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テンプレートをなぞっただけのものを、彼奴は忌み嫌う。だから投げるものが変化球が多い。しかし何かしら惹き付けられるものがあると、さも興味無なさそうに垂れ流しにする事もある。

今もその様な場合だった。テンプレートをなぞったアニメを、欠伸を噛み殺しながら淡々と垂れ流す。気に入ったのはキャラデザか、はたまた思考か、其れは俺には分からない。

しかしある時、笑いを必死になって抑える様に、吐息を漏らした。

「んふっ……」

ちらりとテレビに目を向ける。なんてことは無い。スタメンが集まって、話し合いをしているところであった。よくある光景故に、俺は興味を削がれる。

しかし鏡花は何を気に入ったのか、物音を立てながら、前と同じ場面を再生していた。

「それ」

「んー?」

「お前の好みか?」

すると僅かに瞳が揺れる。なんて言葉を丸めようか気にかけているようだった。『面白くない』と言えば今の行動に矛盾があり、『面白い』と言えば癪に障る。そんな状態。此奴の心のジレンマが言葉を阻害している様に思える。

しかし数秒後、漸く整理が着いたのか、口を開いた。

「好きなんだよね〜。こういうの。男性一人に対して女子を多く囲んで、ハーレム作るんじゃなくて、男女半々主人公を『まぁいいんじゃない?』って慕ってるの。

まぁそれだけならありふれてるのだけど、今回はそこじゃない。ほら、ここの場面、もっとよく見て?」

そう、また画面を巻き戻して再生させる。話し合いかと思われていた場面は、そこまで重たく深いものではなく、もっと簡単なもの。『部屋が取れないがどうするか』というものだった。

主人公と思しき少年は酷く戸惑って周りの仲間に確認を取っている。しかしその中の一人がぶっきらぼうにこう言った。『いいじゃん。皆で同じ部屋泊まれば』と。

「こーゆーの好きなんだよねぇ。男主人公を恋愛感情抜きで家族のように慕ってる場面。この子、キャラデザが好きで何となく見てたんだけど、結構ツンデレなのね。気位が高いって言うか。そう言う子が『いいじゃん。皆で同じ部屋に泊まれば』って言うの、相当気を許してないと言わないんだよ。だから『へぇ可愛いじゃん』って思っただけ」

そう言いながら此方を一瞥する。なにか声を掛けて欲しそうにしていたので、俺も返事をする。

「俺は別の宿屋探すが」

「空気読めねぇなぁ!! このデカ猫!!」

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