第1話
「歴史研究同好会!ぜひ来てください!名刀の模造品も展示してます!興味がある人はぜひ見てってくださーい!」
「歴史研究同好会、略してレキ会ですう…何卒…。」
「会長まずいです。私含め二人しか入ってませんよ。」
「やばいよおお…」
「やばいよおおじゃないですよ!新入生の私に勧誘やらせてどうすんのっ!なんとかしないと他の部にみんな持ってかれますよ!」
「入って早速勧誘やりたいっていったの三矢さんじゃん…」
都立都高校歴史研究同好会、略してレキ会に閑古鳥が鳴いているのは新入生歓迎会。
「ミヤ高歴史研究同好会でえええす!楽しいですよおおおお!」
「レキ会見てってくださあい…。」
自信なさげに小さくなる会長常吉燈火の横で声を張り上げる頼もしい一年生は先日入会したばかりの三矢蒼子。
顎上まで短く切ったボブはまさに大正時代のモダンガール。
実際に大正時代に生まれても間違いなく本物のモダンガールになって、新時代を拓く女性たちの先陣を切っていたに違いない。
「三矢さんやっぱ俺勧誘向いてない…どうにかしてくれ。」
「情けないですよ先輩。そんなあられもない悲嘆をあげたところで会員は来ません。3人以上新入会員来ないとどうなりますか。」
「規約を満たせないで瓦解。」
「その通り。会長なんですからしっかりしてください!」
「三矢さんが会長でも無いのにしっかりしすぎなんだよ、ほんとに新入生?」
「つい最近まで中学生でした。先輩よりぴちぴちですよ。」
「ぴちぴちじゃなくて悪かったな。」
「み、三矢ちゃん?」
「静華!」
三矢の友人らしき人が現れる。ひどく怪訝な顔をしているが入学直後の友人が勧誘なんてしてたら驚くのなんて至極真っ当の反応だ。
「なんで勧誘を…」
静華と呼ばれた女の子は呆れて笑う。
「会長が手伝ってって。」
「あ、おいそれは無いだろ。」
「嘘嘘、私がやりたいって言ってやらせてもらってる。」
「へぇ…。三矢ちゃんらしい。」
「あ、静華!静華はレキ会入らん?平安好きだったよねえ!」
早速意気揚々とビラを渡す蒼子。
「レキ会かあ。さっき紹介見たら結構楽しそうだったしなあ。そうだねえ、考えてみるね。」
静華は姫カットの黒髪を揺らしながら走っていった。
「見た先輩?私の人脈で会員獲得。」
「まだわかんないよ。」
「可愛いですよねあの子。中学からの同級生なんです。」
「なんか髪型も、姫カットっていうのか?それも相まって紫式部みたいだったな。」
「そうそう。見た目通り詩的な子ですよ。キャラ的には清少納言に近いかも。」
「快活って感じか。」
「無邪気で明るくて、みんなに好かれる子ですよ。」
「入ってくれると良いな。」
「ですね。」
静華は1日目の歓迎会が終わる間近に入会届を持って2人のところに駆け込んできた。
感激して大喜びする蒼子。少し引いている静華の手をブンブンと振り回す。
大袈裟だと笑いつつまた安堵しつつ、レキ会が久しぶりに笑い声で賑わったのを見て燈火は嬉しかった。
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