山とマグロ漁と蟹工船と石油採掘と砂糖プランテーションの為に国外に送り込み、死んだらバラして臓器ドナーにするんだよ。殺すわきゃねえだろがい、人間なんて全身使い所だらけなのに。命がも"っだいだい!!!」


「は……?い、いや、だから、私を殺したら、軍が……」


「ドク!」


「かしこまり!」


ドクター・サイエンが連れてきたのは……、クローン人間。『スワンプマン』だ。


こいつと同じ顔、同じ声、同じ体格の人型実体だな。


「な、んだ、そいつ、は……?!!!」


「こいつ?こいつはノーリッジ子爵だ。来週までにはそうなる予定でね」


「あ、ああ、あ……!」


「さて、『元』ノーリッジ子爵さんよ。お前の知識を全部、この『新』ノーリッジ子爵に教えてやってくれ!ああ、喋らなくてもいいぞ、ドクが脳味噌から知識を抽出するオモシロ魔道具を最近作ったらしくてな!」


「いやだあああああああ!!!!!!」


悲鳴をあげるノーリッジ子爵は、ニッコニコのドクが回収していった。何をされるのかは分からないが、まあ、愉快なことになるのは確かだろう。ああ、失礼、「俺にとっては」愉快なこと、だ。ノーリッジ子爵にとってどうなのか?ってのは知らん。


で……。


「主人殿〜!見てくだされ〜!首が一杯取れたでござるよ〜!」


と、部下のカナちゃんこと、カナタ・ツルギベちゃんが、首をたくさん抱えてきた。


「おー偉いな!いっぱいぶっ殺したな!できれば奴隷にしたかったんだが、カナちゃんは殺す方が好きだもんねえ?」


「そうでござるよ〜!」


「ん〜〜〜!可愛いから許しちゃう!カナちゃん、死体は持ってきたかなあ?」


「女のもも肉を持ってきたでござる!」


「おー偉い!じゃあ刺身にしてやるよ!後で一緒に食おうな♡」


「やったでござる〜!」


あ、カナちゃんは普通に、こう、食人鬼(グール)だから、人肉を食うぞ。


俺も人肉を食う。邪悪パワー高まって強くなれるので。


もちろん、文化的なサムライグール女子なので、ちゃんと人肉は調理して、米と一緒に食べるのがカナちゃん流だからな。生肉ガブガブとかはしません!かわいいね♡


……うおっ、血生臭え!さては食ったな、生肉!……そのくっせぇ口でぺろぺろと首筋を舐めてくるバカ女と、同時に現れたお付きのメイドから話を聞く。


お付きのメイドであり、お突きのメイドであり、お手付きのメイドであるメイド、メイ・ハースキーからだ。


「ご主人様、人と話す時くらいは、女性を侍らずのはおやめになった方がよろしいですよ」


「おう、どうしたメイ?愛してるよ♡パンツ見せろ(豹変)」


「はい、最低のご主人様。……これでよろしいですか?」


「くぅ〜〜〜!無表情クールメイドのたくし上げパンチラたまんねェ〜〜〜!!!白レースエロスギィ!!!で、報告は?」


「はい、それが」


「待て、パンツはそのままだ。誰がスカートを下ろして良いっつったよ?」


「了解しました、下衆なご主人様。パンツをお見せしたまま報告いたします。……ノーリッジ子爵の兵隊ですが、ツルギベ特務曹長の特攻により散り散りになったところを、デストラン将軍の伏兵に包囲されて全員を捕縛しました」


「伝令は?」


「山に逃げ込んだので、オーク族が捕えたとのことです」


「大変結構だな。善良なオークの市民共には礼として酒を渡してやれ、いつもの安物(ストゼロ)をな」


「捕えた伝令の処理はいかがなさいますか?」


「伝令もドクに引き渡して、スワンプマンを作ってもらう。多分あっちも、伝令とノーリッジ子爵とのダブルチェックをするつもりだろうしな」


「その件ですが、他の領地に派遣したスワンプマン達の管理が限界になりつつあるとの報告が諜報部から来ておりますが」


「バカめと言ってやれ。……全員を管理する必要はねえよ、スワンプマン共は『本物』と同様に職務を遂行させておいて、肝心なところで行動を起こさせりゃあいいんだ。普段から不自然にウチの味方をやらせる必要はない」


「了解しました、仕事はできるご主人様」


そうやって、メイドの報告を受けていると……、ゾロゾロと部下兼愛人共が現れる。


東で指名手配になって逃げてきた、淫祠邪教の教主にして邪仙、レンヨウ。


東の馬賊から貰ったハーフリングのお姫様、モーコギン・ミニット。


不可触民の「沼の民」かつ、種族レベルで嫌われている「ダークエルフ」かつ、禁術の「死霊術」を使うトリプル指名手配者であるクルエル・マニアク・ルナテク。


オーク族最強の戦士、ザンガンデリンス。


孤児上がりの魔法少女、マホカ・グロウワンド。


千年生きたリッチの魔女のワイズ・グリムロッドに……、将軍のデストラン・キルグライン。


ああ、もう夜か。


「ご主人様ぁ♡今日の夜伽は誰にするぅ?」


レンヨウが囁いてくる。


「全員だ!ヤればヤるほど、淫蕩の邪悪な魔力が蓄積されて、俺のリソースが溜まっていくんだからな!カルトマジック様々だぜぇー!!!!」




愛人共に腰を打ちつけながら、俺は考える。


悪役貴族に転生したのに、他人に頭を下げて暮らす?多くは望まない?原作からフェードアウト?


そんなもんクソだ、クソ!


悪役貴族になれたんだから、女とヤりまくって、美味いもん食って、下民共から富を搾り取って優雅に暮らす!


これを楽しまないなんて、頭がおかしいぜ!!!!


……にしても、そろそろ原作が始まるのかね?


本来ならここで、名ばかり辺境伯であるジャーク・ワルバッドは、中央からの覚えを良くする為にと第一王子派閥の言うことをハイハイと聞いて……、この辺境の地で、『反乱軍』の弾圧を始める。


そして、反乱軍にいる「真の第一王子」である、「ご落胤王子」の……、アーサー・カイザリオンが。『主人公』サマが華麗に、無能な雑魚貴族であるジャーク・ワルバッドを倒す!と。


で、ジャーク・ワルバッドの苛政でダメになっている辺境を立て直しながら、この辺境を反乱軍の本拠地とする訳だ。


が……、どうだ?


俺は、万全の体制を整えたぞ?


本来は敵であるはずの馬賊と同盟を結び、野蛮なオーク族の友となり、異教徒異端者人外亜人奇人変人を集めて束ねて力とし……、領地にはクソデカカジノと繁華街、遊園地をブッ立てて稼ぎまくっている。最近じゃ、国外の開拓も勝手にやって、南の島に砂糖プランテーションを作っているほどだ。


部下も多い。


本来だったら、本編開始前に死んでいる凄腕。本編に関わらないはずの外伝キャラ、DLCキャラに、味方にならない悪役キャラ。全部を従えて、無敵の布陣を作ってある。


あぁ、主人公サマよ。


ヤりてえんならかかってこいよ!突っ込んできたチンポを噛みちぎってやるぜェ!!!はははははは!!!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る