第37話 能美高校体育祭 3
「おっとー!?速い速い!白組1年生!抜群の安定感だ~!そしてぇ、そのまま、ゴール!」
1位でゴールテープを切った僕は、ボールとスプーンを手に握ったまま、白組観戦席へ向かってガッツポーズ。
それを受けて、白組の旗が振られ、歓声が上がる。
「良いぞ1年!良くやった!」
「いやすげぇ!なんかキモイくらいだった!」
「スプーンに接着剤でも付けてるのかよ!」
「走り方も正直なんか変だったし!」
「後、頑張ったけど結局個人だからそこまでポイントには関係ないからなー!」
「でも勢いは出た!他の白組も負けんなよー!!!」
ちょっと褒めてるかどうか微妙な言葉もあるけれど、白組としては大盛り上がりだ。
僕がこの、スプーン走に参加する前の競技についても、2学年の先輩たちが大いに張り切り紅組を下していた。
そのおかげもあってか、応援にも熱が入り、今の白組はチームが一つになっているような感覚さえある。
一通りパフォーマンスが終わったので、スプーンとボールを返却すると、すぐさま道具を戻さなかったことを、運営の先輩にちょっと怒られてしまった、反省。
「やるじゃん、湊くん」
「ありがと、志原田さん。志原田さんも速かったね」
個人競技であるので、順位による得点換算を行うために、1位の待機場所がある。
そこに進むと、既に走り終わった志原田さんからねぎらいの言葉。
彼女もまた、1位を取っている。
「いやー湊くんには負けるね。というか何、あのバランス感覚」
「ふっふっふっ。昔からああいう倒れないように安定させるのすごい得意なんだよね、僕」
スプーン走は、よくあるスプーン状の道具の頭の部分に、それより少し大きいボールを乗せて、落とさないように走りきる競技だ。
落とさないようにすること、それとスピードを競うわけだけれど、僕はこの手の動作が得意なのだ。
ホウキを手の上に乗せて、倒れないようにする遊びとか多分30分くらいは余裕だと思う。
そんなわけで、僕は一切姿勢を変えることなく、軽やかに走り切ってゴールしたわけである。
徒競走では、同時に走ったグループの中でドべを回避するので手一杯だったけれど、今回は余裕の一着だ。
今日の体育祭にはなかったけれど、リム転とかも超得意なのだ、僕。
一度も棒から輪っかを外すことなく、走り切れる。
ふ、中学時代アンカーを務めたことを思い出すな。
あの時は友人にこう言われたものだ。
『うむ。お前を推薦してやはり正解だったな。あれこれ言うやつもいるが、実力で相手を黙らせるのも大事だぞ。いつも言葉で何とかすればよいということではないということだな!』
ふ、見事にやり遂げたぜ、お前にも見てもらいたいな。
「うーん、下半身強化はそこそこで良いのかな~」
「いや、触ろうとするのやめて!?」
そんな風に思い出を振り返っていると、志原田さんが僕の太ももに触れようとする。
志原田さんてば、筋肉確認とかで偶に触ってこようとするのだ。
「人前だからね、今」
「え~、じゃあ二人きりの時ならいーんだ」
「いつでも駄目だからね!?」
「ぶー。しっかり鍛える前に、も一回くらい柔らかお腹触っておきたいのになぁ」
「それは一番恥ずかしいから止めてよね!」
「はーい」
志原田さん、隙を見せると僕のお腹の肉をつまもうとしてくるのである。
いや、恥ずかしいしやめてほしい、切実に。
志原田さんとしては、後に失われてしまう感触だから味わっておきたいのと、これを鍛えなければという決意のために必要とか言い張ってくるのだ。
いや、意味が分からないからね。
僕の自尊心的にも勘弁してもらいたいところだ。
何より、美少女相手でも同性にべたべた触られるのはちょっとね。
手を合わせたりするのなら全然良いんだけどさ。
志原田さんと盛り上がりながら、わちゃわちゃとやり取りをしていたら、「待機場所ではお静かに」と注意を受けてしまった。
勝ったのがうれしくてテンション上がりすぎですね、すみません。
そして、スプーン走最後のグループが走り終えて、協議終了。
各順位ごとに点数へ変換、採点した結果……見事に白組、大・勝・利!
「お疲れ様です。湊君。お見事でしたね」
「よくやった、後輩!」
「お前のおかげだけじゃないからなー。調子乗るなよー!」
「まーでも、面白かったからいいだろ、な?」
「私、もう一回彼の走りを見たら笑っちゃうかも」
「確かに、ま、でも湊、だっけ?ナイスだったぜ!」
観戦席へと戻ると、迎える糸美川さんだけでなく、先輩たちも囃し立てながらも称賛してくれた。
「それじゃあこの後も、気合い入れていきましょう!」
僕が声を上げると、先輩たちから「調子乗りすぎだ」と窘められてしまったけど、チームメイトたちの士気はバッチリだった。
最終的に、午前の競技にて、白組は赤組をやや上回ることとなったのだ。
やったぜ、いぇい!
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