盗賊団
王都に向かう途中、太陽が空から消える前にジルさんたちは下の更地を見つけ、私たちはそこに泊まることになった。
私とカイテルさんがドラゴンちゃんから降り、リオとリアの荷箱を下ろす。私がリオとリアを荷箱から出したら、この子たちはすぐストレッチを始めた。荷箱が大きいけれど、この子たちも大きいから、窮屈だったんだろうね。
「リオ、リア、明日王都に着くから、もう少し我慢してね」
『ぐるぅぅぅぅぅ』(わかっテルワヨ)とリアが答えた。いい子だね。
休憩中、火を熾してトレストで買ったご飯を食べていると、リオとリアが『ごろぉぉぉぉ~~~~!』(おろかニンゲンメっ!)といきなりそう唸り始めた。
どうしたの?と聞こうとしたら、後ろから叫び声が聞こえ、なんと十数人の盗賊団が国の騎士がいるところに襲ってきたのだ。
「動くな!ドラゴンをもらうぞ!死にたくないなら;:*//?!~%&$#"*-//"#$%」とかなんとか盗賊団は叫んでいた。
この人たちはドラゴンちゃんが欲しいみたいだけれど、万が一お兄さんたちを倒したとしても、ドラゴンちゃんがこの人たちの言うことを聞くの?聞かないんじゃないの?この人たちは何を考えているの?そもそもあなたたちが今挑んでくる相手は国の騎士だよ?ドラゴンちゃんの前に国の騎士のことを心配してよ?盗賊団って命知らずな人たちなの?
お兄さんたちはすぐ盗賊と交戦し始めた。お兄さんたちが一人で数人の盗賊団員を相手に容赦なく、一人ずつ、二人ずつ倒していく。
お兄さんたちがさすが王都の騎士だな〜、カッコいい〜、と私は感心してお兄さんたちの戦いを観戦していると、四人の盗賊団員が私を襲ってくる。
どうやらこの四人の盗賊団員が私にお兄さんたちの戦いの観戦をさせてくれないみたい。ケチ・・・・・・。
「リーマ!」
カイテルさんは私の名前を叫び、駆けつけようとしたが別の盗賊団員に邪魔されて私のところまで来れない。
でも大丈夫だよ、カイテルさん!私は自分のことを自分で守れるすごくすごい女だよ!
この四人の盗賊団員は私が弱いのだと思っているらしく、剣をちゃんと構えずに私のところに走って近づいてくると、私は『よし!』と気合を入れ、盗賊団員を出迎える。
だがしかし‥‥‥‥‥‥
『がおっーーー!』
二頭のドラゴンちゃんたちとリオとリアはその四人の盗賊団員と私の間に入り込み、四人の盗賊団員が私の視界から消え、何が起きているのか見えなくなってしまった。不本意ながら、私の出番がなくなってしまった。
「みんな、死なない程度にしてね!」
私は慌ててドラゴンちゃんたちとリオ、リアを止めた。
四人の男がドラゴンちゃんとホワイトウルフちゃんに反撃され、枯れ葉のように地面にひょろひょろ倒れる彼らの姿が私の目に映った。四人とも倒れ切った後に私はおずおずと微動だにしない四人の盗賊団員の生存を確認した。
おっ!全員まだ息している!
