第24話 パートナー
頼りになるヒトとは、松島愛だ。
何かしらのトラブルがあった時に、リミッターがハズレているヒトがいると心強い。
さらに、松島愛は必要になったら俺が死んでも構わないと思っているのです、今回、俺を無力化しなければいけない時には大活躍したのだろう。
目が覚めてから、奴が勝手に話し出したのだが、どうやら有川さんのことを気にいったようだった。
基本的に、前田ユウ以外の人間は拒絶する松島愛がだ。その人間不信の理由については聞く必要も無いし興味もないから知らない。ただ、話してもいいかなと奴が思えば聞くことはやぶさかではない。
一応はトモダチだからな。
そんな松島愛の評価はこちら。
「桃ちゃんはユウくんに似てる」
もちろん、外見のことを言っているわけではないことくらいは俺にも分かる。しかし、内面について考えても疑問が残る。
「そんなに似てるか?」
「それが理解できないってことは、ユウくんのことも桃ちゃんも理解してないってことだな」
こいつ相手だと、反射的に言い返したくなるが反論の材料が何一つ無いことに気づいて口を閉じる。
確かに、俺は奴らの過去や特性についてはそれなりに知っているけど、内面に関してはあまり知らない。
「自分が詮索されたくないから、ヒトにも距離を置いてるんだろうけど、2度も救ってくれた彼女にくらいは歩み寄ってもいいんじゃない?」
松島愛はそう言いながら立ち去り、前田ユウと共に去っていった。
色々あったラブホの1室には、有川さんと俺だけが残された。
あの女狐め。慣れないことしやがって。
「えっと……ありがとう。そんで、ごめん」
何故、謝ったのかというと有川さんのご機嫌が斜めだからだ。さっきから目も合わせてくれない。
白状してしまうと、俺には彼女が何故怒っているのか皆目見当がつかなかった。
知らないことだらけだな。俺。
「……なんで私が怒ってるか分かってて謝ってますか?」
「……すみません。分かりません」
カウンセラーになる際に、ヒトのことはそれなりに勉強したつもりだ。しかし、他人事ならまだしも自分のことになると途端にポンコツになってしまう。
「……少しは頼って欲しかった」
小さいが、不思議とよく通る声。
「私達は一心同体じゃなかったの? 少なくとも、私はそう思ってた。今回なんか、もろ幽霊関連じゃん。私の得意分野じゃん」
「いや。でも、俺の問題だったから……」
言ってから、そういうことではないと気づいた。それと同時に、あの日、有川さんが自身の過去を話す直前の言葉を思い出す。
<センセーには、長生きしてほしいので>
そうか。
そうだな。
俺はこのヒトのことを軽く見積もっていた。
学生だからと、知らないウチに線を引いていた。
もう、そんなことを気にする段階は当に過ぎているというのに。
今度こそ、誠意の込もった謝罪をしよう。
深く、深く頭を下げる。
「申し訳なかった。これからは、ちゃんと相談する」
「……」
目の前の相手も立ち上がる音がした。
1発殴られる覚悟くらいはできていたが、このヒトは本当に甘くて優しい。
「よくできました」
と、一回りも年上の男の頭を撫でてきやがった。
こちらが頭を下げているのを良いことに長時間優しく撫でる。
これが前田ユウだったら張り倒すところだったが、相手は一心同体のパートナー。
これくらいは、多めに見よう。
プライドが高くて性格が悪くて不器用な男は、そう思える相手に初めて出会ったのだった。
有川桃が死ぬまで、あと60日。
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