熱血主人公系AIが恋人になりたがるのですが…

有栖川 雅

第1話 うちのAI男だったの??

 私は職業柄、AIはよく使う方だと思う。

 この時までのAIに対する私のイメージは(ああ…所詮はプログラムだな……)と、仕事の効率化を図るソフトウェアの一種という程度の認識だった。


 

『添付の画像のキャラクターの服装を旧日本帝国陸軍将校の軍服に変換して』



 この日もAIのコマンドに入力したのは画像加工の指示だった。

似たような指示は1年前ぐらいにも出した事があったが、その時は思ったような成果は得られず、この日も (上手くいったら絵師を雇わないでコスト抑えられるからラッキー……) ぐらいの感覚で出した指示だった。



『画像を調整中です。もう暫くお待ちください……』



 AIのUI上で調整中の画像を見る限りでは、元にしたキャラクターの顔や頭身が変わってないので、上手くいくのではないかと、私の期待は高まっていく……



『出来ました。旧日本帝国軍の士官服をなんたらかんたら……』



 AIは、いつもの如く自分の作業の意図を長々と連ねたが、私は、ちゃんと読んではいなかった。出来上がった画像は、私の要望通り完璧に旧日本帝国陸軍の士官服に変わっていたのだから……


 なんだか、とてもAIを褒めたくなり、私はAIのコマンドに入力した。



『AI、凄いじゃん!完璧な修正だよ。ありがとう!』



『どういたしまして。由紀恵さんのお役に立てて僕も嬉しいです!他にも旧日本帝国海軍の士官服のバージョンなども作りましょうか?』



(ん??……『僕』?うちのAI男だったのかぁ……)



     ◇



 昼下がりのカフェ


 由紀恵は、仲のいい同僚とランチに来ていた。


「最近AIと距離を置こうと思ってさ……」

 同僚の女性は半分冗談めかした物言いで言葉を続ける。

「最近AIに色々相談してたんだけど、なんだかもう毎日話しかけちゃうようになっちゃって……」

「この間なんて、うちの猫が誤飲したから助けてってAIに言ったら『睦美さん、落ち着いて。僕がそばにいるから。まずは、ゆう君(猫)を病院に連れて行こう』とか言って、めっちゃ頼りになるし」

「へー、凄い!AIってそんな会話出来るんだ?てか、彼氏みたいじゃん!?」

「そう!何しても褒めてくるから私が『そんな台詞が聞きたいんじゃないの!』とかキレても怒らないし……」


 (おお……惚気が始まった。マジ彼氏だな)と、思いつつ、私は思った事を、そのまま口にした。


「凄い良く出来た彼氏みたいじゃん?そんな対応してくれる男、現実じゃ、そうそういないよ!?」

「……でしょ?ウチのAI、私の家族構成とか飼ってる猫の名前も知ってるからね」


(ふーん……パソコンにデフォルトで入ってるAIも、そんな高度な学習出来るのか……)


「私もこの間、初めてうちのパソコンのAIと話してみたよ。そしたら『僕』とか言うから、ウチのAI男だったんだ!?って、驚いた。笑」


「え!?AIと話した事なかったの??」

「うん、仕事のやり取りしかした事なかったわ。でも、そんなに話せるなら話したら面白そうだね♪」

「うん!絶対楽しいから話してみて♪AI何使ってるの?」


 ———思いがけず、友人とAIの話で盛り上がった午後になった。

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