第8話 依頼報告と不穏な空気

「さ、サイモン……。」


「何の用だ?俺達は今から帰る所なんだ。」


 アリスを後ろに移動させ、俺はサイモンと向かい合う。奴も依頼を終わらせたのか?


「今度こそその金を貰うぜ、なあ受付さんよぉ!」


「だ、駄目に決まってるでしょう!?だいたいルールも守らないで……。」


「あ?俺に逆らう気か?この街で一番強いこの俺様に?」


「そ、それは……。」


 受付さんも、他の冒険者達も口を閉じてしまう。ここまで威張れる理由は、強いからか。


「ほら、早速渡してくれよ!」


「そ、そんな事言われても……」


「受付さん、渡す必要は無いよ。サイモン、お前に関係無いだろう?これは俺達の報酬だ。」


 俺は受付さんから報酬を受け取ってアリスに手渡すと、改めて奴を睨みつけた。


「前もそうだが……お前は新人だろう?俺の事をよく分かっていないみたいだなあ。」


「そうだな。」


「俺はここで一番強い。誰であろうと俺には逆らえないんだ。」


「そうか。」


「……さっきから何だその態度は!?誰に向かって口を聞いてやがる!?」


「アンタだよ、サイモン。」


 俺の一言で奴は拳を俺に振りかざす。それをしゃがんで避けた後、カードを抜きながらもう一度睨みつける。


「何っ!?避けた!?」


「強ければ何をしても良いわけじゃない、分かっている筈だ……!」


「うるせぇ!俺をコケにした奴は生かしちゃ帰さねぇ!」


 サイモンが剣を抜いた、狙いは俺だ、真っ直ぐに剣を振る!


「シールドガード!」


「うおっ!?」


 盾の魔法で剣を弾き、もう2枚カードを抜く!奴だけを狙うには……


「テレポート!」


「何、後ろ!?」


 背後を取ってもう1枚!


「ブレイズ!」


「ギャァァァ!?」


 至近距離で攻撃、直撃したサイモンは膝をついた。これで動くのは難しいだろう。


「このガキ!」


「何で俺達に、いやアリスに嫌がらせをするんだ?彼女が何かしたのか?」


「そんな事はお前に関係無い!アリスー!さっさとあの建物を渡せ!」


「い、嫌なのです!あの場所は私達の大切な場所なのです!誰にも渡すつもりは無いのです!」


「クソ、クソがっ!」


「……何であの建物に執着するんだ?」


「チッ、覚えていろ!」


 フラフラと起き上がって建物を出て行くサイモン。あんな奴は放っておこう、今はアリスの方が優先だ。


「アリス、大丈夫か!?」


「へ、平気なのです。サイモンなんて怖くないのです!」


「怪我は無いな、なら良かった。何かあっても安心しろ、俺がいるからな。」


「セージさん……。」


「コホン!」


「「あっ。」」


 ……周りの冒険者と受付さんがこちらを見ている、は、恥ずかしい!










「セージさん、ありがとうございました。私達ではどうにも出来ないので……。」


「あ、ああ。だが何とかしないと、ここに来る冒険者も危険な目に遭う。方法を考えないと。」


「ちょっと難しいですね……ここは小さい街ですし、サイモンさんが強いのは事実です……せめて強い方にまとめ役になってもらえれば。」


「時間がかかりそうだな。俺達でも考えてみよう。」


「お、お願いします!」


 これはこの街全体の問題だ。しかしサイモン、奴はアリスの両親がいなくなってから来た……何かありそうだ。


「皆も手伝って!何とか街の平和を取り戻しましょう!」


「おお!俺も考えるよ!」


「皆の街なんだから、私達も協力するわ!」


 皆となら良い知恵も浮かぶよな。ここは受付さんと他の冒険者達に任せて、俺達は一度帰ろう、今日は疲れた……。



「悪い、今日は遅いから帰るよ。また明日、よろしくお願いします。」


「は、はい!依頼達成、お疲れ様でした!」


「アリス、今日はここで帰ろう。」


「はい!お疲れ様なのです!」


「がうー。」


「アリスさんもお疲れ様!……がうー?誰、ってコボルト!?」


 しまった紹介を忘れていた!


「受付さん、このコボルトは俺達が連れてきたんだ!怪我をしていて、それを俺達が治して、でも心配だから連れて帰って」

「お落ち着いてください!つまりそのコボルトはセージさん達と一緒に行動してるんですね?」


「ああ。……魔物は建物には入れないか?」


「うーん。決まりは特に無いですけど、そういう事は事前に言ってください。トラブルになりますから。」


「すまない……。」


「まあ、話は明日聞かせてください!今日はお疲れ様でした、夜道には気をつけてくださいね!」














 そして俺達は建物を出て真っ直ぐにアリスの家に。


「買い物は明日だな。アリス、何かお勧めはあるか?」


「はい!街のお店でケーキが売っているのです!お祝いに買いに行くのですよ!」


「それは良い。皆でパーティー、楽しそうだな……。」


「どうしたのです?」


「すまないコボルト、紹介するのを忘れてたんだ。明日一緒に来てくれるか?」


「がうー!」


 元気よく声を上げるコボルトを見て少しホッとしたよ。じゃあ、早く帰ろう!


「アリス、今日もありがとう!」


「こちらこそありがとうなのです、セージさん!」


「がうー。」

















 ◇◇◇



「クソッ、クソッ、クソッ!あのガキ、どうやって始末してやろうか!」


「おや、お困りの様ですね。」


「あ?誰だ!?」


「さあ、今はどうでも良いでしょう?それより、何かお困りの様子。話を聞かせてくれませんか?」


「何だと?」


「ええ。貴方はあの建物にご執心のご様子。きっとお役に立てると思いますけど……。」


 バサッ。


「…………ヘヘっ。こりゃあ良い。こっちに来いよ、教えてやる。俺様の狙いをな!」


「お手柔らかにお願いしますね……。」



 ギィー、バタン。






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