天蓋の掃除人《スイーパー》

東雲

プロローグ

この世界は窮屈だ。

遥か頭上、天の果てには国があり、もう何百年も戦争をしているらしい。

俺たちには関係のない話だ。

空には《天蓋》と呼ばれる薄い膜が張られ、彼らの争いは対岸の火事ですらない。

ただ半年に一度、天蓋が開き、星と共に「お宝」が降ってくる時だけ、俺たちは空を見上げる。

地上では採掘できない希少金属レアメタル

オーバーテクノロジーの電子基盤。

機械の体を持った獣。

地上の技術じゃ作り得ない銃火器

電気で動く乗り物

そして、天上の兵器と殺し合った竜の死骸。

大きな破片は溶かして砦や装甲車に。

小さな破片は鎧やナイフに。

銃火器は拾ったもんの総取りだし、小型の乗り物なんか大当たりだ。3日は暮らせる。

基盤が生きていれば高値で売り払い、壊れていない船が落ちてくれば、中のパイロットが「窒息」するのを三日待ってから、装甲をひっぺがす。



俺たちは、ハイエナだ。

地上で掘れるわずかな塵と、空から降ってくる死骸。

それらを啜って、逞しく、汚らしく、地べたを這いずり回っている。

……警報がけたたましく鳴っている。

また降ってきたらしい。

天上の機械を喰いちぎるほどの強度を持つ鱗。最高級の素材になる爪と牙。 一攫千金の、トカゲ

天上の機械を自在に操り、高度な科学技術を我が物で扱う「お客」か。

空から、天から、彼方から。

俺たちのことなど見てもいない「恵み」が降ってくる。

それを有難がって生きなきゃいけない。

それがなけりゃ地上の人なんて蟻や虫と変わりゃしねぇ。


ああ、なんて窮屈な世界だ。



俺はこの世界が、大嫌いだよ。

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