ふぅぅぅ~~、この子たちはちゃんと四人の盗賊を死なない程度にやっつけてくれたわ。あと一息で死にそうな感じだけど。二頭のドラゴンちゃんと二匹のホワイトウルフちゃんにボコボコにされて、この四人の盗賊団員が一番可哀想だわ。
街に入った一日目に当たり屋やら盗賊団やらに遭うなんて。街は本当に物騒だわ。村の外ではいつもこんな緊張感のある出来事が起きちゃうの?だから村の人たちはあんなに忠告して心配してくれたのね。
盗賊団の制圧が終わった後、お兄さんたちは盗賊団員を縛って荷箱に入れ、ファビアンさんたちが乗ったドラゴンちゃんに乗せた。王都の役所に連れていって報告しなければならないとジルさんが話した。
「この人たち、ドラゴンが欲しかったんですか?でもドラゴンが人間の言うことなんて簡単に聞かないと聞いたことがありますけど?」
「ドラゴン小屋にはドラゴンをつなげる首輪があったんじゃない?おそらくこいつらがそういう道具を使ってドラゴンを捕獲したかったんだと思う。ドラゴンが超希少だから、売ったら次の代まで一生贅沢に暮せるぐらいだから、俺たちに襲う価値があると思ったんだろうね」
「へぇ~、そうなんですね~?」
私も自分が余裕で次の代まで一生贅沢に暮らす稼ぐ方法を閃き、余裕で達成できそうな気がするけれど、忘れることにした。
「急に盗賊が現れてびっくりしちゃいました。トレストのあの騎士といい、さっきの盗賊といい、村のおじいちゃんおばあちゃんが言っていた通り、村の外って本当に物騒で残酷で残忍な場所なんですね!私はずっと安全で平和な村に暮らしていて、優しい村の人たちに囲まれていましたから、こんなスリルな出来事なんて全くなかったんです!おかげですごくワクワクしましたよ!いい経験でした!いつか村に戻ったら、村の人たちにこのお土産話をしてあげたいです!っていうか今すぐおじいちゃんに話したいです!」
「た、楽しんでいるみたいでよかったな‥‥‥」ジルさんは顔を引きつらせた。
「別にそこまで物騒でも残酷でも残忍でもないぞ。街も普通に安全で平和だ」ファビアンさんが苦笑を浮かべた。
「安心して。リーマは俺が守るからね」いつも優しいカイテルさんも苦笑して、私の頭を撫でる。
「村のおじいちゃんおばあちゃんが君を心配しすぎだ。街はそこまで危ない所じゃないぞ。今日はたまたまだ」マーティスさんが言った。
ファビアンさんとマーティスさんが街のことを弁解しようとしているけれど、今日で二回もスリリングな出来事に遭ったから、申し訳ないけどお二人の言葉に全く説得力がない。
「それにお兄さんたちはさすが国の騎士ですね。カッコよかったです!」
「ははっ当たり前だ!俺ら四人はデリュキュース国のトップレベルの騎士だぞ!」ジルさんは自画自賛し始めるけれど、あいにくこれも説得力がない。
「ふーん、へぇ~、トップレベルの騎士なのに、どうしてリオとリアと戦いたくないんですか?」
「‥‥‥‥‥‥」ジルさんは私をめちゃくちゃ睨んでくる。あらあら~、怖い怖い〜
「そう言えばリーマ、ドラゴン小屋のことは何だったんだ?」ファビアンさんは聞いた。
「??ドラゴンちゃんの小屋に何かありましたか?」
「君がドラゴンとじゃれ合っていたんじゃないか?」
「あぁはい、しました。ドラゴンちゃんは思ったより大きくて可愛かくて大人しくていい子ばかりでした!」
「あれ、何をしてどうやってドラゴンと仲良くなった?俺にもコツを教えてくれ」
「コツ?うーん‥‥‥お兄さんたちが初めて私に話しかけた時と同じ感じでやればいいじゃないかと」
私は自然にできるのだから、私にやり方を聞かれても答えられない。
「それができないから君に聞いてるんだよ」
「そう言われましてもですね〜」
「はぁ‥‥‥俺は君に一番似合う仕事を思いついた」
「本当ですか!?どんな仕事ですか?医者?看護師?やっぱり薬師?薬師ですよね!?私もそう思いましたよ!」
「動物の飼育員だ」
「‥‥‥??私は動物のことに詳しくないですよ。熊ちゃんとか鹿ちゃんとかウサギちゃんとか鳥ちゃんぐらいしか見たことがないです」
「君は一番動物に詳しいと思うぞ」
「そう言えばリーマはどうしてガイルが俺のドラゴンだとわかったの?」
「ガイルちゃんが教えてくれたからですよ?」
「‥‥‥‥‥‥ガイルがいつリーマに教えたのか?」
「ガイルちゃんと話している時ですよ?」
「‥‥‥そう‥‥‥だったのか?話した、、のか・・・・・・・?」カイテルさんが首を傾げた。
「ガイルちゃんはカイテルさんが大好きって言ってましたよ。カイテルさんを見るとガイルちゃんはすごく安心したんです」
「本当か?嬉しいな」カイテルさんは嬉しそうに笑った。
「俺たちが小屋に入ったらドラゴンが暴れてたよな?どうしてあんなに暴れていたんだ?何かあったのか?」マーティスさんは聞いた。
「ドラゴンちゃんたちはいつ暴れましたっけ?結構大人しくしていたと思いますが?」
私はドラゴン小屋に入った時に起きたことを思い出しながら言った。ドラゴンちゃんは別に暴れていなかったと思うけど?
