星雲に愛されし私たち
深海かや
プロローグ
うっすらと青み始めた空の青さが、世界の始まりを知らせていた。所々にまだ夜が取り残されており、先生は顔をゆがめながらもそれに手を伸ばすように腕を持ち上げた。瞬間、目の前に立つ男に眉間を撃ち抜かれた。脳髄から血飛沫を吹き上げ枯れ葉のようにふらりゆらりと倒れる。これで二十、いや三十回は死んだ。黒いコートを身に纏い、目の落ち窪んだその男は何度先生を殺そうが一切の感情を目に宿してはいなかった。
「ねえ、なんでよ、もう……いやっ」
遠くからそれをみつめていた時、私の正面に立つ由奈が悲痛な声をあげた。けれど、嘆き悲しみながらも目の前に作り出した水流の壁を解くことはない。それが無ければ私も由奈も無数の男たちから向けられている銃弾の雨をまともに受け、糸を断ち切られた木造りの人形のように身体を揺らしながら一瞬で血の沼に沈んでいるだろう。壁は私と由奈と、地面に顔を伏せたまま既に息絶えている翔太を守ってくれていた。奴らの方向から降り注ぐ銃弾は由奈に任せ、一瞬翔太に目をやった。微動だにしてない。鼓動も、体温も、なにも感じない。取り残された夜の暗さだけが翔太のまわりにおちていた。私の血液は既に飲ませている。なのに、生き返らない。もしかしたら適合しなかったのだろうか。なんで。なんでよ、と思いのままに泣き叫びたくなる。
ただ、普通に生きていたい。それだけが私たちの願いだった。なのにそれすらも叶わない。顔を上げ、空を睨みつける。もう随分前から頬を伝っている涙を乱雑に手のひらで拭い、私はこの残酷な世界を呪った。
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