ロリババア激怒。スライム倒して1900年、一向に強くならんのじゃが
茶電子素
第1話 誰も騙してない(ババアが勝手に思い込んでただけ)
わしはハイエルフのロリババアじゃ。
見た目は12歳、でも心は2000歳……いや、正確には1900歳ちょっとじゃ。
幼き頃に読んだ書物の影響で、
長いことスライムを倒し続けてきたが、どういうわけか一向に強くならん。
朝起きて、村を出て、スライムを1匹倒す。
昼飯を食って、もう1匹倒す。夜は寝る前にもう1匹倒す。
これを1900年……いや、数えきれんほど繰り返してきた。
結果?筋肉も隆起しないし、レベルも1のまま。おかしいじゃろ。
普通なら「スライムを倒すと経験値が入る」っていうのが定番じゃろうに。
わしの場合、経験値ゼロ。ゼロのまま1900年……。
しかも最近、テレビで見たんじゃ。
「ハイエルフ女性の平均寿命は2000歳」って。
いやいや、あと100年て。わしにとっては意外と切羽詰まった年数じゃ。
このままじゃ「スライムを倒し続けただけのロリババア」として終わってしまう。
そんな人生――いや、そんなババア生――認めてたまるか!
今日も今日とて広場で若者たちが笑っておる。
「おばあちゃん、まだスライム狩りしてるの?」
「もういい加減、別のモンスターに挑戦したら?」
「ていうか、なんで強くならないんですか?」
わしは思わず怒鳴り返す。
「わしが知りたいわ!」
若者たちはくすくす笑いながら去っていった。
くそ、あやつらは3日でレベル10になっとるというのに。
わしは1900年でレベル1……どういう理不尽じゃ。
そこでわしは決意した。今日こそ真相を突き止める!と。
まずはスライムをじっくり観察してみる。
ぷるぷるゼリー状の透明な体。攻撃力はほぼゼロ。
わしが指でつつくだけで倒せる。
「ふむ……」
倒した瞬間、「ぷしゅっ」と音を立てて消える。
残るのは水たまりだけ。経験値は……やはりゼロじゃ。
これを1900年繰り返し続けたと思うと、気が遠くなって涙が出るわ。
次に村の図書館へ行った。
古文書をひっくり返す。 「スライムは経験値を与えない」
――そんな記述もあった。
なぜ誰も教えてくれんかったんじゃ……
本を閉じて、机を叩いた。
「調べなかったわしもわしじゃが、つまり1900年も無駄にしたということか!」
図書館の司書が静かに言った。
「でも健康には良かったんじゃないですか?」
確かに適度な運動……病気一つせんかった。
肌もつやつや。唇もプルプル。見た目は12歳から変化なし。
だが、それは求めておらんのじゃ。わしは強くなりたかったんじゃ。
怒りに任せて村の外へ飛び出し獲物を探す。
ゴブリンでもオークでもドラゴンでもいい。とにかく経験値をくれ!
すると、森の奥から声がした。
「おい、ロリババア。心の声がうるさくてかなわん」
振り返ると、金色に輝くスライムが喋りかけてきおった。
「な、なんじゃお前」
「まあ聞け。我らスライムは、経験値を与えない契約を結んでおるんじゃ」
「契約?」
「そう。我らが祖である原初のスライムが『経験値ゼロでお願いします』って神様に申請したんじゃ」
「そんな馬鹿な……」
「馬鹿じゃない。そのおかげで我らは弱いなりに生きていけるんじゃ。経験値目当てでは殺されんからな」
スライムは誇らしげにぷるぷる震えた。
わしは叫んだ。
「じゃあ、どうすれば強くなれるんじゃ!」
「簡単じゃ。スライム以外を倒せばいい」
(やられた……完全に、あのなろう系小説に騙された)
わしは膝から崩れ落ちた。
人生の殆どを費やして、ただの透明ゼリーを相手にしてきたとは……
ゴブリン1匹倒せば済む話だったのに。
その瞬間、森からゴブリンが飛び出してきた。
「ぎゃはは!小娘、食ってやる!」
わしは震える手で杖を構えた。初めての本格的な戦闘で心臓が跳ねる。
ゴブリンが棍棒を振り下ろす。
必死に避けたが、さすがにスライムとは違う。速いし、重いし、怖い。
だが、わしは叫んだ。
「1900年分の怒りを受け取るがええ!」
杖を振り下ろす。ゴブリンの頭に直撃。ぐしゃり。
「怒りって、僕初対面なんdeathけど……」
ゴブリンは倒れた。
その瞬間、体が光って力がみなぎった……レベルアップ!?
わしは熱き涙を流した。
「やっと……やっと極めた……」
村に戻ると、若者たちが驚いた顔でわしを見た。
「おばあちゃん、レベル2になってる!」
「すごい!」
全然極めてなかったが、わしは胸を張った。
「当然じゃ。お前らが生まれるずっと前から、準備してきたんじゃからな」
若者たちは拍手した。
だが、わしは心の中で戦慄いた ――あと100年しかない。
レベル2からどこまで行けるか、どこまで強くなれるか。
(まあ、死ぬ気で100年やれば天辺獲れるじゃろ)
その夜、布団に入って考えた。
1900年にも及んだ無駄は、確かに痛い。だが、これからの100年は無駄にせん。
ゴブリン、オーク、ドラゴン、魔王、勇者……全部倒してやる。
スライム?もう相手にせん。小説は小説じゃ。
目を閉じれば心臓が高鳴り、明日から始まる新しい冒険に胸が躍る。
――翌朝、案の定寝坊した。
腹ごしらえした後、
一晩寝て冷静になってしまった心を奮い立たせると村の広場で宣言をした。
「わしは今日から、スライム以外を倒す!」
若者たちは笑った。
「やっと気づいたんですね!」
「ババアうける!」
わしは怒鳴った。
「黙れ!いくら遅かろうとも、始まりはいつだって、今この瞬間じゃ!」
村人たちは笑いながらも、わしを応援してくれた。
こうして、ロリババアの新しい冒険は始まった。
1900年のスライム狩りは、ただの前説。プロローグ。
これからの100年こそ、本編に違いない。
杖を握りしめると、森へ向かった――そう。強くなるために!
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