「いや、あんなに鳴いたり翼をバタバタしたりしたんだろう?今まであんなに暴れたことなかったんだ。すげぇ焦ったよ」
「あぁ、あれは暴れたんじゃなくて喜んだんです」
「喜んだ?なんで?」
「私に会ったからに決まってるんじゃないですか?」
「「「「‥‥‥‥‥‥そう?」」」」
「お兄さんたちはどうして騎士になったのですか?」
ジルさんの話によるとお兄さんたちはご両親の時代からの家族ぐるみの付き合いらしい。ファビアンさんは二十三歳、ジルさんとカイテルさんは二十一歳、マーティスさんが二十二歳。
「俺はもともと騎士になりたかったんだ。それに俺は次男だからさ、父親の跡継ぎをしなくてもいいんだからな」
へぇ〜、ファビアンさんにはお兄ちゃんがいるんだ〜。
「俺はなんとなく」
ふーん、マーティスさんは意外と適当だね〜。
「俺は武器を使うのが好きだから、なったんだ~」
へぇ〜、ジルさんは意外と真面目だね〜。
「俺は部屋の中で仕事をするより、いろんなところに行ってみたいから、騎士になったんだよ」
ほぉ〜、カイテルさんは意外と自由だね~。
皆さんは十六歳の時に学院卒業後、そのまま騎士団に入団試験を受けた。ジルさんとカイテルさんはファビアンさんとマーティスさんの後に入団したが、たまたま同じ隊に所属することになり今に至る。
「俺たちは成績優秀ですげぇ人気者で、いつも女からきゃあきゃあされて、国中の騎士の人気ランキングにいつも上位に入るよ~」
とジルさんは聞かれもしないことをペラペラと喋り、自画自賛している。
ただどうして騎士になったのかと聞いただけなのに‥‥‥
騎士の仕事は様々でお兄さんたちのように遠方で任務を行ったり、王族の近衛騎士だったり、城内や街内の警備騎士だったり、治癒騎士だったりする。私みたいな魔力皆無でも剣術がすごければ全然騎士になれるみたい。
この国は実力があれば、貴族でも平民でも男でも女でも誰でも王城のような場所や貴族の元、もしくは他のいい場所で働けて高収入をもらえる。騎士でも、料理人でも、医者でも、教師でもだよとカイテルさんが教えてくれた。実力主義な国でいいわね。なら私もいいところで働けたりして?
「お兄さんたちは幼馴染ですか?うらやましいです!私も幼馴染が欲しいです!」
「ずっとこいつらと一緒にいるとつまんねぇよ」ファビアンさんがつまらなそうにぶつぶつ言った。
「逆に言えばずっとおまえと一緒にいるの、まじつまんねぇってことだよな」
マーティスさんはファビアンさんをギット睨む。その圧力と目力って無意識なのかな?わざとなのかな?
「‥‥‥‥‥‥ッ!」
ファビアンさんはしまった!と言ったかのように口に手を当てる。マーティスさん・・・・・・・年上のファビアンさんさえビビってるんじゃないの。
「‥‥‥お兄さんたちは本当に仲良いですね。幼馴染、羨ましいです」
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